1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

過去最大の経済対策も、「近くて遠い3万円」続くか

トウシル / 2021年11月22日 0時0分

写真

過去最大の経済対策も、「近くて遠い3万円」続くか

今週の予想

2万9,200~3万円のボックス相場続くか

 今週の日経平均株価は、引き続き「近くて遠い3万円」が続きそうです。休日の23日をはさんでおり、3万円回復は難しいといえます。米国株式3指標が、それぞれ最高値更新となっても、日本市場は追随しません。買い主体の外国人投資家が、日本の政治に対して懸念をもっているためです。

 岸田文雄政権が19日(金)、財政支出が過去最大の55.7兆円となる経済対策を発表しました。発表前日の18日は、この報道を受けて一時大きく上昇しましたが、すぐに売りに押されてしまいました。

 今週は、改めて大規模な経済対策が上昇のキッカケになるかどうかが注目です。新聞の見出しは「分配柱、事業規模78.9兆円」とありますが、外国人投資家がこの経済対策に反応しないのは、資本市場が嫌気する「分配」を強調しているためだといわれています。分配にお金を回すということは、投資家の取り分が少なくなるということを意味しますので、岸田政権の経済対策を評価していないということになります。

 また、「金融所得税の強化」が再び頭をもたげてきたことも、投資家の警戒感を抱かせているといわれています。外国人投資家が安心して投資できるよう、岸田政権が分配の前に成長政策を明確に打ち出さない限り、株価は目先の3万円を超えてもさらに大きく上昇する期待がもてなくなります。

 今は、2万9,000~3万円のレンジ内で推移するボックス相場ですが、8月20日の2万6,954円を底に10月6日の2万7,293円、10月25日の2万8,472円、11月11日の2万9,040円と下値は着実に切り上げています。

 そう考えると、11月下旬を迎え新型コロナの感染が収束に向かい、企業業績は上方修正が多く、過去最大の経済対策も発表されたことから、上昇が期待されるところです。

 チャートでは、日足の25日移動平均線(19日時点2万9,302円)や10月6日の安値2万7,293円から続く支持線(2万9,700円近辺)を下値とする上昇基調を保っており、今週ぐらいは「近くて遠い3万円」をクリアできそうです。

今週の指標:日経平均株価

 今週は、明日23日が休日のため相場としては動きにくい週といえます。まずは19日に岸田政権が発表した「分配」を柱とする経済対策(事業規模78.9兆円、財政支出55.7兆円)を、市場がどのように評価するのか、注目するところです。

 外国人投資家が評価するようなら、3万円台回復のきっかけになり得ますが、焦点が分配に置かれ、成長戦略が明確でないところが気になります。

 柴田罫線でみても2020年3月19日の1万6,358円からの上昇トレンド(A)で2021年9月14日に3万0,795円の高値をつけたあと、10月6日に2万7,293円まで下げ、ここからの戻りで3万円水準は上昇トレンド(A)が上値抵抗線に変化しています。3万円台回復には大きなキッカケが必要です。

先週の結果

 先週の予測では、前週に2万9,000~3万円のレンジの中で、11月11日に2万9,040円と目先の安値を確認したことで、4日につけた2万9,880円を終値で突破できれば3万円台の期待ができるとしました。

 週始めは、米株式の堅調な動きを受け、また中国株の上昇にもサポートされ、11月16日に2万9,960円と4日につけた2万9,880円を上回りました。

 しかし、上値は重く終値では+31円の2万9,808円となり、終値では突破できませんでした。18日には、2万9,402円まで下げたところで、政府の経済対策費が過去最高の55.7兆円と報道され、2万9,715円まで反発しましたが、戻り売りで▲89円の2万9,598円と続落しました。週末19日の日経平均は前日のナスダックの最高値更新を受け、+147円の2万9,745円で引けました。

今週の指標:NYダウ(ダウ工業株30種平均)

 今週の予想では、25日は感謝祭で休場、26日は短縮取引のため、正味の営業日は月、火、水の3日間となり、大きな動きは出にくいという見方が多くあります。注目は感謝祭前にFRB(米連邦準備理事会)の議長の指名計画があり、大方の見方はパウエル議長の再任ですが、ブレイナード理事が指名された場合、短期的には不透明感が出て下げるとみられています。

 また、欧州の一部では新型コロナの感染再拡大でロックダウンが計画・実施される国があり、株式市場にとってはマイナス要因となります。ただし、ワクチンの接種により大きな感染拡大にはならないと見られています。

先週の結果

 先週の予測では、10月の小売売上高や小売の決算が好調ならば株価は上昇となるが、一方でインフレ高進が進めば早期利上げ観測の思惑から株価は下落としました。

 週始めは長期金利の低下からNYダウは上昇して始まるものの、翌日に小売売上の発表を控え様子見となりました。翌日11月16日は、10月の小売売上高が予想を上回り、NYダウは一時+229ドルまで上昇するも上値は重く+54ドルで引けました。その後はインフレ高進や新型コロナの再流行を受け、NYダウは3日続落となり、週末の19日は、▲268ドルの3万5,601ドルとなりました。ただし、ハイテク株は上昇し、ナスダックは2日連続の史上最高値となっています。

今週の指標:ドル/円

 FRBによる早期利上げ観測は後退しましたが、ECB(欧州中央銀行)の金融緩和策は長期化するとみられており、安全資産としてドル買いが続きそうです。他の主要中央銀行も金融緩和縮小に慎重な姿勢を維持しており、ドル買いが活発化する要因となっています。ただし、1ドル=115円台は2017年3月以降の高値圏にあることから上値は重いといえます。

先週の結果

 米国の10月小売売上高が市場予想を上回り、10年債利回りが上昇し、ドル買い・円売りが強まりました。11月17日に114.97円までドル高が進行しました。その後、利益確定のドル売り・円買いが観測され、114円を下回る動きとなりました。19日には一時113.35円までドルが売られましたが、欧州中央銀行総裁が「金融引き締めを急がない」と発言したことで、ユーロ売り・円買いが活発となり、この円買いがドル売りにつながりました。

 しかし、FRB理事が量的緩和の縮小ペースを速めることを支持したことで、ドル売りは一服し114.01円で引けました。

先週の結果

過去最大の経済対策発表も、日経平均は「近くて遠い3万円」

 先週の予測では、米国株式が堅調であれば、日経平均は3万円台にのせることができるか注目とする一方で、アメリカ経済のインフレ加速で株価が軟調な場合は、3万円台のせは難しいとしました。

 最近の日本株式の相関的な動きをみると、米株が上昇しても日経平均は上昇しないためです。その例として、最近の米株3指標の史上最高値更新に、日経平均はほとんど連動していません。逆に米株下落の場合、日経平均は軟調な動きとなっています。

 先週のNYダウの動きについて、11月8日までは、3指標そろって最高値更新の動きとなっていましたが、その後はNYダウが8日の3万6,565ドルをピークに3日連続安となって日足が10月1日の安値からの引線が下値支持線を割り込んでおり、日経平均は週の前半こそ、16日まで4日続伸し、2万9,960円まで上昇するものの、3万円接近で上値が重くなり、その後は18日には▲285円の2万9,402円まで下げ、終値では▲89円の2万9,598円と2日続落となりました。

 週末19日は、NYダウは反落でしたが、前日の米国でフィラデルフィア半導体指数が大きく上昇し、ナスダックが最高値更新となったことで、東京エレクトロンと半導体関連株が上昇し、日経平均は+147円の2万9,745円で引けました。3万円台への接近もこの日はありませんでした。

 チャートの動きとしては、先週も「近くて遠い3万円」でした。2万9,000~3万円のレンジの中で、11月4日に2万9,880円まで上昇し、ここからの下落で11月11日に当面の下値として2万9,040円を確認したことで、先週は2万9,880円を終値で上回れば3万円台のせが期待できるところでした。

 16日に一時2万9,960円まで上昇しましたが、3万円接近での売り圧力が強く、終値は2万9,808円と2万9,880円を突破できませんでした。

 ここからいったん下値を探る動きとなり、18日には2万9,402円まで下げましたが、午後2時に日本経済新聞社の電子版に19日に政府が経済対策費として過去最大の55.7兆円規模の財政支出をするとの報道があり、一時2万9,715円まで上昇してプラスに転じる場面がありましたが、戻り待ちの売りに押され▲89円の2万9,598円で引けました。この動きをみる限り「近くて遠い3万円」は、もっと明確な材料待ちということになります。

 週末の米国市場は、マチマチの動きとなりました。NYダウは▲268ドルの3万5,601ドルと3日続落の一方で、ハイテク株主体のナスダックは2日連続の最高値更新となりました。NYダウの下げは欧州での新型コロナの感染再拡大を嫌気しています。

 例えば、オーストリアでは22日から飲食店などを閉鎖するロックダウンの再開、ドイツでは病床のひっ迫懸念が出始めワクチン未接種者への行動規制が始まっています。

 この状況をみると日本の感染者の激減が信じられず、このまま大丈夫なのか懸念はあります。米国市場では、こうした動きが投資家心理を冷やし、幅広い銘柄で売りが先行しました。NYダウが下げた理由です。

 また、エネルギー需要も減少するとの思惑から21日は原油価格も大幅下落となりました。シカゴの日経先物は▲155円の2万9,625円でした。

(出島 昇)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください