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ほぼ100%“個人の短期信用買い”で作る「マザーズ強いぞ!」地合いの脆さ

トウシル / 2021年12月8日 17時44分

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ほぼ100%“個人の短期信用買い”で作る「マザーズ強いぞ!」地合いの脆さ

11月の新興株<マザーズ、ジャスダック>マーケットまとめ

 11月は、日本の新興株市場の在り方を考えさせられる展開だったといえそう。盛り上がる時は盛り上がるものの、その時の買い手のほぼ全てが短期売買を前提とした個人の信用買い。「マザーズが良さそうだ」というセンチメントが広がり、売買が増えてくると数珠つなぎ的に短期マネーは集まります。

 ただ、あくまで短期マネーですので資金が抜けるときも数珠つなぎ…ひさびさの活況ムードを示しながらも、その反動が月末にかけて、“大逆流”の形で現れた激動の1カ月でした。

 このタイミングで、「マザーズが良さそうだ」の雰囲気がひさびさ生まれた理由を振り返ると…まずは強い米国株の後ろ盾があったこと(とはいえ、相変わらず東京時間が弱く、日本株は割り負け)。11月FOMC(米連邦公開市場委員会)でのテーパリング決定後、これを織り込み済みとして消化した米国株の懐の深さには驚くばかりでした(主要指数が連日の最高値更新へ)。

 日本の個人投資家にとって大きかったのは、ソフトバンクグループが決算発表で1兆円枠の自社株買いを発表し、直後ひさびさに大きく上昇したことも挙げられます。

 また、これは前月から予兆はありましたが、人気銘柄の一角(直近IPO(新規公開株)のアスタリスクや、令和の仕手株グローバルウェイなど)にだけ短期マネーが集中する現象…これが意外に長続きしたことで、短期で高いリスクを取るタイプの資金が膨張していきました。

 このリスクマネー膨張が潤滑油となって他の銘柄に流れ、方々でマネーゲームが発生し始めた雰囲気でした。例えばこの時期、11月12日が決算発表のピークでしたが、マザーズ銘柄にとって鬼門の決算発表シーズンでもありました。

 そんなリスクマネーが決算数値でサプライズがあった銘柄や、株式分割を発表した銘柄に普段以上に買いが殺到。ストップ高買い気配を2日続ければ、3日目は上限値幅が4倍になります。これを狙って買いに並ぶような異様さがありました。15日にマザーズの売買代金が2,000億円を超えましたが、これは実に3カ月半ぶりのこと。ピークは25日の2,663億円でした。

 ただしこの熱狂も、起点となっていた人気銘柄の急落で暗転。そのタイミングで新変異株「オミクロン型」の出現もあり、月末にかけて下げは加速。

 月前半の上昇分を帳消しにし、マザーズ指数の11月月間騰落率は▲3.3%でした。その他の指数では、日経平均株価▲3.7%、TOPIX▲3.6%、日経ジャスダック平均▲2.5%と全部安。11月後半から株価が強くなるという過去の経験則は有名ですが、意表を突いた変異型出現には通じず…。

11月の売買代金ランキング(人気株)

 上昇モメンタムの強い人気銘柄に短期資金が集まり、方々に飛び火しながらマザーズが盛り上がった11月。マザーズ市場全体の売買代金(=流動性)も、10月の1日平均が1,403億円でしたが、11月は1,951億円と約4割アップ。

 ただ、売買活発な人気銘柄だけに連日エントリーするような短期マネーが多く、流動性下位銘柄の流動性が高まったわけではなかったのも特徴でした(マザーズ市場全体が底上げされていくような感じはなし)。

 その人気銘柄というのが、25日移動平均売買代金が100億円を超えた上から3銘柄。アスタリスクは直近IPOですが、2位のグローバルウェイは前月末の25日移動平均売買代金50.4億円から129.9億円に大幅増加。FRONTEOも同56.2億円から110.5億円にほぼ倍増。そのいずれも、月後半に需給が反転。グローバルウェイはバブルが弾けただけだとしても、アスタリスクとFRONTEOに関しては需給反転のきっかけが「信用規制(増担保規制)」という点で共通していました。

 上がっているから上値を信用で買うモメンタムトレーダーが多かっただけだった…ということをこの2銘柄が証明したように思われます。

市場 コード 銘柄名 11月
末終値
時価総額
(億円)
売買代金
25日移動平均値
(億円)
月間
騰落率
東証マザーズ 6522 アスタリスク 3,720 262 148.0 44.3%
東証マザーズ 3936 グロバルウェ 1,820 331 129.9 -45.7%
東証マザーズ 2158 FRONTEO 3,600 1,413 110.5 38.4%
東証マザーズ 4385 メルカリ 6,890 11,005 83.7 12.0%
ジャスダック 6890 フェローテック 3,730 1,453 82.5 -1.8%
東証マザーズ 5759 日本電解 4,615 335 74.3 1.0%
東証マザーズ 4485 JTOWER 10,280 2,260 60.7 -4.7%
ジャスダック 4582 シンバイオ 1,304 501 59.5 22.1%
東証マザーズ 4565 そーせい 2,113 1,722 44.1 16.3%
東証マザーズ 4169 エネチェンジ 7,020 969 43.5 31.7%
東証マザーズ 7373 アイドマHD 5,010 760 42.2 21.0%
東証マザーズ 4477 BASE 682 758 37.9 -26.7%
東証マザーズ 7078 INC 2,010 157 32.7 -21.2%
ジャスダック 6324 ハーモニック 4,685 4,512 29.6 -8.9%
ジャスダック 1407 ウエストHD 6,550 3,015 28.6 3.3%
東証マザーズ 4475 HENNGE 4,280 695 25.3 -23.7%
東証マザーズ 9246 プロジェクC 4,665 259 24.9 3.4%
ジャスダック 4080 田中化研 2,091 680 23.2 88.0%
ジャスダック 2702 マクドナルド 5,050 6,714 22.7 -0.8%
東証マザーズ 6027 弁護士コム 6,540 1,456 19.8 -4.4%

売買代金ランキング(5銘柄)

1 アスタリスク(6522・東証マザーズ)

 9月末上場で、直近IPOの人気ナンバーワン銘柄。独自の技術で、スマホなどのモバイル機器に搭載するバーコードリーダーの開発を手掛けています。技術力の高さを裏付ける話題としては、ファーストリテイリングのユニクロ店舗で導入されているセルフレジ。これの特許裁判で勝訴した会社として上場前から有名でした。

 11月前半に人気が沸騰したきっかけは、株価好調下で5日に発表した株式4分割でした。鉄は熱いうちに打てと言いますが、まさにIPO直後の株価好調下での発表は火に油を注ぐ格好で…。

 16日に付けた上場来高値は、わずか1カ月半前のIPO時初値の4.6倍に! ただ、分割後は株価が下落し、トドメ的に売り材料になったのが30日寄り前に発表した決算説明資料でした。実際に会社IRページで資料を見ていただくのが早いのですが、その掲載内容を失望して売りが殺到する格好に。

2 グローバルウェイ(3936・東証マザーズ)

 今年の瞬間最大上昇率のトップ銘柄(7月21日安値→11月2日高値まで瞬間最大60倍‼)。

 9月の株式5分割から始まり、11月3日に3分割…そして17日大引け後には12月4日を効力発生日とする株式2分割を発表しました。

 暗号資産タイムコインの売却益による上方修正を発表する程度で本業のこれといった買い要素もないなか、株式分割と同社会長の各務氏(ツイッター上では自称“破壊神カカムーチョ”)によるSNS上での買いあおりで、これほど株価が上がったのも衝撃でしたが…。

 ただ、そんな壮大な仕手株のピークは同月2日で、3カ月強にわたる大相場もピークアウト。東証による信用規制などもありますが、決定的な下落理由は、前述の各務氏による同社株の大量売却の発覚です。

 12日時点で発行済み株数の53%強を保有していた各務氏は、26日時点で同42%程度に保有比率が減少。散々ウェイウェイとあおっておいて、売った後はグッバイウェイ…これって許されるんでしょうか?

3 FRONTEO(2158・東証マザーズ)

 マザーズの人気トップ銘柄としての地位を一層固めたFRONTEO。同社から途切れることなく発信されるIRリリース、これは11月も健在でした。IRリリースを好感して高値切り上げを続けながら、迎えたのが15日の中間決算発表。

 リーガルテックAI事業の好調を理由に、2022年3月期の業績予想を営業利益で従来予想12億円から18億円へ大幅増額しました。翌16日にストップ高すると、25日にはスズケンとのライフサイエンスAI事業での業務提携発表で翌26日はまたストップ高。この日に付けた上場来高値は5,300円でした。この時点で年初来8.6倍に…。

 そんなFRONTEOに、こんなクライマックスが待っているとは誰も想定していなかったはず。この日の引け後に東証が信用規制を発表すると、翌日下落で始まり、そのままストップ安に…。

 そして月末30日と12月1日は2日連続ストップ安売り気配となり、全株一致したのが12月2日。全株一致した値段は2,557円で、わずか4営業日前に付けていた上場来高値の半値以下です。

 個人の信用買いで作られた大相場だったとはいえ、増担保だけでこれほど下落した事例は過去になかったはず。短期前提の個人信用組の関与率が上がり、機関投資家の関与率が下がった日本のグロース市場を象徴するような現象でした。

4 フェローテック(6890・ジャスダック)

 中国の電力不足の影響などが警戒され9月に急落するも、中国の全工場で稼働が正常化したことをリリースしたことで10月は急反発。その勢いをもって11月も上値を切り上げ、12日に中間決算を発表しました。

 このタイミングで、通期の営業利益予想を従来予想の200億円から225億円に増額。アナリスト予想も上振れ、翌15日は14%高と強い反応に。上場来高値4,695円を付けたのは19日でした。

 天にも昇らんばかりのモメンタムを作っていた矢先の22日引け後、ちゃぶ台返しのネガティブ材料が…。公募増資と株式売出で最大222億円の資金調達を発表、発行済み株数の約14%相当です。この発表一発で、11月の上昇分を全部帳消しに。調達資金の用途はほぼ設備投資となっているため成長投資、機関投資家は好みそうですが、既存株主には青天のへきれきとなりました。

5 そーせい(4565・東証マザーズ)

 年初来でマイナス圏に停滞していた同社株ですが、待望のビッグニュースで月後半に急騰。材料一発で年初来プラスに浮上しました。同社は22日、米バイオ企業のニューロクライン・バイオサイエンシズと統合失調症など精神疾患の治療薬開発でライセンス契約を締結したと発表。

 この契約自体で契約一時金を1億ドル(110億円強!)受領するほか、開発や販売の進展次第では最大26億ドルの開発マイルストーンを受け取れるそうです。

 このビッグディールを受け、一部国内証券では目標株価を3,000円から3,400円に引き上げています。契約一時金が想定を上回る水準だったこと、今期の業績予想を上方修正することが理由と。

 また、ある市場関係者は「今回の契約一時金で、来年プライム市場に選ばれる可能性が高まった」と指摘していました。

11月の株価値上がり率ランキング

 前月まで値上がり率ランキングに4カ月連続でランクインしていたグローバルウェイは、11月の月間騰落率は▲45.7%で脱落。代わって値上がり率上位に顔を出した銘柄の多くは、決算発表をきっかけに急騰した銘柄群でした。

 今回の決算サプライズで急騰したことをきっかけに、スターダムに駆け上がる新星もいるでしょうか? とはいえ、この時期のマネーゲーム相場を思えば、決算をネタにした短期勢の買いでオーバーアクションした銘柄の方が多そうですが…。

 マザーズ銘柄の決算発表ラッシュは、決算シーズンの終盤になります。先に東証1部のグロース株が決算発表をしていたのですが、そうしたグロース株で相次いだのが決算後の“出尽くし売り”。決算がそこそこ良くても上方修正がなければ売り、コンセンサスを下回っていれば売り、悪ければもちろん売り…「今回の決算発表は罰ゲームか?」という声すら挙がっていました。

 それもあって、シーズン終盤に控えるマザーズ決算へは手前で警戒が高まり、買い持ちで跨ぐのはリスクという認識が浸透していました。そのため、手前で期待の買いが減っていたことも奏功したように思われます。

市場 コード 銘柄名 月間
騰落率
11月末
終値
前月末
終値
時価総額
(億円)
東証マザーズ 6554 エスユーエス 121% 940 425 83
ジャスダック 7809 壽 屋 101% 5,970 2,970 166
ジャスダック 4080 田中化研 88% 2,091 1,112 680
東証マザーズ 4445 リビンT 85% 4,630 2,500 62
ジャスダック 6658 シライ電子 73% 458 264 64
東証マザーズ 4591 リボミック 67% 676 404 189
ジャスダック 2195 アミタHD 65% 4,845 2,941 57
東証マザーズ 4371 CCT 62% 7,840 4,845 301
東証マザーズ 3185 夢展望 60% 324 202 44
東証マザーズ 3680 ホットリンク 50% 977 651 155
東証マザーズ 2983 アールプランナ 46% 9,450 6,490 126
東証マザーズ 4074 ラキール 45% 2,544 1,751 192
東証マザーズ 6522 アスタリスク 44% 3,720 2,578 262
東証マザーズ 3691 リアルワールド 43% 792 552 27
ジャスダック 6694 ズーム 43% 4,190 2,925 96
ジャスダック 2991 ランドネット 43% 5,750 4,015 85
ジャスダック 3083 シーズメン 43% 912 640 26
東証マザーズ 2987 タスキ 42% 3,200 2,251 188
東証マザーズ 7079 WDBココ 39% 6,530 4,710 154
東証マザーズ 2158 FRONTEO 38% 3,600 2,602 1,413

値上がり率ランキング(5銘柄)

1 壽屋(7809・ジャスダック)

 決算サプライズ一撃で株価は2倍強に。12日に発表した今2022年6月期第1四半期では、売上高が前年同期比84%増、営業利益が同7.7倍。驚異の伸び率を受け、発表翌日から2日連続ストップ高買い気配になりました。フィギュア製品では「にじさんじ」関連が好調で、直営店舗限定商品などを売り出す戦略もハマったようです。

 また、19日には「フレームアームズ・ガール」シリーズの世界累計出荷数が200万個を達成したと発表して一段高に。利益率の高いオリジナル商品の販売が好調で、第2四半期以降にも期待が高まる状況。株価水準は変貌しながらも、いまだ予想PER(株価収益率)は14倍台と割安感十分な水準です。

2 田中化学研究所(4080・ジャスダック)

 車載用リチウム電池など向けの正極材料を手掛ける同社株が、決算発表を材料にして一躍人気銘柄に。決算発表自体は10月26日でしたが、発表から11月末まで圧巻の上昇トレンドを形成しました。決算発表翌日10月27日から11月末まで、23営業日のうち下落したのは6営業日だけ。この短期間で株価は2倍強となりました。

 前月10月26日に発表した中間決算時に、今期の営業利益予想を大幅増額。製品の主原料であるニッケル、コバルトの価格が上昇したことによる在庫の評価改善が寄与しました。また、自動車大手がEVとハイブリッド車を合わせた電動車の割合を引き上げる方針を示していたこともあり、EV市場の拡大メリット銘柄として触手が伸びたようです。

3 リビン・テクノロジーズ(4445・東証マザーズ)

 決算サプライズ分の消化だけで、株価は2倍強に変貌。決算発表直前の株価は3,000円でしたが、発表翌日から2日連続ストップ高買い気配に。こうなると3日目は上限値幅の4倍拡大が適用されます。全株一致した18日には、高値で6,950円まで付ける場面がありました。

 同社は15日に本決算を発表、不動産査定のマッチング件数が好調に推移したことで大幅な増収増益で着地しました。前期の着地も営業利益は前期比4倍でしたが、同時に発表した今期ガイダンスも高い伸び率に。

 営業利益予想は5億円と、前期比3.6倍水準。決算サプライズ銘柄が翌日急騰する流れができていたこともあり、小型かつ低流動性(決算発表直前の売買代金は1日当たり1億円弱)銘柄だった同社株はド派手な上昇となりました。

4 アールプランナー(2983・東証マザーズ)

 業績好調で値がさ株の部類に入るマザーズ銘柄ですが、愛知県を地盤とする戸建て住宅メーカーという地味な業態で知名度も低かった銘柄です。知名度も低いと思われますが、意外にIPOしたのは今年(2021年2月)。IPO直後に付けた高値6,000円を、10月下旬にようやく上回ったばかり、そんな状況でした。

 株式需給が好転してきた矢先、同社は19日に1対4の株式分割をすると発表しました。もちろん目的は、弱点だった流動性の向上。

 とはいえ、理屈的には企業価値に一切関係ない株式分割ですので、発表翌日から2日連続ストップ高になったのは驚きでしたが…。マザーズ市場で短期マネーの回転が効いていた時期だったこともあり、材料に対してオーバーアクション気味に反応。なお、株式分割自体は2022年1月末となっています。

5 シーズメン(3083・ジャスダック)

 前月に続いて“メタバース関連株”としてランクイン。新奇性が高かった株式市場の新テーマ「メタバース」(ネット上の仮想空間という意味の造語)。個人投資家に広まったタイミングと併せて、メタバースファッション事業に参入すると発表していたのが同社でした。

 アメカジ系のアパレルメーカーが本業の同社にとって、収益寄与が大きい新領域というわけでもなさそうですが…。

 とはいえ、流動性が低く、低位の超小型株。何でもいいからメタバース関連でもうけたい! といった短期マネーの受け皿になったわけですが、物色対象になるには受け皿としては小さ過ぎ…。需給ギャップで株価は想像以上の急騰劇に。

 ただ、買っていたのは信用取引の個人投資家ばかり(当たり前ですが)。東証が9日から信用規制をかけると発表すると、同日から3日連続で20%以上の下落率を記録する、壮大な“往って来い”相場になりました。

12月に注目したい新興株の動き

 変異株「オミクロン型」の感染者が世界各地で確認され始め、不透明感からリスク資産を手じまう動きが加速しています。これにFRB(米連邦準備制度理事会)のテーパリング加速の織り込みとタイミングが重なり、ダブルパンチでリスクオフの雰囲気が醸成されているように見えます。

 オミクロンはワクチンなどの情報次第で流動的とはいえ、外部環境面での逆風が12月の新興株市場の心配材料。また、足元で急激に個人投資家の信用需給が悪化している影響も尾を引きそうです。

「理由は要らない」「上がる株が正義」「バリュエーションは無視」で株価が上がり、盛り上がっているところに人もアルゴも集結(全員短期勢)…そんな形で11月前半の新興株(とくにマザーズ)市場はバブルちっくな雰囲気をつくっていました。

 ただ、その短期マネーが極端に集まっていたグローバルウェイ、そしてFRONTEOが11月下旬から大暴落。個人の信用評価損益率は今年最悪レベルに悪化、この2銘柄に関しては追証も大量発生したと見られます。

 過去のマザーズ市場は、こうした極端に悪い状況が“陰の極”になり(評価損のとくに大きい信用買い残がロスカットで消えるため)、アク抜けするケースが大半でした。今回もそのレベルの状況にありますが、ただしタイミングが悪い…。

 これは、世界的な株安不安が覆っていることに加え、12月の新興株市場に恒例のマイナス要因「(1)IPOが多いこと」「(2)タックスロス・セリング」が挙げられます。

 今年の12月はIPO数が月間33社と非常に多く、そのうち26社がマザーズ銘柄です。しかも特徴は、33社のほとんどが月後半に集中していること。超過密スケジュールになるのが12月20日の週で、20日3社→21日4社、そして22日6社→23日5社→24日7社という過去に例もないようなラッシュが控えています。

 それぞれに初値買い資金が分散、さらには直近IPO株が次から次へ湧いてくることになるため、方々に短期資金が散らばります。個人マネーが無尽蔵に湧き出てくるわけではないため、この影響はIPO以外の既存銘柄にとっては「流動性低下」という形で影響が及ぶと考えられます。

 そして(2)のタックスロス・セリング。IPOに資金が分散し、他の銘柄の流動性が落ちても「閑散に売りなし」であれば問題なし。ただ、これも毎年のことですが、12月後半にかけてタックスロス・セリングの動きが広がります。

 年末までに、損益通算することを目的として含み損の株をロスカットすることを指します。流動性が落ちているところに、このタックスロス・セリングが被さることで、年内最後に安値を付けにいく銘柄が増える恐れがあります。

 実際昨年12月も、マザーズ銘柄で損出し売りがかさみました。“陰の極”のような下げ方をしたのが「12月22日」、ここで月間安値を付けています。今年は安値で12月に入った銘柄が多数あります。

 年初来のパフォーマンスが悪い主力銘柄でいえばアンジェス、BASE、サイバーダイン、メドレー、JIG-SAW、弁護士コム、ミンカブなど。年末に接近したタイミングで、こうした銘柄がアク抜け感から自律反発を始める局面を見極めたいところ。おそらく、ほぼ同時にリバーサルが始まるはずです。

(岡村 友哉)

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