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第二の日本郵船株が出現!?「高配当株」or復配と成長持続に期待「無配株」、2022年はどちらを選ぶ?

トウシル / 2021年12月23日 6時0分

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第二の日本郵船株が出現!?「高配当株」or復配と成長持続に期待「無配株」、2022年はどちらを選ぶ?

2022年の株式市場の見通し

 2021年12月17日現在、日経平均の年初来の騰落率はプラス4.0%の上昇となっています。高値と安値の値幅は3,800円超の水準で、そのレンジ幅は前年終値比で14%の水準にとどまっています。

 2020年のレンジ幅は前年終値比で47.5%であったため(ここ10年の平均は30%程度)、2021年は非常に方向感の乏しい株価推移であったといえます。また、同期間のNYダウ(ダウ工業株30種平均)は15.5%の上昇であり、日経平均は10%以上のアンダーパフォーマンスとなっています。

 2022年の米国株市場は、景気動向や企業収益は2021年に比べて改善する可能性も高いですが、バリュエーション(妥当なPER[株価収益率]水準など)が低下するとみられ、軟調な推移をたどるものと考えます。

 バリュエーションが低下するのは、金融引き締めによって株式市場への資金流入が減少するとみられるためです。金融引き締めによって借り入れが抑制されることにより、膨らんだ信用買い残の整理が進むとみられるほか、企業の自社株買いなども減少するものと想定されます。

 過度な「オミクロン株」への警戒感はやがて後退すると考えますが、その後は、実際に金融引き締めの動きが強まるに従い、株価は調整色を強めていくことが見込まれます。

 日本株に関しては、2021年に米国株と比較して出遅れた分の修正高も想定されますが、実際には、株式市場とは相いれないであろう「分配政策」を主眼とした岸田政権のもとにあって、外国人投資家がウエートを高める可能性は低いと考えます。

 今後、金融所得課税、自社株買いガイドライン設定、四半期決算の見直しなどの議論が強まるたびに、警戒感は強まっていくものとみられます。結局2022年の日本株も、米国株式市場の動向に連動するような動きになりそうです。

 オミクロン株への警戒感後退、それに伴う経済活動の一段の本格化期待、2022年度企業決算への期待などで、年前半には買い優勢の場面も見られそうですが、その後は米国株の下落に併せて軟化するような展開を想定します。

 2022年の主要イベントとして、まずは夏の参院選が挙げられます。それまでの岸田政権の支持率次第では、自民党の議席数減少、それに伴う政権の不安定化が警戒されることになりそうです。

 秋には米中間選挙が行われます。これまでの傾向からも、「ねじれ状態」になっていくリスクが大きく、その後の政策運営は困難になっていく可能性が高いとみられます。

 加えて、中間選挙前には、選挙対策として、米中摩擦が再燃しやすいこと、富裕層に対する増税プレッシャーなどが高まりやすいことも注意が必要になります。

 また、2022年4月には東証市場が再編され、10月からはTOPIX(東証株価指数)のリバランスが開始(流通時価総額の小さい銘柄を段階的に削除)となります。段階的削除銘柄の株価パフォーマンスは年間を通して相対的に低調となる可能性が高いでしょう。

「高配当株」への投資はどうなる?銘柄選びと注意点

 2021年の株式市場では、例年以上に「高配当利回り」に関心が集まった印象があります。象徴的な銘柄として日本郵船(9101)が挙げられます。

 株価は年初から一時4.7倍の水準にまで上昇し、年間上昇率(12月15日現在)でも時価総額1,000億円以上の銘柄の中では第2位となっています。第1四半期決算時に配当予想の大幅上方修正を発表、つれて、配当利回りが10%超の水準にまで高まり、活発な配当権利取りの動きにつながりました。

 コーポレートガバナンスに対する意識の高まりを背景に、足元では配当性向を引き上げる動きが強まっています。また、東証再編に伴う株主数の基準の低下によって、今後はクオカードの贈呈を中心に株主優待の実施が減少する可能性が高く、その分、配当に資金が向けられることになるとみられます。

 高配当利回り銘柄の配当水準、並びに、利回り水準は従来と比べて高まっていくと考えられ、第二の「日本郵船」株が多く出現してくる公算も大きいでしょう。

 一般的に、金利の上昇局面では、グロース株からバリュー株への資金シフトが強まる傾向にあります。つれて、バリュー株と位置付けられる高配当利回り銘柄の株価上昇が期待できることになります。

 2022年は米国で利上げフェーズに入るため、米国長期金利は上昇局面とみられ、高配当利回り銘柄にとっては追い風となる相場環境が予想されます。2022年は相対的に高配当利回りの株価パフォーマンスが良好となるでしょう。

 高配当利回り銘柄にとって減配のインパクトは相対的に大きくなりますが、リスクとして注意したいのは保守的な計画に伴う減配予想です。

 短期的なショック安が想定されますが、中期的には業績上振れとともに増配期待も高まっていくことになるため、高配当利回り銘柄の物色は比較的中長期スタンスが求められるでしょう。

 なお、岸田首相が自社株買いでガイドライン設定の可能性とも最近伝わっており、株式市場全体のネガティブ材料につながるため実現の可能性は低いでしょうが、仮に強行された場合、自社株買い資金は配当水準の引き上げに向けられるものとみられます。

2022年、注目の「高配当株」

コード 銘柄名 株価(円)
9104 商船三井 7,910
9810 日鉄物産 4,750
5020 ENEOSHD 424.4
※株価データは2021年12月20日終値ベース。

商船三井(9104)

▼どんな銘柄?

 大手海運株の一角です。2022年3月期経常利益は4,800億円で前期比3.6倍の見通しで、期中に3度の上方修正が行われています(期初予想は1,000億円)。

 コンテナ船事業を運営する持分法適用会社のONE社において、荷動きとスポット賃率が想定以上に推移していることが収益急拡大の主因となっています。

 年間配当金に関しても、期初計画の150円から2度引き上げられ、現在は800円の見通しになっています。12月17日株価を基準とした配当利回りは9.9%の水準であり、全上場企業の中でもトップクラスの水準にあります。

▼ここがポイント

 上半期経常利益は通期計画に対して57%の進捗(しんちょく)率で上振れ余地が残ります。配当性向は20%を基準としていることから、2022年3月期配当金に関しては、業績上振れに伴う一段の引き上げの可能性もあるでしょう。

 従来は、コンテナ船運賃の反動安により、2023年3月期の配当金は大幅な減少が避けられないとの見方が中心でした。ただ、足元でもコンテナ運賃の上昇が続いていることで、最近では、連続経常増益が続くとの予想も出始めています。

 配当性向に関しては20%から30%にまで引き上げられる可能性も高いため、一部では配当金の倍増を見込む向きもあるようです。ガイダンスリスクを警戒して、2022年4月の決算発表前にいったん売却して、再度買い直す戦略なども有効と考えられます。

日鉄物産(9810)

▼どんな銘柄?

 日本製鉄系の鉄鋼商社で、日鐵商事と住金物産が2013年に合併して誕生しました。日本製鉄が筆頭株主ですが、8月に繊維事業を統合した三井物産も約20%を保有する大株主になっています。

 2022年3月期経常利益は430億円で前期比66.8%増益の見通しです。期初計画の330億円から期中に2度の上方修正を行っています。鋼材数量の回復や価格上昇によって、主力の鉄鋼事業が大幅に拡大しています。

 年間配当金も期初計画の220円から2度引き上げられ、現在は300円の計画となっています。12月17日株価を基準とすると配当利回りは6.2%の水準となります。

▼ここがポイント

 鉄鋼事業における高水準のマージンが反動で低下するとの見方から、2023年3月期は経常減益、配当性向30%に伴う減配も見込まれているようです。

 ただ、環境政策の強化などによって、中国の粗鋼減産は続き、当面は高水準の鋼材市況が継続する可能性も高いとみられます。

 固定費削減など収益体質の強化による効果、本社移転費用などの一巡もあって、収益横ばい見通しといったアナリスト予想も出てきています。2023年3月期大幅減配懸念が後退すれば、株価には見直しの余地が大きそうです。

 また、プライム市場への適合通知を受領とは発表していますが、グループ再編の動きに対する思惑なども折に触れて高まる公算も大きいと考えられます。

ENEOSHD(5020)

▼どんな銘柄?

 石油元売りの国内トップ企業で、国内シェアは約5割と推定されています。

 石油元売り事業のほか、カセロネス銅鉱山などの運営も行い、FPC用圧延銅箔、半導体用ターゲットなどの機能材料、電子材料向け高純度タンタル粉など世界トップシェア製品も多くあります。

 2022年3月期営業利益は4,700億円で前期比84.9%増益の見通しです。このうち、在庫影響を除いた実質的な営業利益は3,100億円で同43.9%増益見通しとなっています。原油や銅など資源価格の上昇、データ通信需要の増大に伴う機能材料・薄膜材料の販売拡大が好業績の背景です。

 年間配当金は期初から変化なく、22円を計画しています。12月17日株価を基準とすると、配当利回りは5.0%の水準となります。

▼ここがポイント

 PER5倍、PBR(株価純資産倍率)0.5倍台、配当利回り5%と、どの株価指標からも割安感が感じられます。

 脱炭素の流れや自動車のEV(電気自動車)化進展による石油元売り事業の先行き不透明感が、低いバリュエーションの背景とみられますが、金属事業や先端素材分野の拡大に加えて、新エネルギーへの展開力も強化しつつあり、割安水準是正の余地は大きいとみられます。

 国内水素ステーションも6月現在で46カ所と、水素サプライチェーンでは重要な役割を担うとみられるほか、国内有数の再生可能エネルギー事業者の買収も決定しています。

 短期的には、2022年度累計で総還元性向50%以上を掲げているため、2022年3月期業績の着地がある程度見えた時点での自社株買いの実施などが期待されます。

「無配株」への投資はどうなる?銘柄選びと注意点

 無配株(2021年度をベース)は大きく分類すると2通りにタイプが分けられます。1つは、短期的な業績悪化によって、年間収益で配当が賄えなくなってしまった企業群です。

 もう一方は、設立間もない成長途上の企業など、配当金を出すよりも成長投資に資金を振り向ける必要のある企業群です。それぞれのタイプにおいて、投資すべきタイミングなどは異なることに注意が必要となります。

 まずは前者ですが、業績回復、それに伴う復配アナウンスが最大の買い材料となります。とりわけ、現局面でいうと、コロナ禍のネガティブ影響を大きく受けた旅行関連株や小売株の一角などが多く当てはまるでしょう。

 これらの銘柄は、今後の経済活動正常化に伴って、こうした期待値が実現する可能性が高いものとみられます。ただ、あくまで、復配初年度の配当水準は利回り妙味が出るほどのものではなく、徐々に配当水準が切り上がっていくことになるでしょう。

 リスク要因としては、コロナ感染再拡大などによる景気回復の遅れで、企業収益の回復ペースが鈍化することなどが挙げられます。

 企業の復配に関しては、長期間無配が続いていた銘柄のほうがより短期的なインパクトが出やすいと考えられます。

 ただ、こうした銘柄は、業績の低迷期間が長期化していたことで、財務体質なども相応に悪化しているとみられます。業績の回復が一過性の可能性もあり、中長期投資にはリスクが高い銘柄が多いでしょう。

 後者に関しては、高い業績成長の持続期待、収益の黒字化達成などが買い材料となります。

 こうしたタイプの銘柄群が配当実施に踏み切るケースももちろんあり、好感材料とされる可能性も高いですが、「利回り水準」自体が買い材料になる可能性は低く、むしろ、高い業績成長局面は一巡と受けとめられる公算もあるでしょう。

 また、グロース株優位の地合いが追い風になるため、バリュー株に資金がシフトする局面では、PERやPBRなどバリュエーション水準の割高感が嫌気されて、換金売りの対象となりやすいことには注意が必要となります。こうした局面では、市場の注目テーマに沿った銘柄選別が重要となってきます。

2022年、注目の「無配株」

コード 銘柄名 株価(円)
7211 三菱自動車 315
4483 JMDC 7,380
4194 ビジョナル 9,470
※株価データは2021年12月20日終値ベース。

三菱自動車(7211)

▼どんな銘柄?

 日産自動車の持分法適用会社で、ルノー、日産との3社アライアンスを展開しています。SUV、ピックアップトラック、PHEV(プラグイン・ハイブリッド車)などが主体となり、国内軽自動車、タイ、フィリピン市場などに強みを持っています。

 2022年3月期営業利益は600億円の計画で、前期比1,500億円以上の収益改善を見込んでいます。自動車販売台数の拡大、構造改革効果による収益力の向上が収益回復の背景です。

 期初計画の300億円からは大幅に上方修正されています。ただ、前期に大幅赤字を計上していることもあって、配当金は2期連続での赤字見通しになっています。

▼ここがポイント

 2023年3月期業績も、半導体不足の緩和に伴う販売拡大が続く見通しであるほか、為替の円安効果も大きく寄与すると見込まれます。

 新型「アウトランダー」のPHEVモデルを12月から国内販売開始しており、販売拡大の一因ともなりそうです。営業利益は800億円程度がコンセンサスになっているようです。

 配当金に関しては、無配継続と10円程度の復配の見方が二分している状況であり、期初計画で復配アナウンスはないと思われますが、2022年内には復配への期待感が高まっていく場面もあると考えられます。

 また、自動車業界ではEV展開への関心がより強まるとみられる中、日産と共同開発した軽自動車規格のEVが2022年度の早い時期に発売される見込みであることなども、株価の支援材料となりそうです。

JMDC(4483)

▼どんな銘柄?

 2019年12月にマザーズに上場し、2021年11月には東証1部に指定変更した銘柄です。医療ビッグデータ関連サービスを主力に、遠隔画像診断や調剤薬局向けシステムなども手掛けています。

 医療データの利活用が着実に浸透する中、上場後の収益は急成長が続いています。2022年3月期営業利益も48億円で前期比29.9%増益の見通しになっています。上半期決算時には、従来の43億円から上方修正されています。

 顧客数や提供データの種類などが着実に拡充しているようです。なお、配当金は上場来無配が続いています。

▼ここがポイント

 今期業績は会社計画を上回るとの見方が優勢であるほか、大半のアナリストが来期以降も2ケタの増収増益が続くと予想しています。

 配当金は当面無配の状況が続くとみられますが、当面の業容拡大確度が高い中では、資金を成長投資に振り向けたほうが、将来的にリターンが高まるとの見方がなされます。

 10倍を超えるPBR水準には割高感が感じられますが、将来的には医療データベース提供企業からヘルスケア業界そのものへ影響を与えるデータ・プラットフォーマーへと変容を遂げるとの期待も挙がっているように、グロース株の中でも成長確度は高いとみられることで、許容できる状況にあるとみます。

 短期的には、12月のTOPIX買い一巡後に需給妙味が後退する可能性があり、押し目買いのチャンスが接近しつつあると考えます。

ビジョナル(4194)

▼どんな銘柄?

 2021年4月22日にマザーズ市場へ新規上場しています。ソフトバンク以来の大型上場となりましたが、初値示現後も株価は堅調な推移が続いており、12月には公開価格の2倍の水準にまで上昇しています。

 クラウドを活用した会員制の転職サービス「ビズリーチ」が主力で、年次利用中の企業数は8,000社以上となっています。また、採用管理や人材管理を行うソフトウエア「HRMOS」も手掛けています。

 2022年7月期営業利益は60億円で前期比2.5倍と急拡大の見通しになっています。第1四半期決算時に、従来予想の26.7億円から大幅に上方修正しています。主力事業の「ビズリーチ」において、採用需要が想定以上に拡大しているもようです。

 なお、当面は内部留保を優先することで、配当金は無配予想となっています。

▼ここがポイント

 コロナ禍の影響で2021年7月期業績成長は限定的にとどまりましたが、2022年7月期の大幅上方修正を見る限り、高いバリュエーションに見合った収益成長が今後も期待できそうです。

 とりわけ、人材流動化につながる転職サービスは中長期的な市場拡大が期待される分野となります。

 解雇の金銭解決などといった雇用流動化につながる規制の緩和はいずれ実施されてくるものとみられ、その際には、導入企業、スカウト可能会員、利用ヘッドハンターなどのインフラを急速に構築している同社などは、多大なメリットを享受できるものと考えます。

 経済活動本格回復による人材採用意欲の増加など、景気敏感株の要素も多分にあり、この点は他のグロース株と比較して、現状評価できる点でもあるでしょう。

(佐藤 勝己)

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