2021年の日経平均振り返り:企業業績好調でも上値が重かった理由
トウシル / 2021年12月22日 7時27分
2021年の日経平均振り返り:企業業績好調でも上値が重かった理由
※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「2021年の日経平均振り返り」
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今日は、2021年の日経平均株価を振り返ります。
業績上向きでも上値を抑えられた2021年
まだ2021年が終わったわけではありませんが、簡単に今年の日経平均を振り返ります。一言で言うと、「往来相場」。上値重いが下値堅く、行ったり来たりを繰り返した年でした。2020年がコロナショックで暴落後に急上昇した「大荒れ」だったのと対照的です。
2020年・2021年の日経平均週足:2020年1月6日~2021年12月21日
2021年の日経平均をさらに詳しく見てみましょう。
日経平均の日次推移:2021年1月4日~12月21日
2021年は、後半にかけて国内景気・企業業績モメンタムが上向きとなった1年でした。にもかかわらず、上値を抑えるショックがたびたび起こり、上値トライできませんでした。
8月までは、新型コロナの影響で国内消費が抑え込まれました。ワクチン接種の遅れから度重なる「緊急事態宣言」が出されました。ワクチン接種が先行した欧米の、景気回復が顕著だったのと比較して、日本の回復が鈍いことが嫌気されました。
秋以降は、国内でもワクチン接種が急速に進み、コロナ感染者が減少したこと、9月中間決算が好調であったことなどを受けて、一気に上値を抜けていく期待が高まりました。
ところが、9月には恒大ショック【注1】が起こり、中国経済とのつながりが大きい日本株が売り込まれました。
【注1】恒大ショック
中国の不動産大手「恒大集団」のデフォルト不安、中国不動産バブル崩壊・中国景気悪化リスクを嫌気した株安。
中国への不安は、恒大問題だけではありません。ウイグル綿調達問題や、中国政府が中国のハイテク企業の締め付けを強化した影響が懸念されて、日経平均の構成比が大きいファーストリテイリングや、ソフトバンクグループが売られました。
さらに11月にはオミクロン・パウエルショック【注2】で世界的に株が売られ、日経平均も下落しました。
【注2】オミクロン・パウエルショック
南アフリカ共和国で検出された新型コロナウイルス変異型オミクロンの感染力が強いこと、すでに欧米に感染が広がっていることが分かったことを受け、再び経済に重大な悪影響が及ぶ懸念が広がり、11月末にかけて世界的に株が下落しました。それがオミクロン・ショックです。
もう1つ、11月はパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)がタカ派に転じる不安が広がりました。米国のインフレ高進が続いていることに対し、「インフレは一時的」と言い続けてきたパウエル議長が「一時的ではない」と発言を撤回、11月からテーパリング(量的金融緩和縮小)を実施すると決定したことを受け、世界的に株が下落しました。これが、パウエル・ショックです。
企業業績回復が続いたことが、日経平均の下値を支えた
このように、たびたび世界的ショックに見舞われて、何度も急落した日経平均でしたが、下値を切っていくこともありませんでした。
下値では買いが入り、急反発を繰り返しました。下値を支えた要因として、企業業績があります。日本の企業業績は4-6月・7-9月と徐々に回復基調を強めました。
緊急事態宣言の影響を受ける、航空・電鉄・観光・イベント・外食産業は不振でしたが、それ以外の産業が全般的に好調でした。特に、資源などの市況上昇の恩恵を受ける、商社・鉄鋼・海運・鉱業・石油・化学・非鉄産業などの素材・市況産業が好調でした。自動車・電機などの輸出加工産業も、米国景気好調の恩恵から業績が伸びました。
10月1日に発表された「9月日銀短観のDI(業況指数)」では、非製造業の回復が遅れているものの、製造業中心に業況が急速に改善していることがわかります。
日銀短観大企業DIの推移:2018年3月~2021年9月
業績モメンタムが強まる中での日経平均下落に違和感
株価は、短期は材料で動きますが、長期的にはファンダメンタルズ(景気・企業業績)を反映して動きます。日経平均の動く方向を決定づけるのは、最後は企業業績です。その意味で、2021年の企業業績が回復基調を強めているにもかかわらず、日経平均が下がるのには違和感があります。
ご参考まで、過去の企業業績と日経平均の騰落を比較した、以下の表をご覧ください。
東証一部3月期決算主要841社の連結純利益(前期比)と日経平均の騰落率:2016年3月期(実績)~2022年3月期(予想)
上記をご覧いただくと分かる通り、日経平均は企業業績のモメンタムに反応して動いています。期初予想(5月に出した会社予想)よりも、着地が上になる年度は日経平均が上昇、着地が下になる年度は日経平均が下落する傾向が鮮明です。
今年度(2022年3月期)は、期初予想(19.1%増益)が、すでに36.3%増益まで上方修正されています。ところが、12月21日の日経平均は、前年度末(3月31日)対比で2.3%のマイナスです。利益見通しが増額されているのに、株価が上がっていないので、東証一部の予想PER(株価収益率)は約15倍まで低下し、割安になってきていると考えています。
来年の初めには、割安な株価が見直されて、日経平均はもう一度、上値トライすると予想しています。ただし、リスクもあります。来年、急激に世界景気が悪化する可能性には注意が必要です。年が明けた途端に、米景気が、中国景気とともに急失速することがないか、慎重に見ていく必要があります。
ファンダメンタルズ分析だけでは限界、テクニカル分析も重要
景気・企業業績の予想に基づいて売買するだけでは、大きな落とし穴にはまることがあります。誰も経験したことがない変化が起こってマーケットが大きく動く時、その理由を考える前に、まずチャートを見て動かないと間に合わないことがあるからです。
私はファンドマネジャー時代、テクニカル分析を非常に重視していました。毎週、週末に東証一部上場全銘柄の週足をチェックして、チャートに何か強いシグナルが出ていないか見ていました。私がファンドマネジャーとして長く好成績をあげられたのは、ファンダメンタルズ分析に頼り切らず、テクニカルを重視してきたからだと思っています。皆様も、チャートを見ることをけっして軽視すべきでないと思います。
最後に、著書出版のお知らせです。12月14日、ダイヤモンド社より拙著「2000億円超を運用した伝説のファンドマネジャーの株トレ」が出版されました。
私が25年の日本株ファンドマネジャー時代に得たテクニカル分析のノウハウを初心者にも分かりやすく解説しています。クイズ60問を解いて、トレーニングする形式です。株価チャートの見方がわからなくて困っている個人投資家にぜひお読みいただきたい内容です。
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(窪田 真之)
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