1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

中国の2022年8大イベント 日本投資家の注目すべきポイントを解説

トウシル / 2022年1月6日 6時0分

写真

中国の2022年8大イベント 日本投資家の注目すべきポイントを解説

 皆さま、新年明けましておめでとうございます。今年は中国の現在地と先行きを占う上で極めて肝心な年になります。毎週のレポートを一筆入魂の精神で書きつつ、連載を通して読めば、2022年の中国を一つのまとまりとして理解できるように作り上げていきたいと考えています。どうかお付き合いください。

2022年は中国にとって肝心な年

 新年一本目となる今回は、中国にとって肝心な年となる2022年に、日本の投資家が注目すべき中国の8大イベントを考えてみたいと思います。「8」は中国では縁起が良い数字です。皆さまの投資活動が、中国経済から利益を得られ、かつリスクを回避できますように、という願いを込めました。

 ここでいう「イベント」はいわゆる催し物だけではなく、「事件」にまつわる関係性や問題点なども含めることにします。中国がくしゃみをすれば世界全体が風邪をひく、などといわれて久しいですが、決して大げさではありません。

 中国共産党が打ち出す政策の一つ一つ、中国の経済成長率の上げ下げ、そして「政治の国」である中国の政治動向、対外政策を含め、米国や日本をはじめとした世界各国の市場動向に影響が及ぶことは避けられません。

 仮に中国株に投資していなくても、「自分は日本株にしか投資しないから、中国は関係ない」という姿勢ではいられないということです。例として、米国の利上げ同様、中国の利下げも、日本の株式市場に直接的な影響が及ぶのは必至です。

 前置きが長くなりました。以下、8大イベントを一つ一つ挙げていきます。順番も適当に並べているわけではありません。時間軸や関連性などを意識して配置しました。ぜひ頭の中で整理しながら読み進めていただければ幸いです。

注目の中国8大イベント

イベント1:北京冬季五輪

 北京冬季五輪(2月4日開幕)まで残り1カ月となりました。夏季、冬季を問わず五輪とは本来「平和の祭典」であるべきですが、政治と無関係ではいられないのもまた歴史的真実です。1980年のモスクワ五輪では、米国が旧ソ連のアフガニスタン侵攻を非難し、選手団を派遣しないよう同盟国に要請したことで、日本を含む50ほどの国が参加しませんでした。準備をしてきた選手たちは、悔しい思いをしました。

 今回の北京五輪も例外ではありません。新疆(しんきょう)ウイグル自治区における人権侵害を問題視する国の中では、米国、英国、カナダ、豪州などが「外交ボイコット」を決めました。日本も閣僚らを派遣しないと表明しています。開幕式までの1カ月間で、中国共産党による人権侵害を引き金に、北京五輪へのボイコットや拒絶反応がさまざまな形で広がっていけば、当然外交問題に発展します。そして言うまでもなく、そのような姿勢を表明した国の企業は対中ビジネスがやりにくくなる、あるいは、中国当局からの制裁に遭いやすくなるのも必至です。

 北京五輪はすでに政治問題化、外交問題化しています。北京五輪のスポンサー事業や、その先にある対中市場戦略を含めた、中国と諸外国間における経済活動にも影響を与えるということです。私がリスク要因として注視すべきと指摘するゆえんです。

イベント2:新型コロナウイルス

 欧米で三度爆発的に感染者が増え、日本でも変異株オミクロン型の動向、市中感染の広がりを含め、「第6波」の到来が懸念されている今現在、中国でも新型コロナウイルスの感染拡大が再度警戒されるようになっています。

 五輪の開催地である北京およびその近郊からは約1,000キロ離れていますが、年末年始に陝西(せんせい)省、特に西安市(昔の長安)で集中的に感染が拡大し、同市はロックダウン(都市封鎖)に踏み切りました。市内に暮らす友人によれば、学校や職場は全て休止し、自宅から一歩も出ることが許されないとのこと。「まさに当時の武漢と全く一緒の状態」(同友人)。政府から一部食料が無料で配給されているようですが、市民はストレスのかかる生活を余儀なくされているようです。

 ただでさえ感染が拡大しやすい冬の季節、北京五輪に向けて、残りの1カ月に他地域への感染が拡大することはあり得ます。あるいは、昨年の東京夏季五輪と同じように選手らと外部との接触を断つ「バブル方式」を採用したとしても、外国から入国した選手やスタッフからウイルスが拡散する可能性は否定できません。日本でも懸念されていたように、仮に五輪を開催したことで国内での感染が拡大すれば、(日本と中国では政治体制が異なるとはいえ)政権の正統性、求心力にもヒビが入りかねません。

 そして言うまでもなく、新型コロナの感染拡大は経済活動に深刻な影響をもたらします。2022年は政治の季節。習近平(シー・ジンピン)総書記としては、感染拡大→経済低迷→政治不安、という悪循環を何としても避けたいと考えているでしょう。

イベント3:米中関係

 中国共産党や政府の関係者と議論をしていると、2022年、政権運営にとって最大のリスクは「米国」という声が普遍的です。上記の北京冬季五輪の開催を巡っても、米国のバイデン政権に端を発した「外交ボイコット」が、西側諸国の対中包囲網の引き金になっています。バイデン政権として、中国共産党による新疆ウイグル自治区の少数民族への人権侵害を見過ごすことはあり得ないでしょう。

 昨年のクリスマス前夜、バイデン大統領はウイグル強制労働防止法案に署名しました。強制労働で生産されたものではないと企業が証明できる場合を除き、新疆ウイグル自治区からの産品の輸入が禁止されることになります。これに対して中国は激しく反発しています。米中双方でビジネスを展開する日本企業は、サプライチェーン(供給網)や経営戦略の見直しが必至となり、状況次第では企業の収益や信用に打撃となるでしょう。

 その他、昨年12月の選挙を経て、議会から「民主派」が消え、「親中派」一色となった香港問題、中国の台湾侵攻を含めた地政学リスクを含め、これらの構造的問題は基本的に米中間の攻防、摩擦、対立に端を発しています。日本を取り巻く安全保障環境、そして市場動向にも直接的な影響を及ぼしかねません。2022年、引き続き米中関係から目が離せません。

イベント4:全国人民代表大会(全人代)

 北京五輪閉幕の約2週間後に開幕が予定されている一年に一度、最大の政治イベントです。注目点は二つだとみています。一つ目が、人権問題、新型コロナを含め、予断を許さない状況が続く中で迎える北京冬季五輪を安全かつ円満に開催した上で、全人代を迎えることができるかどうか。二つ目が、2022年の経済成長率がどれくらいに設定されるか、です。

 前者に関しては、仮に五輪開催期間の前後に新型コロナが急速に感染拡大する、あるいは開催期間中に人権問題をきっかけに諸外国との関係が劇的に悪化するといった事態が発生すれば、2020年同様、全人代そのものが延期になる可能性も否定できません。

 後者に関しては、コロナ禍からのV字回復もあり、2021年のGDP(国内総生産)成長率は8.0%前後を見込めますが、李克強(リー・カーチャン)首相も示してきたように、肝心なのは2022年以降です。2021年が良いのは当たり前。中国経済が安定的に成長しているかどうかを計測するための「元年」が2022年ということです。その意味で、全人代で2022年の成長目標をどれくらいに設定するか。「5.0%前後」、「4.0~5.0%」、あるいは「6.0%前後」か? 見ものです。

イベント5:経済情勢

 昨年12月に開催された、一年で最も重要な経済会議「中央経済工作会議」において、2022年は安定最優先、そのための成長重視、という方針が明らかにされました。民主選挙で指導部や議員が選ばれるわけではない中国において、経済成長は政権正統性を担保する上で何よりも重要な指標になります。

 現在、そして予測可能な未来において、中国共産党指導部の経済政策にとっての至上命令は、成長と改革という両輪を同時進行で回転させていくことにほかなりません。ただ、人間のやることですから、きれいに半分ずつの労力を割くなんてことはできず、必ずひずみが生じてきます。私の分析では、教育、IT(情報技術)、海外上場など、さまざまな分野で規制が強化された2021年は「改革」寄り、2022年は「成長」寄りの政策をとるでしょう。

 そのため、インフラ、科学技術、不動産といった分野を中心に、積極的な財政出動による投資が、マクロ政策の筆頭として強化されると私は見込んでいます。年末、党指導部のマクロ政策策定に直接関与する立場にある経済学者と話をしましたが、「2022年、何よりも重要なのが成長を担保、促進させる政策を打つことだ」と断言していました。

イベント6:“規制ラッシュ”

 2021年の中国経済を振り返るとき、各種分野で市場動向や企業活動への規制が強化されたこと、すなわち“規制ラッシュ”を思い出す投資家は少なくないでしょう。基本的に、ネガティブに受け止められ、リスク要因と見なされました。そういう見方は間違っていないと思います。

 一方で、習近平政権からすれば、一部の人間だけを富ませる「先富論」ではなく、社会全体で豊かになる「共同富裕」という新たな成長戦略の下、経済全体を底上げするための市場ルールの整理、すなわち「改革」を意味しています。私自身、政策が適切に実行されれば、短期的には代償を伴っても、中長期的には中国経済や市場の魅力を深化させるとみています。

 ただ、中央経済工作会議で2022年度の方針が示されたように、今年は「改革」よりも「成長」重視。上記の経済学者を含め、党指導部の経済政策策定に関与する関係者たちは、昨年打ち出した規制強化策が、海外投資家を含めた市場関係者によくない印象を与えていることを明確に認識しています。従って、関連省庁は今年、昨年度に比べて規制強化策を打ち出すのに慎重に慎重を重ねると私はみています。根拠は、「成長重視」だからです。

イベント7:日中関係

 私自身、日ごろ日本の機関投資家と議論する過程で切実に感じることですが、彼らは日中関係を非常に重視し、その動向をウオッチしています。端的に言えば、尖閣諸島を巡る問題や歴史認識問題などが引き金となり、日中関係、日本国民の対中感情が悪化することは、対中投資の弊害になるということです。

 本来、感情をベースとする対中世論(理性要因を否定するものではない)が、理性をベースとする対中投資(感情要因を否定するものではない)を左右するというのは合理性に欠けると言わざるを得ないですが、それもまた日本人の対中認識を巡る真実なのだと、私自身は感じてきました。

 2022年は、日中国交正常化50周年という節目の年にあたります。コロナ禍で依然人の往来は極端に制限されるものの、両国政府は当然、記念式典の開催などを通じて、両国関係や国民間の信頼構築を促そうとするでしょう。

 この要素は、日中経済関係や日本人の対中投資には総じてプラスに働くと私はみています。政策当局者が「友好偏重」、「安定重視」、「衝突回避」を前提に政策を組み立てるからです。

イベント8:第20回党大会

 2022年の中国情勢にとって最も重要な政治イベントです。開催は5年に1度。秋に予定されています。今回の党大会最大の焦点は何といっても、「習近平第3次政権」誕生なるか、習氏は誰を「後継者」に据えようとしているか、その人物の存在は明らかになるのか、にほかなりません。最終的には、2023年3月の全人代で、習氏が総書記(党のトップ)、軍事委員会主席(軍のトップ)以外に、国家主席(国のトップ)を続投するかが明らかになりますが、党大会で大体の全貌は見えてきます。

 仮に習氏続投となれば、政治や経済、外交、軍事を含めたあらゆる政策は維持、あるいは強化されることになり、私たちの中国を眺める視点にも必然的に影響してきます。中国という巨大市場がどこへ向かうのかを占う上で最大の焦点となるのが、習氏が続投するかです。今年一年全体を通して、中国からますます目が離せなくなると言えるでしょう。

(加藤 嘉一)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください