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脱炭素&DX、2022年の重要テーマに。2050年までの脱炭素が可能と考える理由

トウシル / 2022年1月18日 7時19分

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脱炭素&DX、2022年の重要テーマに。2050年までの脱炭素が可能と考える理由

 2022年も「脱炭素」と「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が株式市場の重要テーマになると考えています。今日は、「脱炭素」についての私の基本的な考え方をお伝えします。

脱炭素は可能、地球はエネルギーであふれている

 世界各国が、脱炭素【注】の目標を掲げる時代となりました。日本も「2050年までに脱炭素を実現」と高い目標を掲げています。化石燃料を大量に消費して生活している私たちがたったの30年でそのような高い目標を実現できるのでしょうか?

【注】脱炭素
「カーボンフリー」ともいいます。化石燃料(主成分は炭素)を燃やす(酸素と結合させる)と、二酸化炭素(CO2)が排出されます。二酸化炭素の排出を実質ゼロにすることを「脱炭素」と呼ぶのが一般的です。実質ゼロとは、一定量の排出はあるが、それと同量の二酸化炭素を吸着して地中に封じ込めるなどの方法で、実質的な排出をゼロにすることです。

 私は、人類が本気を出せば、2050年までに先進国で脱炭素を実現することが可能と考えています。なぜならば、地球は外も内も、莫大(ばくだい)な自然エネルギーで満ちあふれているからです。

 そのほんの一部だけ使いこなせば、人類に必要なエネルギーは簡単にまかなえます。人類の持つ技術開発力をフル動員すれば、2050年までに自然エネルギー主体のエネルギー循環社会は実現可能と思います。

【1】太陽から降り注ぐエネルギーの活用

 地球外から、毎日、莫大な太陽エネルギーが地球に降り注いでいます。そのエネルギーは地球にとどまらず、夜になると宇宙に放出されます。そのほんの一部を捉えて電気など人類が使いやすいエネルギーに変換できれば、化石燃料を燃やす必要はなくなります。

 ただし、太陽エネルギーの活用には1つ重大な問題があります。広く薄く地球全体にばらまかれていることです。エネルギーの総量は莫大でも、1カ所にまとまっていないので、効率的に収集することができません。うまくエネルギーを集中させる工夫が必要です。

 水力・風力などを使った発電は、元をただせば、ほとんど太陽由来のエネルギーです。広く薄く分散した太陽由来のエネルギーが、水や風の流れに変わり特定箇所に集中するのをうまく捉えて発電するものです。

 近年、太陽由来のエネルギーを活用する発電のコストが急速に低下しています。水力発電はもともと低コストで、古くから幅広く使われてきました。風力発電は、洋上風力にすることで規模を拡大し、コストを下げています。

 太陽光発電も、メガソーラーのように規模を拡大することで、発電コストを低下させ、補助金なしでも競争力のある「グリッド・パリティ」を達成しつつあります。太陽熱発電も有望です。これからも、太陽由来のエネルギーを使った発電のコストをさらに引き下げる技術がどんどん開発されていくと思います。

 自然エネルギー発電の問題は「出力が不安定」「小規模だと高コスト」の2点です。それについては後段で詳述します。

【2】地球内部のエネルギーを活用

 地球内部にも莫大なエネルギーが存在します。地球の体積の97%以上が摂氏1,000度以上で、このエネルギーを活用する方法の開発も進んでいます。ただし摂氏1,000度以上の上部マントルに到達するまで地下60キロメートルもあり、そこまで掘り進むことはできないしその必要もありません。

 地下2,000~5,000メートル掘り進むと、摂氏200~300度の高温帯に達します。そこに水を送り込み、水蒸気にしてタービンを回し、発電するという方法が開発中です。それが、高温岩体発電と呼ばれる発電方法です。まだ技術的なハードルがたくさんあり、すぐに大規模電源とはなりません。今後の技術開発に期待したいところです。

 ところで、それとは別に、早くから活用されているのが、熱水だまりを使う地熱発電です。熱水だまりとは、火山などによって水蒸気に変わった地下水が、硬い岩盤によって地下に閉じ込められている場所のことです。大規模な熱水だまりが見つかれば、そこから水蒸気を取り出してタービンをまわすだけで、低コストの電気が得られます。出力が安定しているので、ベース電源として使えます。

 ただし、熱水だまりを活用する地熱発電は、できる国が限られます。地熱資源(地熱発電に使える熱水だまり)を持つ国がかたよっているからです。日本・インドネシア・米国は3大地熱資源国と言われます。ただし、熱水だまりを活用するだけならば、永続性のある電源とはなりません。もし、現存する熱水だまりをどんどん開発して使ってしまったら、いずれ地熱資源は枯渇します。

 地中のエネルギーを永遠に使い続けるためには、もっと深くまで掘り進んで、高温岩体発電を実現するしかありません。高温岩体発電ならば、理論上、地球のどこでもできるし、枯渇することなく使い続けることができる電源となります。

脱炭素をはばむ、3つの問題

 2050年までの脱炭素は、人類が本気で取り組めば、実現可能と考えています。ただし、実際には実現できないかもしれません。最大のリスクは、人類が本気で取り組まないかもしれないリスクです。その他テクニカルな問題も含め、脱炭素を阻む、以下3つの問題があります。

【1】地球上に安価な化石燃料がまだまだ大量にある問題

 安価な化石燃料が莫大に存在することが、自然エネルギー開発を遅らせる最大の問題となっています。米国のトランプ元大統領のように、自然エネルギーを完全否定して、化石燃料をどんどん開発して使い続ければ良いと考えている人はたくさんいます。

 化石燃料を使う企業にペナルティを科し、自然エネルギーを使う企業にプレミアムを支払う仕組みを構築し、定着させなければ、自然エネルギーの活用は進みません。それを世界中で徹底できないと、脱炭素は進まないかもしれません。

 原油が枯渇しそうになって、原油価格が急騰すれば、脱炭素の技術開発は文句なく進むでしょう。ところが、現実には地球上には安価な化石燃料が大量に存在します。可採埋蔵量は、これからもどんどん増えるでしょう。

 技術革新によって、これまで採掘できなかった深海や、シェール層などからも大量の原油やガスが採れるようになったからです。未開発のシェール層や、日本近海のメタンハイドレ-ド(燃える氷)など未開発の化石燃料は、莫大に存在します。化石燃料が枯渇しそうになることは、当分ないと思います。

【2】流通コストがきわめて高い問題

 自然エネルギーによる発電コストはどんどん低下し、発電コストだけで見ると、今や競争力のある電源となりつつあります。ところが、流通コストがきわめて高い問題が残っています。流通コストまで含めて低コストとならなければ、化石燃料を本格的に代替することはできません。

 もし太陽光パネルをアフリカの砂漠に大量に敷き詰めれば、低コストの電気が大量に得られます。ところが、それを使う術がありません。作られた電気を都市部に運ぶのに莫大なコストがかかるからです。

 仮に、送電線網を張り巡らせて、砂漠の電気を都市まで持ってきても、需給調整がうまくいきません。電気は保存ができない(蓄電池で保存できる量は限られる)ので、発電量と消費量を常に一致させる「同時同量」が実現できない問題があります。需給調整に失敗すると、大規模停電が頻発する問題に苦しめられます。

 これを解決するのが、水素の活用と考えられています。自然エネルギーで作る電気で水を電気分解して得られる水素を、運搬・保存する方法です。電気が必要になれば、貯蔵してある水素を燃やして発電すれば良く、排出されるのは水だけです。

【3】環境問題

 持続可能なエネルギー循環社会をつくるために進める自然エネルギーの活用ですが、皮肉なことに、必ず環境問題に突き当たります。たとえ自然エネルギーの発電所でも、誰も近所にはあってほしくないと思います。

 そのために、日本ではメガソーラーでも風力でも規模が小さいという問題があります。それが、日本ではなかなか自然エネルギーの発電コストが下がらない原因となっています。なんらかの社会的ルールを整備して、大規模な自然エネルギー発電所を実現させないと、コスト低下は進みません。

 風力発電には、重低音公害の問題があります。洋上風力も、漁業資源への悪影響が心配されます。地熱発電も、高温岩体発電も、地盤沈下や地下水への悪影響などの環境問題をクリアできないと前へ進めません。

 自然エネルギーで発電を行う地域として人口過疎地が選ばれることが多いですが、それでも人がまったく住んでいない場所はありません。自然エネルギーの活用は、環境問題をクリアしながら進めることが求められます。

脱炭素を進める前に、天然ガス・LNGの効率利用を進める必要がある

 脱炭素を進めるには、最終的には自然エネルギーを拡大する必要がありますが、その前にやらなければならないことがあります。天然ガス・LNGの効率的な活用です。

【1】自然エネルギーは気まぐれ、調整電源としてガス火力が必須

 自然エネルギー発電の多くは、気まぐれです。太陽光や風力はその典型です。突然大量に発電されたり、まったく発電がなくなったりします。電気は、保存ができないため、需給調整が難しく、自然エネルギーが電源に占める比率が高くなると、無駄に電気を捨てる問題や、大規模停電が起こる問題があります。

 常時、同時同量(発電量と電力使用量を一致させる)を実現するには、自然エネルギーの発電量の変化に合わせて、発電量を機動的に増やしたり減らしたりする調整電源が必要です。調整電源として大規模に活用可能なのは、現時点でガス火力発電しかありません。

 石炭火力や原子力は、現時点で出力調整に時間がかかり過ぎるのでベース電源(昼夜を通じて常時同じ出力で発電を続ける電源)にしかなりません。

 将来、水素発電で機動的な需給調整を行う時が来ると考えられますが、そうなるまでにまだ数十年の年月がかかると思います。当面は、化石燃料である天然ガスを使わないと、自然エネルギーの活用が進まないという現実に、人類はきちんと向き合う必要があります。

【2】石炭火力を減らすには、まずガス火力を増やす必要がある

 地球規模で脱炭素を進めるならば、経済規模がきわめて大きくなった中国やインドが電源の大部分を石炭火力に頼っている問題を、看過できません。

 石炭火力に頼り切っている国で、いきなり自然エネルギー発電を拡大することはできません。当面は、石炭ほど環境負荷が大きくない天然ガスを活用するしかないと思います。中国やインドで、石炭火力発電をガス火力発電に置き換えていくことが、脱炭素を世界規模で進めるのに効果があると思います。

 ところで、今の地球上には、まだ活用されずに焼却処分されている天然ガスが大量にあります。中東の油田では、原油を採掘する際に、出てくる天然ガスを今でも大量に燃やして捨てています。それを、すべてLNG(液化天然ガス)に変えて、もれなく活用することが、地球環境にとってきわめて重要です。

 油田で出てくる天然ガスを、パイプラインで運べる範囲だけで使うのでは、もれなく活用することはできません。LNGに変換して、世界中に運ぶ必要があります。そこで、LNGおよびガス火力発電で高い技術を持つ日本企業に、大いに活躍の場があるはずです。

【3】化石燃料はすべて悪と決めつける風潮が、LNG活用の障害となっている

 LNGを積極的に大量に活用しているのは、世界でもまだ日本や韓国などに限られます。油田で天然ガスが燃やして捨てられている問題に目をつぶり、世界ではLNGの活用が遅々として進みません。ガス火力もLNGも含めて、化石燃料を使うことはすべて悪と決めつける風潮があるからです。

 世界に広がるESG投資では、「化石燃料はすべて悪、電気や自然エネルギーの活用だけ善」とされていますが、現実的でありません。当面、ガス火力の活用無しに自然エネルギー発電の拡大ができない現実を無視していると思います。

 EU(欧州共同体)が、脱石炭を進めるために天然ガスと原子力をグリーンエネルギーに入れると決めたことが物議をかもしていますが、現実的な選択肢と思います。

原発も選択肢?

 脱炭素を進めるために原子力発電を推進する案もあります。私は、その考えに基本的に同意しません。安全性の問題が残ることもありますが、それだけではありません。日本の原発政策が「核燃料サイクル事業」が実現することを前提として推進していることが問題と考えています。

 ただし、以下3つの条件がすべてそろえば、原発も脱炭素の選択肢に入る可能性はあります。ハードルはかなり高いと思います。以下、3つの条件です。

<原発を脱炭素の選択肢に入れるために必要と考える条件>

【1】国民が納得できる十分な安全性を確保する
【2】核燃料サイクルが実現不可能であることを公式に認める
【3】最終処分場を確保する(深度1,000~5,000メートルの地中埋蔵も選択肢に入れる)

<参考>核燃料サイクル事業について

 現在、日本は、核燃料サイクルが実現することを前提に原発事業の原価を計算しています。核燃料サイクルとは、使用済み核燃料を再生してMOX燃料を作り、再び原子炉で発電に使うものです。これをプルサーマル発電といいます。

 さらに、そこから得られるプルトニウムを使って、高速増殖炉で発電を行う計画です。高速増殖炉では、使用するプルトニウムを上回る量のプルトニウムが得られ、何度も発電を繰り返すことができる、とされてきました。

 夢のような核燃料サイクルが実現することを前提としているため、日本の電力会社は使用済核燃料から得られるプルトニウムなどを資産として計上しています。使用済み核燃料はプルサーマル発電や高速増殖炉で新たに発電を行うための「資源」という扱いです。

 ところが、日本の核燃料サイクル事業は、現時点でまだ何も実現していません。最近、核燃料サイクル事業は安全性が確保できず、実現不可能との見方が強まっています。使用済燃料から未使用のウランやプルトニウムを取り出してMOX燃料に加工する予定であった青森県六ヶ所村の再処理工場は技術上の問題が次々と出て、完成していません。

 高速増殖炉の開発も進んでいません。日本では、再処理したプルトニウムで動くはずであった高速増殖炉「もんじゅ」は1995年にナトリウム漏えい事故を起こして以来、稼働が停止したまま、廃炉が決定しました。2018年から30年かけて廃炉を進める計画です。欧米でも技術的な困難と経済性から、高速増殖炉の開発を断念する国が増えています。

 今の日本は、技術的にまったく完成のメドがたっていない核燃料サイクルが実現することを前提に原発事業を推進しています。もし、日本政府が核燃料サイクルを断念する場合、国内に積み上がった使用済み核燃料は、最終処分にコストがかかる「核のゴミ」に変わります。

 そうなると、原発はコストの高い発電となる可能性があります。既に大量に抱えている使用済み核燃料の最終処分場を確保する必要が生じます。

<参考資料>使用済み核燃料の処分方法(核燃料サイクルを行う場合と、行わない場合)

<図A>核燃料サイクルを行わない場合:使用済み核燃料を直接処分

出所:各種資料より筆者作成

<図B>核燃料サイクルを行う場合:プルサーマル発電まで

出所:各種資料より筆者作成

<図C>核燃料サイクルを行う場合:高速増殖炉まで

出所:各種資料より筆者作成

(窪田 真之)

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