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「紙幣の大増刷と信用創造」から「戦争と革命」の時代へ…

トウシル / 2022年4月21日 16時41分

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「紙幣の大増刷と信用創造」から「戦争と革命」の時代へ…

次に何が起こるか?もしプーチンが負けに直面したらどうするのか!?

 世界最大のヘッジファンドであるブリッジウォーターを率いるレイ・ダリオは、先週リンクトインに投稿した『世界秩序をめぐる長い戦いにおける最初の争いの行方をどう見るか?』のなかで次のように語っている。

「私にとっては、ロシア・ウクライナ・米国・その他の国々の動きは、現在進行中の世界秩序の変化の中で最も注目される部分であるが、本質的には、世界秩序の支配をめぐる長い戦争の最初の戦いに過ぎない。

 次に何が起こるか、最も重要なことは、もしプーチンが負けに直面したらどうするのか、ということだ。彼は賭け金を上げるのか(ほぼ間違いない)、それはどんなものなのか(非常に怖い)?

 この一連の状況は、破壊力がはるかに「高度」であることを除けば、第一次世界大戦前に存在していた状況に恐ろしく似ている。これは恐ろしい図式である。

 プーチンがG20に出席できるかどうかで各国がどう並ぶかは、明らかに大きな指標になる。20カ国が分裂してまとまらないということは、世界秩序をより統一的にするために協力して問題を解決する段階を過ぎ、対立する国同士が戦争する段階に入っているということを証明するものだ。

 富と価値をめぐる内部対立が、米国の国内秩序を脅かすほど大きな政治的対立を引き起こしていることと、膨大な債務と貨幣の創造が、債務と貨幣の価値を低下させ、貨幣と価値の貯蔵物のあり方を再構築している。

 インフレ率の上昇や金利の上昇は、市場や経済の問題だけでなく、国内政治や国際的な地政学的な問題でもあり、それが国内政治に影響を与える。世界の経済成長と基軸通貨としてのドルの強さは、国際地政学に影響を与える。

 通貨が有効であるためには、富の蓄積と交換の媒介の両方として有効でなければならない。通貨は負債や貨幣として保有されているため、通貨の購買力が金利で補われている以上に低下すると(現在、ほとんどの通貨、負債、貨幣がそうである)、富の蓄積としての価値が低下する。

 ドルのリスクと米国債のリスクに加え、ドルの武器化もある。ドルの武器化は、ドル建て債権を保有する者の一部に制裁を受けることを心配させ、ドルからの分散投資や、この米国独自の力を弱める他の防衛的な動きを追求させるというリスクを伴うものである。さらに、このような理由による弱体化が予想されること自体が、ドル売りにつながり、弱気になる可能性がある。

 世界の基軸通貨を独占する米国の独自のパワーと特権は、a)大量の債務と貨幣の創出による弱体化、b)地政学的理由による保有への不安、の双方によって脅かされる可能性があるのだ。

 これらは、投資家にとっても非投資家にとっても最も重要な問題であり、そう遠くない将来に何らかの解明がなされるだろうと私は考えている」

出所:『世界秩序をめぐる長い戦いにおける最初の争いの行方をどう見るか?』(レイ・ダリオ)

 ドルの武器化とは、通貨や西側の金融システムの使用に制限を加える制裁である。クレディ・スイスのゾルタン・ポズサーは、G7がロシアのウクライナ侵攻を受けて、ロシアの外貨準備を凍結した日に、現在の通貨体制は終焉(しゅうえん)を迎えたと述べている。

「リスクフリーと考えられていたものがそうではなくなり、存在しなかった信用リスクがきわめて現実的な没収リスクに一瞬で置き換わった」のだ。ポズサーが「ブレトンウッズIII」と呼ぶ新しい国際金融秩序は、ペーパーマネーから実物資産への投資を加速させていくことになる。

 ロシア・ウクライナ戦争の勃発で、レイ・ダリオが主観を排して抽出した帝国のビッグサイクル(歴史のパターン)が、いかに普遍的なものであるかが証明されつつある。

 レイ・ダリオの帝国のビッグサイクルは、「紙幣の大増刷と信用創造」から次のフェイズである「戦争と革命」に移行したようだ。

「債務破綻と景気後退」(リーマンショック)→「紙幣の大増刷と信用創造」(中央銀行バブル・国家管理相場)という流れが終わり、今、われわれは「戦争と革命(富の再配分)」という時代に足を踏み入れた。

帝国のビッグサイクル

世界秩序の変化に対応する準備をしておく必要がある
出所:レイ・ダリオ(リンクトイン)

世界秩序の変化

2024年の米大統領選挙で米国の「大分断」が起こる
出所:レイ・ダリオ(リンクトイン)

 2025年には米国の負債が1981年の50倍に膨れ上がると予測されている。FRB(米連邦準備制度理事会)がコントロールを失うことで、アメリカ帝国は金利を支払う余裕すらなく、デフォルト(債務不履行)に陥る可能性がある。いずれにせよ、すべての帝国は<財政破綻>して終わりを迎える。

米国の連邦債務(1971~2025年(予測))

すべての帝国は財政破綻して終わりを迎える
出所:ゼロヘッジ

 レイ・ダリオが指摘しているように、現在、インフレが猛威を振るっており、インフレが財産をむしばんでいる。それは当然のことだ。現時点では、1)政府が大量のお金を印刷し、2)人々が大量のお金を手に入れ、3)それが大量の買いを生み、さらに大量のインフレを引き起こしている。

米連銀の総資産(8兆9,654億ドル)

出所:セントルイス連銀

 一部の人々は、自分の購買力がどのように損なわれているかを見ずに、自分の資産が値上がりしているので、自分がより豊かになっていると勘違いしている。最も被害を受けているのは、現金でお金を持っている人たちだ。

「経済のからくりは簡単なものだが、それを本当に理解している人は少なく、またそのからくりが納得できず経済的な苦難に追い込まれている人も多い。経済の仕組みは複雑に見えるが、シンプルな構成要素とシンプルな取引から構成されており、これが繰り返し何度も起きている」

 このような出だしで始まるのは、レイ・ダリオの相場哲学をまとめたYouTube動画「30分で判る 経済の仕組み Ray Dalio」である。

 経済活動における3つの要素について、次のように述べられている。

3つの重要な要素が存在します。次のことを忘れないでください。

第1に、所得より早く債務を増加させない、でないと債務負担が耐えきれなくなります。
第2に、所得を生産性より早く増加させない、そうなると競争力が弱くなります。
第3に、生産性を向上させる努力を惜しんではいけない、これは長期的に一番大切な要素なのです。

インフレヘッジに適したETFはあるのか?

 インフレは米国だけの問題にとどまらない。現在、世界の食料価格が過去最高のペースで上昇している。FAO(国連食糧農業機関)が算出している世界食料価格指数は3月に13%上昇し、食料価格は過去最高へと押し上げられている。

●FAO食料価格指数

出所:FAO

 今後懸念されるのは、「アラブの春」の再燃だ。2010年から2011年にかけて連鎖的に起きた「アラブの春」では、中東・北アフリカの地域の多くで人々の命が犠牲になる革命が起き、前例のない地政学的変化をもたらした。

 食糧をめぐる世界的な抗議が再び世界のあちこちで勃発し、世界中の不安定な、またはおそらく安定した政府であってもインフレを抑えることができない場合、革命が起きる可能性がある。市民革命の発端は常に食料価格の高騰を背景とした国民の怒りである。

小麦価格はGFCやアラブの春の高値を上回っている

出所:ゼロヘッジ

 インフレリスクに対するヘッジ手段として筆者がウオッチしているのが「物価連動国債ETF(上場投資信託)」である。インフレ連動債(TIPS)と呼ばれるETFで、インフレ率に応じて元本が調整される仕組みとなっている。利率は変動しないが、物価に応じて元本が調整されるため、インフレが起きたとしても実質的な価値が低下しない債券のETFだ。

TIPSのパフォーマンス

出所:ブラックロックHP

 2003年12月に設定され、直近の純資産総額は328億ドル(4月14日時点)まで膨らんでいる。中期的なインフレによる影響が懸念される中では、ポートフォリオに組み入れておきたいETFの一つである。

4月20日のラジオNIKKEI『楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー』

 4月20日のラジオNIKKEI『楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー』は、荒地潤さん(楽天証券FXアナリスト)をゲストにお招きして、「円の実質実効レート」・「キャリートレードの大発生」・「円の8年サイクル」・「日銀が輪転機で刷った円で政府の借金を帳消しにするインフレ政策」というテーマで話をしてみた。ぜひ、ご覧ください。

出所:YouTube
出所:YouTube
出所:YouTube
出所:YouTube

 ラジオNIKKEIの番組ホームページから出演者の資料がダウンロードできるので、投資の参考にしていただきたい。

4月20日: 楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー

出所:YouTube

(石原 順)

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