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【後編】コモディティ投資で勝つために必要なこと

トウシル / 2022年5月3日 5時0分

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【後編】コモディティ投資で勝つために必要なこと

鳥になって「俯瞰(ふかん)」しよう

 前回の「【前編】コモディティ投資で勝つために必要なこと」では、市場環境が年々複雑化し、金(ゴールド)や原油市場で変動要因が多層化していること、それによって重要な問いが立つことを述べました。

 そして、その問いへの回答を導き出すためには、「過去の常識」vs「現在の常識」の論争に注目することが有効で、ひいてはそれが「現在の常識」への理解を深めるきっかけになると、書きました。

 重要な問いとは、シンプルさを旨とする「過去の常識」では説明できない、「ドル高でもなぜ金(ゴールド)相場が上昇しているのか?」「OPEC(石油輸出国機構)増産でもなぜ原油相場が上昇しているのか?」というものでした。

 後編の今回は、「現在の常識」の柱である「材料の俯瞰(ふかん)と影響力の足し引き」を、柱を支える要素である「材料を俯瞰すること」「抽象度を高めること」について述べて説明した上で、「重要な問い」に回答します。

 以下は、「材料を俯瞰すること」「抽象度を高めること」についてのイメージ図です。金(ゴールド)相場の場合です。

図:「材料を俯瞰すること」「抽象度を高めること」のイメージ図

出所:筆者作成

 鳥が上空より、地上の隅から隅までを見下ろしています。これが「全体を見渡す=俯瞰」です。何を俯瞰しているのか? それは、3つの時間軸に分けた7つのテーマです。7つのテーマは金(ゴールド)市場に関わるほとんどの変動要因(材料)を網羅できる、抽象的なキーワードでできています。

「重要な問い」の答え

 重要な問いの一つ「ドル高でもなぜ金(ゴールド)相場が上昇しているのか?」は、ウクライナ危機勃発後の動向をもとに立てられたものであるため、時間軸としては「短中期」にあたります。

 先ほどの鳥の図で述べた短中期のテーマには「有事ムード」「代替資産」「代替通貨」の3つがありました。これら3つを使い、この問いに答えます。

図:「材料の足し引き」 金(ゴールド)

出所:筆者作成

 3つのテーマそれぞれから圧力が同時にかかり、それらが相殺(そうさい)され、結果的に上昇していると考えられます。「ドル高(テーマは代替通貨)」のみに注目すれば価格は下落することになりますが、「有事ムード」も「代替資産」も考慮すれば、上昇していることを説明できます

 次はもう一つの問い「OPEC増産でもなぜ原油相場が上昇しているのか?」です。原油についてですが、こちらも時間軸は短中期です。テーマは「産油国の政情」「産油国の政策」「需要動向」の3つです。

 3つのテーマそれぞれから圧力が同時にかかり、それらが相殺され、結果的に上昇していると考えられます。「OPEC増産(テーマは産油国の政策)」のみに注目すれば価格は下落することになりますが、「産油国の政情」も考慮すれば、上昇していることを説明できます。(「需要動向」も下落圧力を生み出している)

図:「材料の足し引き」 原油

出所:筆者作成

 材料を、抽象度を高めたいくつかのテーマに分類し、影響度の足し算引き算を行うことで、「重要な問い」に回答することができました。材料を点で見る傾向があった「過去の常識」が語られた時代にはなかった発想だと思います。

「現在の常識」の柱「材料の俯瞰と影響力の足し引き」の手順
1. 値動きに関わる、複数の抽象的なテーマを設定(時間軸別)
2. 材料をテーマごとに分類
3. それぞれの材料起因の上昇・下落圧力を足し引きする

金(ゴールド)、目先はドル高でも上昇か

 以下の図は、短中期的視点の、金(ゴールド)相場の見通しを説明したものです。「重要な問い」の回答で述べたのと同様、目先は「有事ムード」「代替資産」起因の上昇圧力が、「代替通貨」起因の下落圧力を相殺し、価格は上昇すると考えます。

 時間軸が長い「中長期」「超長期」の抽象的キーワードや、各テーマの具体例を併記しています。

図:金(ゴールド)の時間軸の異なる7つのテーマと、短中期の価格見通し

出所:筆者作成

原油、目先はOPEC増産でも上昇か

 以下は、短中期的視点の、原油相場の見通しを、説明したものです。「重要な問い」の回答で述べたのと同様、目先は「産油国の政情」起因の強い上昇圧力が、「産油国の政策」「需要動向」起因の下落圧力を相殺し、価格は上昇すると考えます。

 時間軸が長い「短中期」「中長期」の抽象的キーワードや、各テーマの具体例を併記しています。

図:原油の時間軸の異なる5つのテーマと、短中期の価格見通し

出所:筆者作成

過去を否定し「花の山」に向かう

 前回と今回の2回に分けて、「コモディティ投資で勝つために必要なこと」を書きました。以下は、そのエッセンスです。

・市場環境は年々複雑化、よって「現在の常識」は複雑
・「材料の俯瞰と影響力の足し引き」は「現在の常識」の柱
・時間軸が異なるテーマを用いて材料を俯瞰、各種材料起因の影響力を足し引きする
・精度が高い見通し作成に上記が有用

 また以下は、こうしたエッセンスをより有効に活用するための、筆者が考える、現在の市場関係者が「密になるべき」要素です。

・材料を俯瞰すること (過去の常識(近視眼的見方)の逆)
・今を凝視すること (過去の成功体験重視の逆)
・人に流されないこと (集団心理重視の逆)

 相場格言に「人の行く裏に道あり花の山」があります。今なお「過去の常識」にとらわれている市場関係者が多いと感じます。いち早く「現在の常識」を取り入れ、「材料の俯瞰と影響力の足し引き」を実践できた人が「花の山」にたどり着けると、筆者は考えています。

[参考] 化学肥料関連銘柄

 ロシアとその同盟国である隣国ベラルーシは、化学肥料の一つ「カリ肥料」の輸出大国です。1位のカナダに次ぐ2位・3位で、合わせて世界全体の20%弱のシェアを占めています。(2020年 OECD(経済協力開発機構)のデータより)

図:サカタのタネ(1377 東証P)とニュートリエン(NTR NYSE)の株価

出所:ブルームバーグのデータより筆者作成

 化学肥料に関連する国内外企業の株価が、ロシアのウクライナ侵攻直後から騰勢を強めています。ロシアとベラルーシが出し渋りをして世界的に化学肥料が不足する懸念が、こうした企業のビジネスが活発化するとの思惑を生んでいるためだと、考えられます。

サカタのタネ(1377 東証P)
ニュートリエン(NTR NYSE)

(吉田 哲)

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