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配当利回りが3.5%以上!インフレで割安株に安心感。円安の今、外国人投資家を先回りするなら?

トウシル / 2022年6月16日 6時0分

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配当利回りが3.5%以上!インフレで割安株に安心感。円安の今、外国人投資家を先回りするなら?

インフレ懸念で米国株不安定な中、円安進行などを支援に相対的に底堅い展開が継続

 直近1カ月(5月13日~6月10日)の日経平均株価は5.3%の上昇となりました。5月12日の2万5,688円をボトムとした上昇基調が続き、6月9日には一時、3月25日の戻り高値2万8,338円を上回りました。

 同期間において、ダウ工業株30種平均は2.5%の下落、ナスダック総合指数は3.9%の下落であったため、前1カ月期間に続いて相対的に日経平均は底堅い動きとなっています。なお、東証マザーズ指数に関しても5.9%の上昇となりましたが、年初来の騰落率で見ると30.4%の下落であり、日経平均の3.4%の下落と比べて、まだまだ戻りは鈍い状況といえます。

 世界的なインフレ傾向が続く中、金融引き締め強化に対する警戒感から、米国市場は引き続き不安定な相場展開が継続しています。欧州においても、ECB(欧州中央銀行)が7月の利上げ実施を表明するなどタカ派姿勢に傾斜してきています。こうした中で、相対的に日本株が堅調だった要因としては、以下のものが挙げられるでしょう。

  • 為替相場での一段のドル高・円安進行(6月6日には5月高値を更新し135円が視野に入る水準へ)
  • 米国株と比べてバリュエーション調整余地が小さかったこと(もともと日本株は相対的に割安であった)
  • 経済活動再開に伴う景気回復余地が他の主要国と比べて大きいこと
  • 岸田文雄政権の金融市場に対する政策懸念が後退したこと

 などです。

 とりわけ、円安に関しては、輸出企業の企業収益改善期待とともに、海外投資家の資金流入期待も高めさせたと考えられます。海外投資家が円安局面で日本株を買えば、その後の円高反転に伴って差益が生じることになります。なお、2022年3月期の決算発表が一巡して、ガイダンスリスクが通過したことなども、日本株上昇の一因と考えられます。

 この期間で上昇が目立ったのが大阪チタ(5726)東邦チタ(5727)で、ロシアやウクライナ産の供給懸念に伴うスポンジチタンの価格上昇期待が要因となりました。また、川崎重工(7012)IHI(7013)三菱重工(7011)などの重工大手3社も買われました。防衛予算増額方針を受けて、防衛関連の主力株としてメリット期待が高まったようです。

 ほか、円安の進行を受けて三菱自動車(7211)SUBARU(7270)などの自動車株、経済活動正常化に伴う月次売上改善でH2Oリテ(8242)三越伊勢丹(3099)などの百貨店株にも買いが優勢となりました。

 一方、下落率上位に目立った特徴は少なかったですが、日清製粉(2002)山パン(2212)日清オイリオ(2602)など、食料品の一角が多く上位にランクインしています。原材料費上昇の影響を懸念する動きになったとみられます。

 その他注目された動きとしては、任天堂(7974)にサウジ政府系ファンドの大量取得が明らかになりました。日本郵船(9101)は1:3の株式分割発表が一時買い材料視されました。

世界的な金融引き締め懸念再燃で、相対的にバリュー株に買い安心感

 6月10日に発表された米国の5月CPI(消費者物価指数)は前年同月比8.6%の上昇となりました。4月実績であり、市場コンセンサスでもあった8.3%の上昇を上回り、さらに、食品とエネルギーを除くコアCPIも市場予想を上回る伸びとなりました。

 これにより、インフレピークアウトへの期待は大幅に後退、FRB(米連邦準備制度理事会)の金融引き締め強化や長期化の流れが強まるとの見方が再燃してきています。

 従来は、6月、7月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で0.5%の追加利上げを実施し、9月には利上げ幅が縮小するとの見方もありましたが、今回のCPIを受けて、9月の0.5%利上げはもちろん、7月の0.75%利上げや8月の緊急利上げなども警戒される形となっています。

 直近の株価下落を受けて、6月は0.5%の利上げにとどまる見通しですが、ここであく抜け感が強まる可能性は低下したといえるでしょう。とりわけ、グロース株には今後も買い手控えムードが強まる見通しです。

 米国株に関して、S&P500種指数のPER(株価収益率)水準は17倍程度まで低下し、通常時とされる15〜17倍レンジの上限まで到達しています。過度な割高感は解消しましたが、あくまでレンジ上限であり、目先は一段の調整余地も残されています。日本株も円安など相対的な株価の下支えになる可能性はありますが、米国株に連動する形での下落余地は残ります。   

 目先、5月12日安値から6月9日高値までの半値押し水準が2万7,000円前後であり、一応の下値メドとなりますが、仮にFOMCがネガティブインパクトにつながった場合は、5月安値に迫る2万6,000円レベルが視界に入りそうです。

 ちなみに、円安進行に関しても、短期的にはプラス材料視されても、中期的には、インフレ+円安による輸入物価高により、個人消費の減速につながる公算が大きいといえます。ここからの一段の円安進行を買い材料視する動きは限定的になりそうです。ほか、北京市での新型コロナ感染者数再拡大もあって、中国の経済政策の行方も引き続き不透明要因となってきそうです。

 グロース株が買いにくい中では、あらためてバリューへの資金シフトが進むと考えられますが、中でも、足元で大幅に調整した海運株などは押し目買い妙味となりそうです。日本郵船(9101)商船三井(9104)などは配当利回り10%を優に上回る水準にあり、リバウンド余地は大きいとみられます。

 また、米長期金利の上昇傾向が強まる状況下にあっては、短期資金の戻り売り圧力が相対的に小さいとみられる金融関連株なども優位といえそうです。

 そのほかでは、参院選が7月10日に投開票予定とされています。むしろ参院選後に議論が進展しやすくなるとみられる、防衛関連、GoTo・インバウンド関連、原発関連などは引き続き要注目といえるでしょう。インバウンド需要と合わせて、国内での外出機会増加に伴う化粧品需要の回復なども想定されます。

 中期的には、小麦価格の大幅な上昇傾向が強まると考えられ、米への食シフトが予想されます。肥料や農薬などのほか、農業機械の需要増加につながりそうです。さらに、コメの流通量増加や価格上昇は米穀卸企業などに大きなメリットとなってきそうです。

急激な円安進行局面で外国人投資家の資金流入が期待できる銘柄に注目

 世界的な金融引き締め懸念が再燃する中で、相対的にバリュー株への資金シフトが続く見通しであり、今後も高配当利回り銘柄の活躍余地は大きいと考えられます。特に現在は、為替相場の急速な円安進行が強まっているため、外国人投資家の資金流入が期待できる高配当利回り銘柄に注目したいと考えます。

 基本的に外国人投資家は、円が自国通貨に対して上昇した場合に為替差益が得られます。そのため、今後も円安がしばらく継続すると考える場合には、日本株売りとなります。

 一方で、円安がピークを付けて、今後円高に反転するとみる場合は、日本株買いの妙味が生じます。現状、足元での円安進行は急激でもあり、円安がピークに近づいていると考える外国人投資家も多くなるとみられます。

 今回取り上げた銘柄は、配当利回りが高水準であるほか、ROE(自己資本利益率)が高く、外国人投資家の持株比率が高い銘柄としています。外国人投資家の日本株買いが本格化した際に注目されやすい高配当利回り銘柄と位置付けられます。

 中でも、コロナ前との比較で収益水準が高まっているように、足元で収益体質も強化されている銘柄をピックアップしています。具体的には、配当利回りが3.5%以上の高水準であり、今期予想営業利益がコロナ前水準(3年前比)で増益になっているもの、ROEが10%以上あるもの、外国法人持株比率が30%以上であるものとしています。

外国人投資家の買いが期待できる高配当利回り銘柄

コード 銘柄名 配当利回り 6月13日終値 時価総額 外国法人持株比率 ROE 5年平均成長率
8020 兼松 5.20 1,345.0 1,137 32.93 10.02 3.6
1808 長谷工コーポレーション 5.05 1,584.0 4,765 40.48 13.05 0.4
7272 ヤマハ発動機 4.40 2,613.0 9,157 33.72 18.11 18.1
7202 いすゞ自動車 4.06 1,624.0 12,626 35.77 10.57 12.5
1928 積水ハウス 3.99 2,353.5 16,114 30.91 10.44 4.8
9682 DTS 3.85 3,120.0 1,531 35.42 12.66 2.2
6134 FUJI 3.81 2,101.0 2,055 34.06 10.15 13.3
注:配当利回り、外国法人特殊比率、ROE、5年平均成長率の単位は%、時価総額の単位は億円
注:平均成長率は営業利益(今期予想含む)
注:配当利回りは会社計画がベース

銘柄選定の要件

  1. 予想配当利回りが3.5%以上(6月13日終値)
  2. 今期予想営業利益が3年前比で増益
  3. 時価総額が1,000億円以上
  4. 実績ROEが10%以上
  5. 外国法人持株比率が30%以上50%未満
  6. 前期実績・今期見通しともに営業増益

兼松(8020・東証プライム)

 総合商社の準大手的な位置づけとなります。電子・デバイス、食料、鉄鋼・素材・プラント、車両・航空の4セグメントで展開しており、資源権益に投資していないことが特徴です。財務体質の健全性も相対的に高くなっています。

 配当性向目標としては30~35%をメドとしているようです。2022年4月には、兵庫県を地盤にNTTグループ各社の販売代理店となっているキンキテレコムを買収、モバイル販売網の強化に取り組んでいます。

 2022年3月期営業利益は293億円、前期比24.2%増となりました。エネルギー需要回復で鋼管事業が伸びたほか、畜産物価格の上昇、半導体関連製品の販売好調なども寄与しました。年間配当金は前期比5円増の65円としています。

 一方、2023年3月期は315億円で同7.3%増益の見通しです。モバイル分野での買収効果などによる電子・デバイスの増益、前期に発生した先物評価損の一巡による鉄鋼・素材・プラントの増益を見込んでいます。なお、年間配当金は前期比5円増の70円を計画しています。

 2022年3月には、空飛ぶクルマの離着陸場であるバーティポートの開発・運営、ならびにドローン物流の分野で世界をけん引する英Skyports社と資本業務提携し、日本国内での共同事業の合弁会社を2024年までに設立することで合意しています。

 兵庫県などとは空飛ぶクルマの振興を通じた地域創生の取組における連携協定を締結したほか、パーク24、あいおいニッセイ同和損害保険などとも、バーティポート開発に向けた業務提携を行っています。同分野における展開力は今後の期待材料とされそうです。

長谷工コーポレーション(1808・東証プライム)

 マンション建設の最大手企業で、累計施工数は68万戸を超え、現在ある国内マンションの約1割を施工している計算になります。国内トップの施工実績を背景としたトータルプロデュース、「土地持込による特命受注方式」などが強みとなっています。

 2020年2月に発表した中期計画では、2025年3月期経常利益1,000億円を数値目標としているほか、株主還元強化方針も示しています。年間配当金の下限を80円(直近で70円から上方修正)とするとともに、今後5年間累計の総還元性向を40%程度と設定しています。

 2022年3月期営業利益は827億円で前期比13.4%増益となっています。建築受注用地の取扱量が増加したほか、マンション分譲事業においても引き渡しが順調に進捗(しんちょく)しているようです。年間配当金は下限水準を70円から80円に変更したことで、前期比10円の増配となっています。

 2023年3月期営業利益は870億円で同5.2%増益の見通しです。建設事業の施行量増加、マンション分譲事業における引き渡し増加を見込んでいますが、資材価格の高騰が重しとなって増益率は鈍化を予想しています。年間配当金は80円継続の予定です。

 年間配当金の下限を80円と設定していることで、当面の減配リスクが乏しいことは、高配当利回り銘柄として注目するにおいて買い安心感が強いと考えられます。

 また、建設業界では目先、資材価格高騰の影響が全般的に強まる見込みですが、マンションに関して圧倒的な規模におけるスケールメリット(大量仕入れで安く購入できる)が享受しやすい状況にあるため、他のゼネコンとの比較で利益率悪化の懸念は乏しいものとみられます。セクター内での選別物色の対象になり得るでしょう。

ヤマハ発動機(7272・東証プライム)

 創立からの基幹事業である二輪車事業が主力、船外機やボート・オートバイなどのマリン事業も手掛け、同事業は高い収益性を誇っています。ほか、表面実装機やドローンなどのロボティクス事業も手掛けています。

 180カ国超の国と地域で生産・販売を行っており、海外売上高比率が90%超と高いことが特徴として挙げられます。株主還元策としては、2022~2024年累計での総還元性向40%(自社株買いも含む)を目安としています。トヨタ自動車と提携関係にあります。

 2022年12月期第1四半期営業利益は401億円で前年同期比16.9%減益となっています。原材料費の上昇や物流混乱が継続する中、とくにプレミアムモデルの供給不足の影響が大きく、二輪車事業の収益が低迷しました。

 ただ、会社側では計画通りの推移としており、通期営業利益予想は1,900億円、前期比4.2%増を据え置いています。材料費上昇分の価格転嫁効果が第2四半期以降に効いてくるほか、為替の円安進行なども追い風になるようです。年間配当金は前期比横ばいの115円を計画しています。

 金融引き締め強化やインフレ高進に伴う米国の個人消費減速懸念はありますが、1円の変動が影響利益に与える影響額は、ドルが16億円、ユーロが9億円程度と試算されています。ここ3~4カ月でドル/円は20円程度の変動があり、収益インパクトは非常に大きいと考えられます。

 また、中期的な成長に関しても、医療・健康、農業分野などへの展開を計画していますが、既存事業においても、生活水準向上による新興国での二輪車普及や高付加価値化余地なども大きいと考えられます。

いすゞ自動車(7202・東証プライム)

 国内トラック大手の一角で、普通トラックのシェアは3割強の水準とみられています。タイを中心とした新興国の構成比が高く、中東、アフリカにおいても高いシェアを誇っています。

 また、ピックアップトラックも手掛け、タイで集中生産を行っています。2021年にはボルボ傘下のUDトラックスを連結子会社化しています。中期計画では2024年3月期営業利益2,500億円を目標としています。

 2022年3月期営業利益は1,872億円で前期比95.5%増益となっています。商用車、ピックアップトラックともに海外での販売が好調に推移し、為替の影響もプラスに寄与したもようです。年間配当金は前期比36円増の66円となっています。2023年3月期営業利益は2,000億円で同6.8%増の見通しとしています。

 アジアや北米における商用車販売の拡大、タイでのピックアップトラック販売拡大を見込んでいるほか、円安効果、値上げ効果も加わり、資材費や物流費大幅上昇の影響をカバーする計画です。年間配当金は前期並み66円を計画しています。

 2022年3月、日野自動車において排出ガスや燃費に関する不正が発覚しています。国土交通省によって該当車種の「型式指定の取消し処分」も下されました。足元では日野自動車の販売台数が大きく減少しており、当面は国内市場における同社のシェア上昇が想定されます。

 また、現在開発が進んでいる「エルフ」をベースとした「エルフEV」は2022年度量産開始を目指しており、その動向にも注目が集まります。

積水ハウス(1928・東証プライム)

 住宅メーカーのトップ企業です。2022年1月末現在、累積建築戸数は254万戸で世界ナンバー1の水準のようです。戸建・賃貸住宅事業が主力で、リフォームや不動産フィーなどストック型事業、マンションや都市開発事業なども手掛けています。

 米国や豪州、中国、シンガポールなどにも展開、現在は約3割が海外資産、国際ビジネスの構成比は15%程度となっています。米国ビルダー企業の買収を新たに発表しています。中期的な平均配当性向として40%以上を目指しています。

 2023年1月期第1四半期営業利益は878億円で前年同期比60.5%増益となりました。市場コンセンサスを300億円程度上回る水準になっています。国内外で住宅販売が好調に推移しているほか、海外において物件売却が進んだことも大きく貢献しました。通期計画は2,360億円、前期比2.5%増を据え置いています。

 今後物件売却の水準が低下したとしても、進捗率が37.2%に達していることで、上振れ余地は大きそうです。6月からは国内戸建住宅の販売価格引き上げも行っているようです。年間配当金は前期比4円増の94円を計画しています。

 金利上昇における米国での住宅需要の先行きは短期的なリスク要因となるでしょう。一方、国内では、比較的富裕層がメインターゲットになっているため、値上げ浸透に伴う収益力強化が想定されます。今期業績に関しては上振れ余地が大きいとみられ、配当性向40%とすれば、上振れに伴う増配も期待できるでしょう。

(佐藤 勝己)

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