資本主義が「中毒症」を生み出すメカニズム 2人の「ノーベル賞」受賞者が鳴らす警鐘

東洋経済オンライン / 2017年6月20日 10時0分

自由市場は私たちのために何をしてくれるのか(写真:davinci / PIXTA)

ともにノーベル賞を受賞している経済学界の重鎮、ジョージ・アカロフとロバート・シラーの最新作『不道徳な見えざる手』が話題となっている。著者たちは、自由市場がもたらす創造性は、私たちを幸せにもするし、カモ釣りの餌食にもすると述べる。ここでは、スロットマシン中毒になったモリーの例を、書籍から抜粋のうえ、ご紹介する。

もしビジネスマンたちが、経済理論で想定されているように純粋に利己的で純粋に自分のためだけに行動しているなら、私たちの自由市場システムはごまかしと詐欺を生み出しがちになる。

問題は、悪いやつがたくさんいるということではない。ほとんどの人はルールを守るし、単によい生活を送ろうとしているだけだ。でも競争圧力のせいで、ビジネスマンたちはどうしてもごまかしと詐欺をやるようになり、おかげで私たちはいりもしない製品を買い、高すぎる金額を支払ってしまう。

そして、ほとんど目的意識を与えてくれない仕事をやらされることになる。あげくに、どうして人生がこんなにおかしくなってしまったのかと不思議に思うことになる。

■スロットマシン中毒

19世紀末の発明家は大忙しだった。自動車、電話、自転車、電灯。でも当時の発明で、ほとんど注目されていないものがある。「スロットマシン」だ。当初のスロットマシンは、現在のような意味合いではなかった。あらゆる「自動販売機」がスロットマシンと呼ばれた。スロットにコインを入れる。すると箱を開けられるようになる。

1890年代になると、スロットマシンはガムや、葉巻やたばこ、オペラグラス、個別の紙包みに入ったチョコレートロール、さらには電話帳の先駆けとなる町の電話番号一覧を見せるものまで、ありとあらゆるものを販売するようになった。基本的なイノベーションは、硬貨を投入することで錠が外れる仕掛けにあった。

でもそこで、新しい使い道が見つかった。まもなくスロットマシンはギャンブル用機械を含むようになった。

当時の新聞を見ると、この現代的な意味でのスロットマシン登場は1893年だったようだ。こうした初期の機械の中には、勝者への報酬をおカネではなくフルーツキャンデーで支払うものもあった。まもなくだれもが、ある珍しいできごと、つまり3つのサクランボの登場に、特別な意味づけをするようになった。

1890年代が終わる前に、新手の中毒症があらわれた。ギャンブル用スロットマシン中毒だ。

1899年のロサンゼルス・タイムズの報道によれば「ほぼあらゆる酒場にこうした機械が1台から6台ほど置かれていて、朝から晩までそれをプレーヤーたちの群れが取り囲んでいる。(中略)いったんこの習慣が身についてしまうと、ほとんどマニア状態になる。若者が、この機械で何時間もぶっ続けで遊んでいるのが見られる。かれらは最終的にまちがいなく敗者となるだろう」。

■イノベーションの裏面

  • 前のページ
    • 1
    • 2
  • 次のページ
東洋経済オンライン

トピックスRSS

ランキング