「現状維持」を掲げる会社が必ず崩壊するワケ 目標を「横ばい」とした途端に会社は終わる

東洋経済オンライン / 2017年10月12日 8時0分

「現状維持でよし」という目標を提示すれば、その目標が達成されることはおぼつかない(写真:Sergey Nivens / PIXTA)

■会社は成長しなければ、消滅する

松下幸之助の側近としてPHP研究所の経営を長くやってきた筆者の実感から言えることですが、経営者が経営を「現状維持でよし」と考え、そのような指示を出した途端、その会社は成長が止まります。それどころか現状維持もできなくなり、確実に衰退します。

売り上げ9億円、赤字経営の状態でPHP研究所の経営を引き受けました。そこから、社員が危機感をもってよく力を合わせ、汗を流し、努力してくれた結果、年々成果が上がるようになり、6年ほどで64億円の売り上げまで成長し、黒字経営になりました。

まさに「イケイケドンドン」という勢い。そのような勢いで成長発展するようになると、経営責任者の筆者は正直、怖くなりました。気が弱いので、すぐに反動が来るのではないかと、恐る恐るの思いになりました。

加えて、社員たちがそれぞれの仕事に、それこそ昼夜を問わず懸命に取り組んでくれている。寝食を忘れるような勢いで働いている。そのひたすらさを見ているので、社員のためにも、とにかくいったん、「踊り場」をつくろう思いました。それまで年々高く目標を提示してきましたが、その年度の目標は、前年度達成した売り上げ・利益と同額にしたのです。

社員たちは、その私の目標設定をどう感じたかはわかりませんが、その年度はスタート時点から明らかに様子が変わっていました。社員はそれぞれ相変わらず懸命に仕事に取り組んでくれています。前年と変わりなく、力を出していることは伝わってきます。

ところが、その社員の懸命な努力が、前年までのような成果に結びつかないのです。なにか、上滑りしている。走っている車のタイヤがスリップするような感じといえばいいのでしょうか。

当然、毎月の計画比が100を切る。このままでは、目標の「前年度横ばい」どころではなくなる。そこで、年度後半になって、さまざまな手を打ちました。結果的には、極めてわずかの上澄みでかろうじて目標を達成できましたが冷や汗ものでした。

なんとかなってよかったのですが、この経験から、「現状でよし」という目標を提示すれば、その目標が達成されることはおぼつかないということをはじめて理解しました。あのまま手を打たずに放置すれば、せっかくのそれまでの社員の汗は空回りし、以降ずるずると滑り落ち、PHP研究所は「元の木阿弥」になっていたかもしれないと思います。

もちろん、家族経営の会社であれば、それでも構わないかもしれません。零細企業などでは、家族の生活費確保を目的としている経営もあります。一定以上の規模になれば、番頭格の人をのれん分けという形で独立させていくような経営もあります。おおむね、老舗と言われるお店は料亭と言わず、菓子舗と言わず、いわゆる個人経営の会社は、規模を大きくすることをよしとせず、現状を維持することに徹する傾向があります。そのような経営もありますから、現状維持ということも1つの経営手法として、否定するものではありません。

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