天才音楽少年が風俗業界で働き続ける事情 コンクール優勝者が「デリヘルドライバー」に

東洋経済オンライン / 2017年12月6日 12時0分

中学3年のとき、「全日本学生音楽コンクール」のバイオリン部門で優勝したことがある音楽少年はなぜデリヘルで働くようになったのか(写真:駒草出版)

デリヘルドライバーという職業があるのをご存じだろうか。

デリバリー型ファッションヘルス、通称・デリヘルという性風俗の一形態がある。その名の通り、女性を客の元へと派遣(デリバリー)するものだ。もともと日本のセックス産業は、東京であれば歌舞伎町のような繁華街か、あるいは吉原(台東区千束)などの風俗街に店舗を構えて営業していたものだった。

ところが2000年代に入り条例が幾つか改正され、「店舗型風俗店」の新規開店が禁止となり、結果デリバリー型(デリヘル)の風俗店が爆発的に増加した。つまりかつて風俗とは客が店に足を運ぶものだったのが、逆の構図となった。デリヘル嬢たちは店が所有するマンションの一室などで待機している。したがってそこから客のもとに女性を送り届ける、「デリヘルドライバー」という新しい職業が生まれたのだ。

■個性的な前歴を持つ男たちのなかでも

それでは、どういう人たちがデリヘルドライバーになるのだろう? 東スポこと『東京スポーツ』に代表されるスポーツ紙の求人欄を広げてみれば、そこには「デリヘルドライバー急募」という文字がズラリと並んでいる。「即採用」「ガス代支給」「日給一万円以上」など、特に「日払」と大きく打つところが多く、「年齢不問」とされるところも少なくない。

これはどういうことか。職とカネのすべてをなくし、今日の食事すらままならない状態の者でも、運転免許証を所有し車の運転さえできれば、明日からは何とか生きていける職業だということもできるだろう。  

今回、『デリヘルドライバー』(駒草出版)という本を書くにあたり、9人の人物に取材した。元闇金業者、元ホスト、渋谷のギャル男でプッシャー(違法ドラッグの売人)だった若者、組から逃亡した元ヤクザ、性転換した元女性などなど、実に個性的な前歴を持つ男たちに会った。

しかし誰よりもドラマティックだったのが、ここで紹介する風見隼人(50歳・仮名)だろう。彼は、かつてクラシックのバイオリン・学生コンクールで日本一になったこともある天才音楽少年であった。

風見は1967年生まれ。船橋市の公営団地にて、公務員をしていた共働きの夫婦のもとで育った。彼が3歳のときだった。NHKテレビでオーケストラ演奏が中継されていた。するとまだ字も書けないような幼い子が第一バイオリン奏者を指差し、「ボク、あれをやってみたい」と母親に告げたのだという。

風見自身にはまったく記憶がない。教育熱心で若い頃はひそかにピアニストを目指したこともある母親は、すぐさま町内にあったバイオリン教室へ息子を通わせることにした。才能が開花するまでさほど時間はかからなかった。教室の先生は、「この子は私のところで習わせるにはもったいない。もっと専門の、有名な先生につかせた方がいい」と母親に助言した。

■「全日本学生音楽コンクール」バイオリン部門で優勝

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