金正恩にはどうしても米朝首脳会談が必要だ 権威主義国家における最高指導者の胸の内

東洋経済オンライン / 2018年5月28日 8時0分

金正恩朝鮮労働党委員長には米朝首脳会談をどうしても実現させたい理由がある(写真:KCNA/via REUTERS)

米朝首脳会談を中止すると、突然かつ一方的に発表したトランプ米大統領の手荒い手法が、どうやら効果を見せているようだ。通告後の北朝鮮の動きを見ると、その狼狽ぶりが手に取るように見えてくる。

まず、トランプ大統領の中止通告からわずか9時間後に発表された外務省の金桂冠(キム・ゲグァン)第1次官の談話だ。ところどころに威嚇や脅しが入っていたトランプ大統領の通告文とは対照的に、金次官の談話は、これが本当に北朝鮮政府の言葉かと思うような温和で礼儀正しい文章ばかりだった。

さらに、金正恩(キム・ジョンウン)氏と韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領との首脳会談も急遽行われた。トランプ大統領の中止通告にどう対応するかを話し合うために、慌てて会ったのだろう。さらに首脳会談に向けた米朝間の水面下の協議も再開されたようだ。

もちろん米朝首脳会談が予定通り開かれるかどうか、まったく予想はできないが、「中止通告」後の動きは、トランプ大統領の思惑どおりに進んでいるようだ。そこには今回の首脳会談をどうしても実現させなければならない北朝鮮の事情がある。

■「リビア方式」ではないことの確約を取りたい

金桂冠氏は1990年代から次官を務めており、北朝鮮の核問題を協議した「六者協議」や拉致問題についての日朝交渉にも顔を出した人物だ。今回、久しぶりに表に出てきたのだが、かつて金氏と協議した日本外務省のOBからは、まだ次官をやっているのかという驚きの声が出たくらい古い世代の人物である。

この金次官は首脳会談中止通告を受けた今回の談話とは別に、5月16日にも米朝首脳会談についての談話を発表している。この時の談話は北朝鮮に対し核の完全廃棄などを強く求めるボルトン大統領補佐官(安全保障担当)に対する批判が目的だった。金次官はボルトン氏らを次のように批判している。

「米国で対話の相手を甚だしく刺激する妄言がやたらに吐かれているのはきわめて不穏当な行為として失望せざるを得ない」

「ホワイトハウス国家安保補佐官のボルトンをはじめホワイトハウスと国務省の高官らは、『先核放棄、後補償』方式を流しながら、いわゆるリビア核放棄方式だの、『完全かつ検証可能で、不可逆的な非核化』だの、『核、ミサイル、生物・化学兵器の完全廃棄』だのという主張をはばかることなくしている」

「リビア核放棄方式だの何のという似非(えせ)『憂国の士』の言葉に従うなら、今後、朝米首脳会談をはじめ全般的な朝米関係の展望がどうなるかということは火を見るより明らかである」

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