虐待の写真集が1冊ずつ手作りになった理由 長谷川美祈さんがダミーブックに込めるもの

東洋経済オンライン / 2018年7月12日 8時0分

長谷川美祈さんが「ダミーブック」に込める思いとは(撮影:梅谷秀司)

虐待を受けて子どもが亡くなったというニュースに触れると、思わず心を動かされる。だが、その実態はまだよく知られていない。

そんな中、写真家の長谷川美祈さんが昨年発表したダミーブック(手作りの本の形で写真を表現するもの)『Internal Notebook』では、虐待を受けた人たちに出会うことができる。

■9つの有名な虐待事件の現場と、8人の虐待体験者

『Internal Notebook』は2つの章から成り立っている。

1章は日本で起きた、9つの有名な児童虐待事件の現場。何の変哲もない公営の住宅の窓。門越しに見る高級住宅。川べりのウサギのケージ。それぞれの写真の裏側に折りたたまれたページを広げると、事件が起きた日付と報道された当事者の言葉、事件の概要が小さく書かれている。ある事件の受刑者は「ナゼワタシハイキテイルノデショウカ? 死ヌシカ方法ガナカッタノニ何デ殺シタノカワカラナイ」とつぶやく。

2章には8人の虐待体験者が登場する。1人目は3歳から親に虐待を受けた女性。克明に書かれた赤ちゃん時代の成長記録が再現され、透明の袋に入れられている。

実母が書き込んだ几帳面な文字と説明文に圧倒される。子ども時代のアルバムも再現されて収められている。家の近くで遊ぶ姿。お誕生会の様子。はたから見たらまるで「いい母親」だ。虐待をする親のイメージとずいぶん違う。

この母親だけでなく、この本では、写真の親の顔はどれも白抜きにされている。この本に登場する虐待を受けた人の、親に対する思いだそうだ。

ページを繰ると、やがて、成人した女性がかるく目をつぶったポートレートに行きつく。あふれる悲しみと不安。さらに折り込まれたページを開くと半分に断ち切られた小学校の入学式の記念写真。

「私は3歳の頃から母に叩かれていました。叩かれてよろけるとやり直し、きちんと頬に当たらないとまたやりなおしと叩かれていました」

こんな文章から始まる聞き取った虐待の物語が記される。

8人の子ども時代の体験が、幼い頃のアルバムや持ち物で示され、現在の苦しみがポートレートと文章などで示される。

幼いとき、実父が殺した弟を浴槽で発見したという経験を持つ男性。そのセクションでは、当時父に殴られるときに使われていた警棒が撮影されている。

別の女性は、腕に爪を立てるという自傷行為の瞬間までもが写されている。苦しい体験の末、人格が入れ替わる解離症状を持つ女性のノートの文字は、次々に字体が変わっている。

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