移民という「自死を選んだ」欧州から学ぶこと 「リベラリズムによる全体主義」がやってくる

東洋経済オンライン / 2018年12月14日 10時20分

国会前でプラカードを掲げ、強硬採決に抗議する人たち (写真:共同通信)

外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法改正案が、12月8日、参議院本会議で可決、成立した。新たな在留資格を設け、幅広い業種で外国人労働者の受け入れを拡大することになるが、業種や受け入れの規模・人数も決まっていないなど、さまざまな問題が指摘されており、実質的に「移民法案」となっているとの声もある。

本稿では、「アラブの春」やシリア内戦以降、欧州が大量の移民受け入れによってどのような深刻な問題が生じたかを描いた『西洋の自死 移民・アイデンティティ・イスラム』を、『日本の没落』著者の中野剛志氏が解説する。

■欧州の指導者たちの決断が招いた事態

『西洋の自死 移民・アイデンティティ・イスラム』は、英国のジャーナリストであるダグラス・マレーの問題作にしてベストセラー、『The Strange Death of Europe: Immigration, Identity, Islam』の邦訳である。

その書き出しからして衝撃的だ。

「欧州は自死を遂げつつある。少なくとも欧州の指導者たちは、自死することを決意した」

そして、恐るべきことに、この書き出しが単なるあおり文句ではなく、否定しがたい事実であることが、読むほどに明らかになってゆくのである。

「欧州が自死を遂げつつある」というのは、欧州の文化が変容し、近い将来には、かつて西洋的と見なされてきた文化や価値観が失われてしまうであろう、ということである。つまり、われわれがイメージする欧州というものが、この世からなくなってしまうというのである。

なぜ、そうなってしまうのか。それは、欧州が大量の移民を積極的かつ急激に受け入れてきたことによってである。

本書には、移民の受け入れによって、欧州の社会や文化が壊死しつつある姿が克明に描かれている。1つの偉大な文化が絶滅しつつあるその様には、身の毛がよだつ思いがするであろう。しかも恐ろしいことに、この欧州の文化的絶滅は、欧州の指導者たちの決断が招いた事態なのである。

もっとも、この移民の受け入れによる文化的な自死という戦慄すべき事態は、対岸の火事などではない。これは、日本の問題でもある。

■「保守」のねじれが招いた日本の「自死」

日本は、移民に対しては閉ざされた国であると考えられてきた。しかし、経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国の外国人移住者統計(2015年)によれば、日本は2015年に約39万人の移民を受け入れており、すでに世界第4位の地位を得ているのである。

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