木下サーカスを支える「裏方の力」が凄すぎた 営業や調整のため公演「半年前」に現地入り

東洋経済オンライン / 2019年1月16日 8時30分

熊本での木下サーカス大公演(撮影:尾形文繁、2017年)

この年始は大阪うめきた公演が大盛況となっている「木下大サーカス」。集客数は年間120万人と世界のサーカス団の中でもトップ級を誇る。

木下家四代、117年にわたって、他に類を見ないファミリー企業(同族企業)として波乱と進化の歴史を歩んできた根源に何があるのか。年間120万人の集客につながる、地道な営業の「根」をどう張り巡らせているのか。

『木下サーカス四代記 年間120万人を魅了する百年企業の光芒』を上梓したノンフィクション作家・山岡淳一郎氏が驚異の観客動員力につながる独自のビジネスモデルについて解説する。

■「一場所、二根、三ネタ」を磨く

木下サーカスは、世界のサーカス界で1、2の観客動員力を誇る。

そのビジネスモデルの特徴は「移動」を定式化しているところにある。ほぼ3カ月おきに全国の都市から都市を巡り、約2000人収容できる巨大テントを建てて公演を行う。同じ都市での公演は、少なくとも5~6年の間隔を開け、その間にショーの中身を変えて鮮度を保っている。

「一場所(公演地選定や現場運営)、二根(営業の根気)、三ネタ(演目)」の3要素を磨き、移動興行を事業化した。

まさに継続は力なりだ。

117年の実績と人脈、信用力で1年前に公演地を決め、遅くとも半年前には先乗りの営業部隊が現地に入る。そして、きめ細かな販売促進活動を、地元の新聞社やテレビ局と組んで根気よく、行う。

華やかなショーの舞台裏で展開される営業活動は鴨の水かきのようだ。

たとえば、2018年秋の千葉県柏市での公演では、春先に先乗り隊が柏駅から徒歩7、8分のビルの一室に事務所を開いていた。事務所には大きな神棚が祀られ、壁一面に地図が張られた。地図には公演会場のセブンパークアリオを中心に半径5キロごとに同心円が描かれ、それぞれの圏内の対象人口と営業のターゲットが綿密に記されていた。

この事務所を拠点に、木下サーカスの営業スタッフ10人と、主催者である読売新聞の事業部員2人が営業に飛び回る。新聞販売店の関係者も頻繁に事務所に顔を出す。公演会場から15キロ圏内の対象人口は200万人、20キロ圏は400万人。30キロ圏まで広げると東京都の東半分がすっぽり入り、1000万人を超える。十数名の営業部隊で1000万人を相手にローラー作戦は展開できまい。地元の千葉、埼玉、茨城、東京のどこまで攻めるか、細かくエリアを区切ってプロモーションを仕掛ける。

■商品価値は口コミで伝わる「臨場感」

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