今の「円の価値」は割安なのか、割高なのか? 為替相場の妥当性をしっかり検証してみよう

東洋経済オンライン / 2019年1月17日 7時30分

国の経済状況を予測することは簡単ではないので、この場合は通貨の適正価値をうまく推計することによって利益を出すことを狙うことは難しいと考えられる。

一方で、「狙える(かもしれない)とき」とは、ある通貨の価格が適正価値から離れているとき、つまり一定以上割高や割安になっている場合だ。

まず、ある国の通貨が割高な状況にある場合、その国の輸出産業は競争力を失って景気も悪くなってしまい、特に先進国よりも経済が頑健でない新興国の場合、経済が厳しい状況になり通貨も急落したり暴落しがちだ。そのため、割高な通貨は売り持ち(カラ売り、ショートポジション)するのが、よい取引戦略になるかもしれない。

たとえばアルゼンチン・ペソやトルコ・リラはThe Institute of International Financeのモデルによると2018年初時点で15%程度適正価値よりも割高になっているとされていた。その後、両通貨とも暴落した。

一方、円で見てもやはり、リーマンショック後に割高な状態が続いたが、日本銀行の総裁が代わって金融政策も大幅に変更されたことをきっかけに一気に解消。その後は通貨価値の大きな下落が見られたのもご存じのとおりだ。

さらに、ある国の通貨が割安な場合、貿易黒字国の場合は冒頭の他国から批判を受けがちで割安な状況を維持しづらい。また、いわゆる為替の自動調節機能が働いたり、新興国なら通貨防衛のために中央銀行が利上げを行うことなどによって、やはり割安な状態は是正される可能性が考えられる。

■取引にはリスクが高く注意が必要

もちろんこの取引戦略にはリスクもある。

繰り返しになるが、均衡実質為替レートは、そもそも市場で見ることができたり統計情報を用いて誰でも計算をできたりするものではなく、複雑なモデルを用いて推計を用いるものだ。そのため、モデルが間違っていて自分が適正な価値だと思っていた価格が適正でない可能性もある。

また、円の過去の割高、割安が解消するまでの長さを見ると、修正するまでに3~4年程度かかっており、割高・割安になったらなかなか修正しなくても気長に「ナンピン」をし続けるような、かなり根気と資金量が必要になる取引戦略となることもある。短期的な利益の捻出が求められる法人の為替取引担当者にとってはとりづらい戦略だろうし、複雑なモデルを構築できてかなりの根気を持った個人投資家という、とても限られた人向けの投資戦略なのかもしれない。

杉山 智行:クラウドクレジット社長

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