酔客の汚物対策、電車運転士が「秘密兵器」開発 東急社員が現場の経験生かし日用品で手作り

東洋経済オンライン / 2019年2月22日 9時0分

電車内の汚物対策シートを開発した東急電鉄雪が谷大塚乗務区の運転士たち。左から片瀬太一さん、竹植泰平さん、鈴木良一郎さん(記者撮影)

残業帰りの人々や酔客で混み合う深夜の電車。たまたますいている車両を見つけて「やった!」と乗り込むと、そこには酔っ払いの吐き散らした「小間物」が……。こんな経験のある人は少なくないだろう。

週末の夜になると目立つこういった「汚物」、乗客にとって不快なのはもちろんだが、鉄道の現場社員たちにとっても悩みの種だ。放置すれば不快感を与えるだけでなく、利用者が滑って転倒する恐れがあるからだ。

特にやっかいなのは車内の場合。駅での停車中に清掃しなければならないが、短い停車時間で処理するのは至難の業だ。ターミナルなど大きな駅ならまだしも、駅係員の人数が少ない小さな駅では難しい。電車を運行する乗務員が対応するのはさらに困難だ。

■全国発表で最優秀賞に

なんとかならないか――。そう考えた東京急行電鉄の電車運転士たちが、短時間で簡単に応急処置できるアイデアグッズを生み出した。名付けて「汚物カバーシート」だ。

シートの大きさは45×60cm。表面は目立つように赤い枠を描き、注意書きの黄色いステッカーを貼ってある。裏には両面テープが付いており、使い方は車内の床や座席などで汚物の上にかぶせて固定するだけだ。材料は市販のペット用吸水シートのため、上から覆うだけで不快なにおいもカットできるという。

開発したのは、東急電鉄の雪が谷大塚乗務区に所属する片瀬太一さん、鈴木良一郎さん、竹植泰平さんの3人によるチーム。同社内で毎年開く「業務研究発表会」で2018年の最優秀賞となり、さらに全国鉄道関係者らの団体「日本鉄道運転協会」が開いた発表会で最優秀となる鉄道局長賞を受賞した。

3人が運転しているのは、3両編成ワンマン電車の池上線と東急多摩川線だ。汚物カバーシートの開発に至った背景には、両線ならではの事情がある。

車掌がおらず、小さな駅が多いため、車内で汚物を発見してもすぐに対応するのが難しい。列車無線で運輸司令を通じて終点の駅などに清掃を依頼することになるが、しばらくの間はそのままの状態になってしまうのだ。

車内で汚物を発見するのは珍しいことではない。特に週末などは「いつ起こってもおかしくない」と3人は口をそろえる。いわゆる吐瀉物に限らず、最近はカップのコーヒー類を車内に持ち込む人が多いため、飲みかけのまま放置されたカップが倒れて床を汚すことも少なくないという。

「折り返し時間に車内を通ると、お客様は清掃に来たんだと期待されるんですよ。でも、すぐに発車する場合は『このあと清掃しますんで』と言わざるをえない。そのときのお客様の落胆した気持ちというのはすごく感じていました」と竹植さん。

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