「浮世絵」の技法を今に継承する職人たちの正体 江戸時代の技術を継ぐアダチ版画研究所とは

東洋経済オンライン / 2019年2月27日 8時10分

アダチ版画研究所が製作した葛飾北斎 「富嶽三十六景」(神奈川沖浪裏)(画:アダチ版画研究所)

「浮世絵の生命は実に日本の風土と共に永劫なるべし。しかしてその傑出せる制作品は今や挙げて尽(ことごと)く海外に輸出せられたり。悲しからずや」と作家・永井荷風は『浮世絵の鑑賞』で書いている。

日本の代表的な芸術文化の1つである浮世絵。多くの傑作が、海を渡り、海外の美術館に所蔵されるなか、江戸時代の伝統木版技術を今に受け継ぎ、浮世絵の復刻をはじめ、日本画巨匠の木版画作品などを制作しているのがアダチ版画研究所(東京都新宿区)だ。

■浮世絵とは何か

浮世絵は、江戸時代に興隆した当代の風俗を描く、民衆的な風俗画の一様式で、絵画(肉筆画)のものもあるが、版画において独自の美を切り開くこととなった。木版画によって作られた多くの浮世絵は、絵師によって描かれた原画をもとに、彫師が山桜の板に図柄を彫って版木をつくり、摺師(すりし)が版木を使い、和紙に一枚一枚色を摺り重ねて完成させたものだ。

図柄は美人画や役者絵などの似顔絵のほか、歴史画や風景画、花鳥画など多数に及ぶ。喜多川歌麿、東洲斎写楽、葛飾北斎、歌川広重らが名高く、大胆な構図や鮮やかな色彩でゴッホやゴーギャン、モネ、マネほか19世紀後半のヨーロッパの印象派、ポスト印象派の画家たちに大きな影響を与えたとされている。

アダチ版画研究所の歴史は、初代・安達豊久氏が1928(昭和3)年に、東京都豊島区西巣鴨にて個人営業として創業したことから始まる。

同氏は創業前、出版社に勤務していた。そこで、浮世絵などを出版していたが、「自分の企画で思うようなものを出してみたい」「完成したものがオリジナルとあまりにも違っており、このようなものを出していたらよくないと思った」などを理由に、よりよい浮世絵を再現し、浮世絵の魅力を正しい形で世に知らせたいという強い思いで、浮世絵復刻版の制作、販売を目的に創業に至った。

創業後、安達氏がまず着手したのは、多くの絵師や図柄など膨大な数の浮世絵版画から芸術的に優れた作品をえりすぐる作業だ。そして、工房に高い技術を持った彫師と摺師を集め、オリジナルを忠実に再現するために、江戸時代と同じ技法を使って復刻作業を行っていった。

当時、同じように浮世絵の復刻を行っていた企業のなかには、江戸時代の絵師が描いた図柄ではなく、当時の絵師が描いた図柄の版画を作製するところもあった。

だが同社においては、「技術の基本は復刻版で、復刻版がきちんとできなければほかのものは作れない」とのポリシーがあった。

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