自民党の「外交青書」批判、何が時代錯誤か 「憂さ晴らし」の場と化す自民党内部の議論

東洋経済オンライン / 2019年5月22日 7時20分

日ロ首脳会談の共同記者発表後に握手する安倍晋三首相(左)とロシアのプーチン大統領(写真:時事通信)

外務省が毎年、発行している書籍に『外交青書』がある。

過去1年間の首脳会談や国際会議などの成果をはじめとする日本外交の記録とともに、国際情勢についての分析も書かれている。同じような書籍を他の官庁では「白書」として発行しているが、外務省だけは1957年の創刊号の表紙が青色だったため「青書」と呼んでいる。世間にはあまりなじみのないものだが、日ごろマスコミにほとんど登場することのない国についても紹介があり、結構便利である。

この『外交青書』が珍しく自民党内で批判にさらされている。「青書」は毎年、発行前に自民党の政務調査会や総務会での了承が慣例となっている。今年も5月初め、自民党の外交部会で2019年版の要旨を説明したが、出席議員から批判が出たのだ。

■「北方領土は日本に帰属する」を削除

問題になったのは北方領土問題についての記述だった。2018年版には「北方領土問題は日露間の最大の懸案であり、北方四島は日本に帰属するというのが日本の立場」と書かれていた。2019年版では、この部分から「北方四島は日本に帰属する」が削除された。

そこで出席議員から「ロシアから文句を言われ、自発的に日本の基本原則を捨てた」「基本原則は忘れてはいけない」などという批判が相次いだのである。

説明役の外務省幹部は「安倍晋三首相や河野太郎外相の国会答弁などを踏まえて、この書きぶりにした」と応じたが、議員らは納得しなかったようで、後日、岸田文雄政調会長が党の総務会で「今回の対応は納得しうるものではない」「他国に間違った受け止め方をされるおそれもある」などと批判し、外交部会で引き続き議論するよう指示したという。

日ロ間で平和条約に関する交渉が行われる中、確かに北方領土問題に関する安倍首相や河野外相の言動は大きく変わった。かつて日本政府は北方領土について「ソ連が不法に占拠した」「わが国固有の領土である」など強い調子で表現するとともに、旧ソ連やロシアの対応を批判してきた。しかし、日ロ間で平和条約交渉が始まると、安倍首相らのトーンが穏やかなものに変わった。交渉当事者としては自然な対応だろう。

そして、過去1年間の外交を記録するという『外交青書』の趣旨から言えば、首相や外相の発言に沿った内容を記録するのは当然なことでもある。しかし、威勢のいい自民党議員からすると、それが物足りないのである。ロシア側が「日露間の領土問題はない」などと過去の主張を蒸し返しているだけに、日本政府も負けずに強い姿勢で臨めと言いたいのだろう。

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