日本人が大好きなアボカド生産農家を襲う危険 カルテルの暗躍がもたらす環境悪化

東洋経済オンライン / 2019年5月25日 8時0分

同組合のセルヒオ・ゲレロ前会長が辞任したのは、カルテルの1つ、カバリェロス・テンプラリオスのリーダー、セルバンド・ゴメスと、他の企業家や地元政治家を交えて談笑しているビデオが明るみになったからである。すなわち、カルテル、一部企業家そして政治家などが癒着しているわけだ。

とくに政治家は行政面で権力を持っているため、カルテルは彼らと癒着することに熱心。政治家側も、カルテルと良好な関係を維持していないと本人や関係者が殺害される危険性がある。実際、過去5年間ミチョアカン州政府の内務長官を務めたホセ・マルティン・ゴドイ在職中には、19人の国家警察がカルテルによって殺害されている。

さらに問題なのは、犯人が捕まらないことで、ミチョアカン州では殺害事件の約9割が、犯人がわからないまま終わってしまうという。同州で犯罪をめぐる公判が開かれる確率はわずか0.54%だというから、いかに殺人犯の罪を問うのが難しいかわかるだろう。背景には、カルテルと警察が癒着し、犯人を追及しないことが常態化していることがあるようだ。

■殺虫剤や除草剤乱用への懸念

こうした状況下、ラテンアメリカやカリブ諸国における組織犯罪の調査・研究を行う「インサイト・クライム」によると、カルテルがミチョアカン州で2009年から2013年にカルテルが稼いだ金額は7億7000万ドル(850億円)と推計されている。

ミチョアカン州ではカルテル同士の縄張り争いも頻繁に起きている。今年4月にはウルアパン市で1人の母親と彼女の10歳の子どもがカルテル同士の争いで流れ弾にあって死亡。カルテルで生産農家や販売業者からお金を徴収する担当者が別のカルテルによって殺害されるケースもあるという。

アボカド生産農家と販売業者を苦しめていることがもう1つある。アボカド畑に噴霧する農薬の弊害だ。2000年から現在までアボカド生産量はほぼ5倍に拡大。野菜を栽培していたのをアボカドに切り換えた農家も多くある。

生産量を増やすのに農家が使っているのが、ダイアジノン、パラチオン、グリフォサートという殺虫剤や除草剤だ。アボカドは一年中、夏でも冬でも気の向くままに実をつけるため、働く人たちはこうした農薬に一年中さらされているといっていい。

実際、ジャーナリストのヘスス・レムス氏によると、ミチョアカン州では、13万7000ヘクタールほどの土地で、メキシコのアボカド生産量の約8割が生産されているが、同州で生産が最も盛んな22の自治体では、子どもががんで亡くなるケースは肺炎、感染病などよりもはるかに多いという。こうした状況下での殺虫剤や除草剤の乱用は、発がん要因になりかねないと世界保健機関(WHO)は警告している。

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