日本の車載電池メーカーは世界市場で勝てるか 韓国勢の投資額が突出、カギはコスト低減

東洋経済オンライン / 2019年6月4日 7時40分

2016年7月には、ドイツ発で車載用電池の安全性に関する国連規則、ECE R-100.02 Part2(電池パックに対して過充電、過放電、圧壊、外部短絡などの9項目にわたる安全性評価試験)が発効した。この認証を取得しないと電動車(xEV)の販売に制限がかかる内容である。

一方、中国はこのECE国連規則をベンチマークにして中国独自のGB規格(ECE国連規則の試験条件を中国流に改訂したもの。条件的には緩やかにしている)を導入しているが、国連規則とは異なり法的拘束力がないガイドラインである。

筆者は現在、各社が製造するLIBの安全性を検証する事業に関わっているが、自動車各社と電池各社の電池構造設計、および安全機構設計とその基準が個社単位で異なり、安全性試験評価結果にも差が生じていることに懸念を抱いている。それが引いては国際競争力に直結する問題だからだ。

世界の自動車各社から見れば、車載用LIBのサプライチェーンは極めて大きなカギを握る。その決め手となる要素は、従来からの性能、安全性は言うまでもない。さらには電池各社の生産能力向上のための投資力とコスト低減に注目が集まる。

海外勢をみると、韓国のLG化学、サムスンSDI、そしてSKイノベーションが各グループ財閥の成長事業の一環として大規模投資を惜しまない。各社は韓国国内の主要拠点以外に、中国と欧州に大投資を図っている。LG化学は第1期で400億円規模の投資をしたポーランドの生産工場が稼働済み、さらに生産能力向上のために第2期工事も推進中だ。

サムスンSDIはハンガリーに400憶円規模の投資で工場を建設中で間もなく稼働する予定。SKイノベーションもハンガリーに850憶円規模の投資を行い、2020年の稼働を目指している。

■コスト低減への対応で起きる「二極化」

同時に、各社は既存の中国生産拠点を拡張することで動き出し、韓国勢の間で投資競争が活発だ。中国CATLもドイツへの生産拠点の構築を推進している中、欧州市場は韓中勢が欧州自動車各社を包囲している格好で、日系勢は蚊帳の外という勢力図ができつつある。

コスト低減を主導する大きな要素は、何といっても欧米勢の自動車各社が電池業界に提示する「圧力」である。車載用LIBに対するコストは、単セルではなく電池パック基準として現状はおおむね250~150ドル/kWh(自動車各社と電池各社の個別交渉なので幅は広い)、2025年までの近い将来に100ドル/kWhを提示する議論が国際会議や個別交渉の中で数値目標としてすでに出ている。モバイル用LIBと同等、もしくはそれ以下のコスト指標になるのだが、あまりにも難度が高いと言わざるをえない。

しかし、こうした厳しいコスト目標でもどこかの電池メーカーが実現すれば、その数値が業界水準となることから、その目標に邁進して実現しようとする電池メーカーと、コスト低減に対して置き去りになる電池メーカーの二極化が起こるものと予想される。

前者の電池メーカーの代表は、LG化学とCATLであるが、中国政府の補助金制度が2020年で撤廃させることで、フラットな開発環境下でCATLが対応できるのか真価が問われるところである。一方では、価格競争はしないというパナソニックを代表とする日系勢は、グローバルビジネスでどこまで闘えるのかが今後の大きな課題といえよう。

佐藤 登:名古屋大学客員教授・エスペック上席顧問

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