「対メキシコ関税」は経済危機の発端ともなる トランプ氏の独断に震撼するアメリカ産業界

東洋経済オンライン / 2019年6月5日 8時10分

さらに、ロシア疑惑とその調査をめぐる問題も背景にあるとみられる。5月29日、この問題を調査していたモラー特別検察官が記者会見で、現職大統領を起訴することは、司法省ガイドラインに基づく選択肢になかったことを表明した。これは、事実上大統領による司法妨害があったとして、起訴は議会が弾劾プロセスを通じて担うべきことを示唆したものである。

モラー氏の会見後、トランプ大統領に対する弾劾の声が民主党の一部を中心に高まり、連日報道された。モラー氏の会見の翌日に、トランプ大統領が対メキシコ関税を発表したことには、この問題から国民の注目をそらす狙いもあったと考えられる。支持基盤を失えば、2020年大統領選での再選がなくなるだけでなく、弾劾の可能性すら高まるからだ。

報道によると自由貿易推進派のスティーブン・ムニューシン財務長官に加え、USMCA批准への影響を懸念するロバート・ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表も対メキシコ関税発表を阻止しようとしたという。だが、自由貿易推進派のラリー・クドロー国家経済会議(NEC)委員長は手術のため入院中、地元のインディアナ州に自動車産業を多く抱えて自由貿易推進派であったマイク・ペンス副大統領はカナダ訪問中であった。ジャレッド・クシュナー大統領上級顧問は同関税策に反対したとも報道されているが、同氏も中東を訪問中で不在であった。

したがって、発表前のホワイトハウスでは大統領の政策に同調する移民政策強硬派のスティーブン・ミラー大統領補佐官やIEEPA利用の正当性を主張するピーター・ナバロ大統領補佐官(通商担当)、パット・シポロン大統領法律顧問などに対し、反対勢力が欠けていた。昨年以降、ゲーリー・コーンNEC委員長、ロブ・ポーター秘書官などが去った後、保護主義に大幅に傾いたホワイトハウスだが、30日の発表直前には大統領を阻止できる勢力はより限られていた。

■対メキシコ関税のアメリカ経済への影響は甚大だ

対メキシコ関税の影響として主に5点が懸念される。

(1)遠のくUSMCA早期批准

5月17日にメキシコとカナダの鉄鋼・アルミ製品に対する追加関税(1962年通商拡大法232条)の撤廃をトランプ政権は発表した。それを機に、カナダ、メキシコは自国議会での承認プロセスに動き始めたばかりであった。アメリカでも30日にトランプ政権はUSMCA施行法案の要点をまとめた「行政措置の声明案」を議会に提出しており、USMCAが北米各国で批准される可能性はわずかながら高まっていた。

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