「安売りの元祖」ディスカウント店の意外な現状 ロヂャース、多慶屋の競争力はどこにある

東洋経済オンライン / 2019年6月11日 7時50分

まずは本館をのぞく。1階は食品フロアだが、ロヂャースやドンキとは異なり、PB勝負はしていない。しかし、食品スーパーに引けを取らない規模の品ぞろえ、そして20~30%オフの目玉商品などが目白押しで見ていて楽しい。

さらに階を上がれば、ブランド物の時計だったり、調理家電や白物家電、健康・美容家電のフロアもある。棟続きの別フロアには、外国人観光客に人気のコスメ商品もずらり。紳士物のスーツのフロアやビジネスバッグ、革靴もそろう。なんでもありだ。

この風景、どこかで覚えがあると思ったら、昭和のデパートがこんな感じだった。フロアごとに違う売り場が広がり、ワクワクさせられる。まさに百貨を扱う店、そういう言葉が似合う。

正直、目を見張るほど安いかといわれるとすべてがそうでもないし、アメ横や秋葉原と勝負すると厳しいものもあるだろう。ただ、そこは総合ディスカウントストアの強みだ。こんなものも扱っているのか、という宝探し感はほかでは味わえない。大根やスイカを売りながら、家電や事務机も扱うというディスカウントストアは、そうそうないのではないか。

その場所柄、インバウンドを意識した商品も多い。日本の土産は多慶屋だけでかなり賄えそうだ。訪日する知人がいたら勧めたい場所だ。

■安売り=現金商売は今は昔

こうしたディスカウントストアに筆者が訪れていたのは、もう20年以上前になる。これらの店はオイルショックにバブル崩壊、リーマンショックも経験してきたわけだ。長いデフレの時代、多くの安売り業態が生まれ、あるいは外資が進出し、撤退していったものも多い。ネット通販との戦いもし烈だ。それでも、老舗ディスカウントストア2社が生き残ってきたのは、消費者の根強い支持があったからだろう。

買い物するという行為は楽しくなくてはいけない。楽しさを演出するのはオトク感だったり、掘り出し物を探すワクワク感だったり、そして値段そのものへの満足度だったりする。ドン・キホーテにしろ、コストコにしろ、価格面で人を引き付ける店とはその要素を備えている。

最安の物を探して買うだけならAmazonで検索すればいいかもしれないが、「こんな安いものを発見したぞ」という楽しみを提供するのが、ディスカウントストアが生き残っていく道ではないだろうか。今回訪れた2店の戦略はそれぞれ異なるが、目指すのは安売りレジャーランド、リアル店にしかできない宝探しの場になってほしいと思う。

なお、意外だったのは、どちらの店もキャッシュレス対応が進んでいたことだ。ディスカウントストアは「当然現金払い」というイメージは、今は通用しないようだ。クレジットカードや電子マネーは当然のこと、多慶屋は一部の共通ポイントやコード決済にも対応している。

安く物を買いたいだけでなく、ポイント好きな消費者にもきっちりアピールしているのだ。古い業態でありながら時流には確実に乗る姿勢が、昭和・平成を生き延びてきた気骨かもしれない。

ディカウントストアという業態は過去のもの。100円ショップや安売りドラッグストアに駆逐されてしまうのでは、と考えていた最初の心配は楽しく裏切られた。久しく訪れていないという人は、一度のぞきに行ってみてもいいかもしれない 。

松崎 のり子:消費経済ジャーナリスト

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング