人生100年時代には「人間とは何か」が問われる 「リンダ・グラットン×小泉進次郎」特別対談

東洋経済オンライン / 2019年6月13日 8時0分

例えば、引退後に使うはずだった余生の時間を、ちょっと早めの40代に半年だけもってきて休みをとるとか、若者の勉強する時間を、大人になってから学び直しの時間に充てるとか。時間の再分配ができるようになると、選択肢も増え、バランスもとれると思います。でも、そこは日本企業がなかなか気づかずにいるところですね。

小泉:そうですね。人生100年時代、もちろんお金は大事です。しかし、時間という価値がものすごく高まる時代でもあると思います。「ワーク・ライフ・バランス」という言葉がありますが、この言葉ももう一度問い直す必要があるかもしれない。僕はまず、自分自身と向き合う必要があるだろうと思っているんです。

僕は政治の世界にいて、ほとんど休みがありません。正直イメージも悪い世界で、SNSの時代、何をやってもどこかで何かを言われる。しかし、政治にしかできないことがあるから、打ち込むに値する。そう信じているからこの世界を選択しているわけです。

自分の中で「僕はこれが好きだ」「私はこの道を信じる」と言えること以上に強い理由はありません。それが見つかれば、会社や仕事が変わっても、ずっと自分が好きなことをやっていられる。そんな人生100年は楽しいですね。

グラットン:私は、日本がこの時期に安定した民主主義を守っていること自体が偉大だと思っていますよ。小泉さんのように、長期的な視点から政策を考えられる政治家が日本にはいらっしゃる、これはとても幸運なことです。

私は、ロンドンビジネススクールで、世界35カ国から集まったMBAの学生100人ほどを指導していますが、学生たちに「政治家になりたい人はいるか」と聞きましたら、残念ながら1人も挙手しませんでした。民主主義というシステムにとって非常に大きな課題を突きつけられている時代です。そして、この時代にあっては、政治家になりたいという人そのものが奇特なんですよ。優秀な人のほとんどは、企業の社長になりたいと思うのです。

小泉:僕の場合も、現実にはいつも楽しいわけじゃない。僕は若い人によく話すんです、どれだけ好きなことでも、仕事になれば絶対に嫌なことがある。でも、それに耐えられるのは、自分で選んだ道だからだ、と。

グラットン:その決断を促すためにも、政府がきちんと真実を伝える必要がありますね。世界各国の政府から話を聞きましたが、人々が長く働き続ける必要があるという物語を正面切って国民に伝えている政府はまだありません。伝えることで国民も備えることができるのに、です。

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