令和でも「虚礼」をやめられない人間の悲しい性 「年賀状」をやめた自営業者はどうなったか?

東洋経済オンライン / 2019年6月16日 7時30分

「これ、なくてもいいんじゃない?」と思ってしまうような、日本ならではの「虚礼」。平成で淘汰された虚礼から、令和ではなくしたい虚礼までをご紹介します(写真:freeangle/PIXTA)

新元号「令和」が到来して1カ月あまり。「無駄と感じることは、できるだけやりたくない」と考えるのが人間の性(さが)だが、なぜ実用性に欠く「虚礼」は令和でもなお残り続けているのか。

年賀状、お中元、お歳暮は虚礼の3大巨頭とも言えそうだ。ほかにも結納やバレンタインデー、出張帰りの職場へのお土産なども挙げられるだろう。

実は、こうしたものを無駄と思う風潮は昔からあった。1989(平成元)年に発売された書籍『現代無用物事典』(新潮文庫・朝日ジャーナル編)によると、当時、「無用」「無駄」と思われていたものが37項目紹介されている(理解が深まるよう、現在でも存在するものには「○」、減ったものには「△」、ほぼないものには「×」、むしろ増えているものには「◎」など補足をしておく)。

<『現代無用物事典』で紹介された37項目>
1:戒名 → △
2:電話の“お待たせオルゴール” → ○(ただし、固定電話の使用頻度は激減した)
3:電信柱 → ○
4:敷金 → △
5:公団の分譲住宅 → ○
6:有料道路 → ○
7:私物としての傘 → ○
8:500円硬貨 → ○
9:お正月 → ○
10:給与の銀行振り込み → ○
11:スボンのチャック → ○
12:プロ野球の引き分け → ○
13:マイルドセブン → ×(ただし、「メビウス」と名称変更しただけ)
14:校歌 → ○
15:朝会(朝礼)→ ○
16:合否電報 → ×
17:イッキ飲み → △
18:時価 → ○
19:ボトルキープ → ○
20:おいしい水 → ◎(むしろミネラルウォーターが大隆盛に)
21:アマチャヅル → ×(知らない人も多いだろう。一時期ブームになったお茶)
22:ホスト・テイスティング → ○(ワインをボトルで頼んだときに少し飲んで「ウン!」とやるアレ)
23:男性用化粧品 → ◎
24:キュロットスカート → ○
25:動物園のコアラ → △(ただし、希少動物すぎるため減るのは仕方がない)
26:書店のブックカバー → ○
27:駅のアナウンス → ◎(むしろ過剰になった)
28:車内販売 → △
29:映画館のCMと予告編 → ◎
30:政府広告 → ○
31:雑誌の〈発行日〉→ ○
32:主催者側発表 → ○
33:ハウツー → ◎
34:クルマの厚化粧 → △(昔は「リアスポイラー」やら「光るナンバープレート」など)
35:血液型性格判断 → ○
36:ダイエットのウソ → ○
37:禁句集 → ○

「マイルドセブン」は形を変えて残っているため、ほぼなくなったであろうものは「合否電報」と「アマチャヅル」(まだ一部売られてはいる)ぐらいだ。いくら無駄だと思っても、人間はなかなか虚礼や無用物から抜け出せないことがわかる。

■平成時代に廃れていった「年賀状」

正直、誰もが無駄だと思っているのにやり続けるというのは苦痛である。そこから「一抜けた!」とばかりに抜けることで、よりラクな人生を送れるのではないか。

例えば、正月の年賀状。今でこそ書かないことは普通のことになっているが、私が年賀状をやめた2000年には、「なんで書かないの?」と言われるほか、「私はあなたに送ったのに、いただけなかったばかりか、返事も戻ってこなかったので、なんか損した気持ちになりました」なんて言われた。

さらにフリーランスになった2001年には、「フリーならば年賀状ぐらい出したほうが発注主の心証はいいし、新たな仕事につながりますよ」と助言されたこともあった。

そのときは「そうですね」と神妙な顔をして聞いていたが、年末の忙しい時期になると、書いている暇などなかった。そして当時、12月に入るとパソコンとプリンターを普及させたいメーカー各社が「年賀状作りに便利ですよ!」といったCMを大量に流していたことを記憶している。

最近ではそんなCMを見ることもなくなった。日本郵政だけは郵便はがきのCMをやっているが、もはや関連業界は年賀状に市場性を感じていないのだろう。

もはや年賀状、お中元、お歳暮の3大虚礼は保守的な地域や業界を除き、「やらなくてもいいもの」になりつつある。バレンタインデーにしても、出張土産にしても、かつてほどの盛り上がりはなく「虚礼」の代表格といえそうなものは、実はもはや虚礼ではなくなっているのではないだろうか。

こうした時代が到来したことは、よしとしよう。だが、まだまだ不要と思うものは多くある。そこで「現代無用物事典-令和版-」を作ってみた。平成元年の元祖「無用物事典」と重複するものは記さない。

■令和には卒業したいもの

<『現代無用物事典-令和版-』>
1:ネクタイ → ネクタイの有無で入れない場所があることが納得できない。
2:ヒゲやロン毛は失礼的風潮 → 仕事と毛はまったく関係ない。ならハゲはどうなる?
3:ハンコ → 単純に面倒臭いし、今ではサインのほうが信頼性もある。
4:退職報告一斉送信、「BCCにて失礼します」メール → いちいち送らなくてもいい。
5:固定電話 → オレオレ詐欺の温床にもなっている。もう企業や役所以外はやめてもいいのでは。
6:メールの書き出しの「お世話になります」→ 別にお世話した覚えはない。
7:客の姿が見えなくなるまで頭を下げ続ける営業マン→誠意を見せているつもりなのだろうが、こっちは「早く曲がり道出てきてくれ! いたたまれないよ。そんな頭下げないでいいよ!」と思う。
8:運転手が降りてドアを開けるタクシー→早く乗せてほしい。
9:お盆・ゴールデンウィーク→制度・風習としてあってはいいが、職場単位で「その前後に分散して休みましょう」という選択制でいい。
10:町内会→メリットが見えない。
11:お酌 → 上下関係を明確に表すぐらいしか意味がない。
12:結婚式の祝電→祝儀払って参加した人間よりも偉そうに見えるし、紹介に時間もかかる。
13:焼香終了後の遺族への一斉挨拶→焼香の時間はかかるし、遺族としても首を何度も下げて疲れるだろう。
14:年越しそば → 深夜に食べたら太る。
15:おせち料理 → 作るのには手間がかかるし、買うとかなり高い。貴重な休みの日なのだから、好きなものを食べればいい。
16:お通し・突き出し → ドリンク+1品頼むので、好きなもの注文させてほしい。
17:芸能人の謝罪会見 → 謝罪内容は不倫や薬物ばかり。たいした公共性はない。
18:芸能人不祥事発覚時のCDなどの自主回収 → 買うかどうかは消費者に任せればいい。わざわざ自主回収する手間がもったいないし、作品とそれに関わった人物の不祥事は別個のものとして考えたほうがいい。
19:土下座→田口淳之介やかつての「ユッケ社長」の土下座により、最近はすっかり胡散臭くなった。
20:英語が喋れない英語教師→これが今の日本の低水準な英会話能力に繋がっているのでは。

※本当は選挙候補者の「選挙カー」「名前連呼」「たすき」「白手袋」「必勝ハチマキ」も入れたかった。だが、ある政治家に話を聞くと、驚くことに「これらを使った活動が一番強いんです」と言われたので含めなかった。

この手のものはいくらでも出せるが、自分にとって必要なもの、不要なものをキチンと考えたうえで日々の生活を送っていきたいものだ。同時に「不要」「虚礼」と思いつつも、人間はなかなかそれをやめることができないのだと、せつない気持ちにもなる。

中川 淳一郎:ネットニュース編集者

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