医者の数は「田舎に少なく」「都会に多い」のウソ 埼玉県の医師数は「鳥取の半分」程度しかない

東洋経済オンライン / 2019年7月2日 7時40分

医者の流出が多かったのは、石川県68.2パーセント、島根県60.8パーセント、高知県56.1パーセント、鳥取県55.5パーセント、秋田県54.2パーセントの順でした。

一方、流入が多かったのは、千葉県245.4パーセント、埼玉県223.7パーセント、静岡県71.7パーセント、兵庫県68.4パーセント、広島県58.2パーセントの順です。ちなみに、東京都は13.3パーセントの流出、すなわち医学部が多い東京都からは相対的に医者はよそへ移っていたのです。

■「勤務地の選択」はどうやって決まる?

医者の勤務地の選択はさまざまな要素がからんできます。1つで決まるものではなく、出身地や給与、家族の状況はもちろん、先輩後輩の人間関係や専門分野、出身大学、医師労働力市場の需要と供給などいろいろなことが関係してきます。そのため、医者の流出、流入がなぜ起こっているのか、その原因を読み解くのは難しいのですが、分析の結果そのヒントが1つ見つかりました。

それは人口当たりの医師免許取得者数です。医師国家試験の合格率は約9割あるので、医学部の入学枠の数とほぼ同じと考えられます。10万人当たりの新規医師免許取得者数は、少ない順に埼玉県1.5人、千葉県1.6人、静岡県2.6人、茨城県3.3人、広島県3.4人です。多い順を見ると、石川県16.5人、鳥取県13.4人、島根県12.8人、福井県12.0人、高知県11.7人です。

都道府県が違うと医者の給与が10倍以上違うということはありえませんが、人口当たりにすると新規の医師免許取得者数は埼玉県と石川県や鳥取県では10倍前後の開きがあるのです。おそらく埼玉県出身の若者は、授業料が高く定員も少ない自県の医学部よりも、よその医学部を卒業してから地元に戻る人が多いのでしょう。逆に、人口当たりの入学枠が多い鳥取県などは、他県出身の医学生が多く、卒業しても一部しか自県に残らないものと思われます。

日本では、社会のニーズが考慮されず、医療を提供する側の都合で物事が決められることがよくあります。医学部の設置場所はその典型で、人口当たりで見ると地域ごとに医学部入学枠に大きな格差があるわけです。医者の勤務地の移動により、その格差は一部是正されますが完全なものではありません。

その結果、日本の人口当たりの医師数はおおむね西高東低、西日本で医者は多く、関東や東北では医師不足が目立つ現状が生まれます。単純に医者が都会に多く、田舎に少ない、という具合に偏在しているわけではないのです。

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