医者の数は「田舎に少なく」「都会に多い」のウソ 埼玉県の医師数は「鳥取の半分」程度しかない

東洋経済オンライン / 2019年7月2日 7時40分

21世紀になると医師不足、医師偏在を問題視する議論が噴出し始めます。医師は不足しておらず、偏在しているだけだという立場を厚生労働省は長く取っていました。しかし、医師不足が顕在化し社会問題となったため、舛添要一元厚生労働大臣のもと方針転換を余儀なくされます。2008年以降、医学部の入学定員は臨時増員され、東日本に私立の医学部が2つ新設されました。

その結果、2017年には過去最大の1学年9420人、少子化で若年人口の減少もあるため、18歳人口約130人に1人の医学部生の枠ができたのです。

■医師不足は「2035年」まで続く

この臨時増員で、全体の人数としては医師不足がある程度解消される見込みとなり、厚生労働省ではふたたび医学部定員の削減を考える局面に入りつつあります。ただし、内科医の湯地晃一郎氏や情報科学者の井元清哉氏らは、社会の高齢化の進行により医師不足は2035年まで続くという将来予測シミュレーションの結果を発表しています(Yuji K, et al. Forecasting Japan’s Physician Shortage in 2035 as the First Full-Fledged Aged Society. PloSONE. 2012;7(11):e50410.)。

厚生労働省は偏在対策として、医師多数の県、少数の県を指定し、後者では医学部への地元出身者枠をつくり、医師不足の地域で働く義務を課したり、僻地勤務の認定医制度を創設したりと、医師確保計画を本格化させるとしています。

国家統制を強め、中央で計画を作りコントロールする方向へと動いているわけです。しかし、このようなやり方はグローバル化した情報社会の流れとは逆行しているようにも見えます。

遠隔診療、人工知能、自動翻訳などの技術が進めば、医療の一部は国境を越えて提供されるようになります。また、人の動きもますます国家の枠を超え、日本の私立より安い東欧の医学部で学ぶ若者が増えたり、外国人が日本で医療を受ける医療ツーリズムがさかんになったりと、グローバルな世界では国家単位だけでは動かなくなり始めています。

イギリス人ノンフィクション作家のマット・リドレーが書いた『進化は万能である』という本があります。

著者はその中で、なんでも見通せる神や優秀な官僚のような空想上の存在が世の中をデザインして動かせばうまくいくと人間は考えがちだが、それは妄想にすぎないと痛烈に批判しています。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング