「聴覚障害者」にとって通勤電車はこんなに怖い 車内放送聞こえず、何が起きたかわからない

東洋経済オンライン / 2019年7月5日 8時10分

聴覚に障害がある人が電車に乗るのは大変だ(写真:EKAKI/PIXTA)

聴覚障害者は外見ではわからない障害なだけに、この人たちが困っているという認識をわれわれにはできていないかもしれない。実際のところどうなのかを聞いてみたいと、鉄道ファンでもあり聴覚障害をもつ杉本聖奈(まりな)さんに話を聞いた。インタビューに当たっては、母親の香苗さんに通訳してもらったり、話を補ってもらったりというサポートをしてもらった。

■補聴器は「耳」とは違う

そもそも、聴覚障害者の音の世界は、どうなっているのか。聴覚障害にもいろいろな種類があり、まったく音の聞こえない「完全聾(ろう)」、聴覚が一部失われている「難聴」、それに病気などで途中から音が聞こえなくなった「中途失聴」に大別されるという。聖奈さんは3歳のときから補聴器をつけているというが、どのように外界の音が聞こえているのだろう。

「私は先天的な難聴ですが、これにもさまざまなレベルやタイプがあります。みなさんは、補聴器をつければ普通に聞き取れるのではないかと思われるでしょうね。正常な聴覚の人や、後天的に耳が聞こえなくなった人は、自然に自分に必要な音を選別して聞いているのでしょう。

しかし私の場合は、まわりの音がすべて補聴器を通じて入ってくるので、人の言葉だけ、電車の音だけ、と区別して聞き分けることができません。それでも、補聴器のおかげで音と振動を感じられるようになり、幼い頃家に近かった中央線の通過の音や、踏切の警報器の音が伝わるようになり、身体全体で鉄道を感じようとしていたように思います」

難聴というのは聞こえているボリュームが小さいことのように筆者は考えていたのが、そうではないことに驚かされる。もちろん、そういうタイプの聴覚障害者もあるので、単純に一括りにして考えてはいけないのだが。

そのような音の聞こえ具合の中で、鉄道を利用するうえで不便だったり怖いと感じたりするのはどんなときなのだろう。

「1人で出かけるときは、いつも不安を感じています。とくに、ダイヤが乱れたときなど車内アナウンスが聞こえないので、何が起こっているかもわからず、どうしていいかわかりません。運休があったりすると、駅員さんも普段より忙しそうにしているので、筆談などで尋ねるのも遠慮してしまいます。車内で何かが起こっていても、まったく気づかないこともあります。気づいても、どういう状況なのかわかりません」

具体的におそろしかったことなど、あるのだろうか。

「小さなことは、日常的にあります。混んだ車両になかなか乗り込めずにいたところ、発車ベルが鳴ったのがわからず、ドアに挟まれてしまったこともあります。それ以来、怖いので人の後から乗らなければならないようなときには、1本やり過ごして次に乗るようにしています。また、自動改札が何かの理由でいきなり閉まってしまったことがあって、改札を通る度にドキドキします」

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