日本経済の生産性をめぐる「誤解」を徹底解説 「賃金抑制」も「最低賃金引き上げ」も的外れだ

東洋経済オンライン / 2019年7月7日 8時0分

また、最低賃金を上げても、さしあたり企業の利益が減って賃金に振り替わるだけで、付加価値が増える保証はない。実証研究も、最低賃金を上げると生産性が上がるという論理を支持するものと支持しない研究と半々に分かれている。

■全国一律の最低賃金は暴論だ

最低賃金と生産性の関係については、RIETIのホームページに論文を公開しているが、日本のデータからは最低賃金がより大幅に上がった都道府県で生産性が上がったという事実は確認できない。最低賃金が上がるのは悪いことではないが、生産性がその結果、上がっているという証拠は乏しい。

もっと問題なのは、最低賃金を全国一律にすべきだという議論だ。最低賃金が低い地域に労働者が来ないので、地域差をなくせばよいという話だが、これは労働需要サイドを無視した乱暴な議論だ。いくつかの実証研究は、最低賃金が高くなった地域から他の地域に労働者が流出することを明らかにしている。その地域の生産性に比べて最低賃金が高すぎると労働需要が減少し、仕事を得られなくなるからだ。

――格差是正策としての最低賃金引き上げをどう考えますか。

あまり有効でないというのが経済学者のコンセンサスだ。実は最低賃金に近い水準で働いている人の中には主婦パートで、夫が高収入という人も多い。このため世帯単位で考えると、貧困対策としてはあまり効果がない。軽減税率と同じで低所得者にとってよさそうに見えて、実は高所得者にもメリットが出てしまう。

働き方改革の文脈で、従業員が早く帰れば時間当たりの生産性が上がると思っている人も多い。しかし、極端な長時間労働を別として、労働時間の長さと生産性の関係についての実証結果はさまざまだ。労働時間を減らしても時間当たりの生産性が下がるわけではないため、家庭生活のために長時間労働を削減するのは労働者にとってよいことだ。しかし、生産性に結び付けるのは無理がある。

――AI(人工知能)と生産性の関係についてはいかがでしょうか。

AIは発展途上でデータも整備されておらず、しっかりした実証研究はまだほとんどない。ITやロボット導入による生産性効果は十分に分析・研究されていて、AIがその延長だと考えれば、生産性はかなり上がる可能性が高い。ただ、AIと補完的な人の雇用機会や賃金は増えるが、ルーチンワークの人の雇用機会や賃金は減るので、経済格差が拡大する可能性が高いだろう。

――では、生産性を引き上げるために有効な政策は何なのでしょう。

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