日本経済の生産性をめぐる「誤解」を徹底解説 「賃金抑制」も「最低賃金引き上げ」も的外れだ

東洋経済オンライン / 2019年7月7日 8時0分

安全・安心のための社会的規制にも同じような性質がある。事故や事件があると規制強化が行われ、そのときには反対しにくい雰囲気があるが、企業のコストを高め、生産性にはマイナスに働く。

最近は、労働規制の強化が企業の大きな負担になっている。アメリカでも安全規制や環境規制が増加の一途をたどっており、生産性を大きく押し下げていることがわかっている。

生産性や経済成長とは別の目的で行っている政策が、生産性にはマイナスに働くというトレードオフ関係がある。そうした影響も考慮しておく必要があり、成長戦略で生産性を上げる政策だけを取り上げて、実質GDP成長率2%という数字を目標にするのは無理がある。

■政府の生産性上昇の想定は高すぎる

2つ目の問題は、生産性押し上げ効果の想定が大きすぎることだ。「中長期の経済財政に関する試算」でのTFPは、高い成長を想定したシナリオでは足元の0.4%を5年間で1.5%にすることになっている。より保守的なシナリオでも2倍の0.8%で推移する前提なので、かなり高い。マクロ経済運営や社会保障の持続可能性などを考える場合に、あまり楽観的な想定を置くと、財政の改善が遠のいてしまうリスクがある。

――財政の健全性も生産性には重要としています。

財政や社会保障の先行き不確実性が高まることが、生産性を持続的に引き上げる努力を阻害する可能性もある。政府債務が非常に大きい国の生産性上昇率は低い傾向があるが、それは生産性向上につながる前向きの投資がやりにくくなるから。ただし、その主なメカニズムは、財政拡張により金利が上がって、その結果、民間の投資を抑制するというもの。今のようなゼロ金利の下で影響があるかといえば微妙だ。今後、物価や金利が高くなっていけば、そうした可能性があることに注意する必要がある。

大崎 明子:東洋経済 記者

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