避難指示が出ても逃げ遅れてしまう人の心理 豪雨災害から身を守るために必要な4指針

東洋経済オンライン / 2019年7月15日 8時40分

昨年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた、岡山県倉敷市真備町地区の特別養護老人ホーム屋上から撮影。高齢者を先に避難させたが逃げ遅れ、屋上で救助を待った(岸本祥一さん提供)

梅雨前線の停滞によって6月下旬から降り出した雨が、九州南部を中心に記録的な大雨をもたらした。気象庁の会見では、観測地点によっては昨年7月の西日本豪雨の雨量を上回る可能性があるとの見方も示された。

避難指示・勧告は、鹿児島・宮崎・熊本の3県で合計196万人超に発令。鹿児島県では34カ所で土砂崩れが発生して2人の方が亡くなったという(5日現在)。

今回の九州の豪雨における避難指示対象者の避難率をみると、鹿児島市では1%にも達しなかった、との報道も出ている。

過去の大規模な豪雨災害において「被害を拡大させた要因の1つ」として指摘されるのが避難率の低さ、すなわち「逃げ遅れ」である。全国で200人以上の死者を出し、「平成最悪の水害」といわれた昨年7月の西日本豪雨でも、やはり逃げ遅れが大きな課題となった。

■避難しない=危機感の欠如とは言えない

なぜ危険が迫っていることがわかっているのに、人は逃げ遅れてしまうのか。その理由を知りたくて、昨年、私は西日本豪雨の被災地をまわって被災者の方々への聞き取りを行うとともに、防災や災害心理学の専門家へのインタビューを行った。そうした取材の成果をまとめたのが、今年6月下旬に刊行した『ドキュメント豪雨災害 西日本豪雨の被災地を訪ねて』である。

西日本豪雨の被災地を取材して痛感したのは、「身の危険を感じたら、安全な場所にすぐに逃げる」という、言葉にすれば単純なことが、実は極めて難しい現実である。

避難情報が出ているにもかかわらず、避難行動を起こさない人に対して、「危機感が足りない」などと批判めいた声が上がることがある。しかし、取材を通じて見えてきたのは、「避難しない=危機感の欠如」という単純な公式には当てはまらない被災者の姿だった。

大規模な浸水被害が発生した岡山県倉敷市真備町有井地区にある特別養護老人ホームの施設長・岸本祥一さんは、早い段階から災害の危険性を認識して避難準備を行い、避難勧告が発令された時点ですぐに施設にいた36人の高齢者を系列の施設に避難させて、被害を未然に防いでいる。災害直後の新聞報道では避難の成功例として伝えられていた。

ところが、詳しく取材をしてみると、高齢者の避難は迅速に行ったものの、その後岸本さんを含めて20人以上の職員は逃げ遅れて、浸水によって孤立。屋上まで水に浸からなかったために犠牲者を出すことはなかったが、もしハザードマップが示す「最大浸水深5メートル以上」まで水がきたら、建物全体が水没し、逃げ場を完全に失ってしまった可能性もあった。

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