「ケーキを等分に切れない」非行少年たちの実情 「認知力」を向上させなければ更生は望めない

東洋経済オンライン / 2019年7月22日 7時50分

少年院で法務技官として勤務してきた宮口幸治氏の解説です(写真:Fast&Slow/PIXTA)

児童精神科医である宮口幸治氏によると、非行少年たちの中には「反省以前の子ども」がたくさんいると言います。また、少年院には、認知力が弱く、「ケーキを等分に切る」ことすらできない非行少年がいるそうです。なぜ、彼らは反省することができないのでしょうか――。宮口氏の新著『ケーキの切れない非行少年たち』を一部抜粋しその真実に迫ります。

私は現在、大学で主に臨床心理系の講義を担当しておりますが、もともとは精神科医です。3年前に現大学に赴任するまで少年院で法務技官として勤務してきました。その前は大阪の公立精神科病院に児童精神科医として勤務していました。

そこでは外来や入院病棟で発達障害、被虐待児、不登校、思春期の子たちなどを診察していましたが、その病院は関西の基幹病院とも言える規模だったので、あらゆる症例を見てきました。

発達障害の専門外来では、申し込んでから初診の順番が来るまで4年待ちという状態で、ほとんど機能していないくらいの患者が集まってきていたのです。児童だけでなく、殺人などの重大犯罪を行った成人や少年の精神鑑定を行う機会もありました。

■ある少年との出会い

当時、ある施設へ定期的に出向いて診察や発達相談などを行っていたのですが、そこで発達障害をもった1人の少年に出会いました。その少年は性の問題行動を抱えていました。年齢にかかわらず、とにかく女性の身体に触ってしまうというこだわりがあったのです。幼女や女性が集まりそうな場所に行っては、相手を見つけて触るという行為を繰り返していたのです。

私はその施設で彼の継続治療を行うことになりました。そこで、当時、認知行動療法に基づいて北米で作成され、効果が期待されていた性加害防止のためのワークブックを日本語に翻訳し、一緒にワークブックを進めていくことにしました。並行して病院の外来にも来てもらい、さまざまなストレスを抑えるための薬物療法も行いました。

認知行動療法とは、思考の歪みを修正することで適切な行為・思考・感情を増やし、不適切な行為・思考・感情を減らすことや対人関係スキルの改善などを図る治療法の1つで、心理療法分野では効果的であるとされています。

例えば、AさんがBさんにあいさつして、Bさんから返事がなかったとします。そこでAさんは「Bは僕をワザと無視した。僕のことが嫌いなのだ」と考えると怒りが出てきて、今度はAさんがBさんを無視したり、意地悪したりするかもしれません。そこで認知行動療法ではAさんに違った考え方をしてもらいます。「ひょっとして僕の声が小さかったからBさんが気づいていないのでは?」「Bさんは何か考え事に夢中になっていて気づかなかったのでは?」などです。

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