「新型タント」に乗って感じたN-BOXとの違い 走りや乗り心地にどのような特徴があるのか

東洋経済オンライン / 2019年8月13日 8時0分

乗り心地の評価軸であるNVH、N(ノイズ:音)、V(バイブレーション:振動)、H(ハーシュネス:路面からの突き上げ)は、第3世代とは雲泥の差だ。

ハンドリングについても、とくにカスタムRSでは、15インチタイヤ装着でハンドリングの手ごたえがガッシリしている。14インチタイヤのXでも、パワステの重さはカスタム並みにやや重で、走り全体ががっしり&しっかりした印象だ。

コーナーリング中に、ハンドルの切り足しなどの修正を加えても、クルマ全体がすぐに反応してくれる。第3世代ではこうしたコーナーリング中の動きに余裕がないことが、長時間運転での疲れの大きな原因だった。

こうして走りのレベルが一気に上昇した新型タントだが、走りのよさという指標でN-BOXと比較した場合、N-BOXに軍配が上がると筆者は感じた。

その理由は大きく2つある。1つは、前述のNVHの中のH(ハーシュネス:路面からの突き上げ)で、N-BOXのほうが収まりは早い。これはサスペンションの設計要件というより、採用しているショックアブソーバーやブッシュと呼ばれるゴム製品の原価に影響していると、筆者はみる。

もう1つは、走りの流れだ。N-BOXでは、ブレーキング・コーナーリング・コーナーからの立ち上がりという、走りの流れが明確にわかるが、タントではそこまでの走りの流れは感じられず、あくまでも安心安全第一という走りに思える。この差は、基本設計に加えて走行実験による味付けの差だと思う。

このような、N-BOXとの走りの差を、ダイハツは重々承知している。N-BOXの得意領域には踏み込まないことで、N-BOXとの差別化を明確にしている。

この差は、商品性と原価に対するダイハツとホンダの企業方針としての差である。試乗の前後で、各部門のダイハツ社員と意見交換をしたが、総じて「N-BOXとは別の方向性」という声が聞かれた。

タントという商品は「生活用品」という位置付けをぶれさせないこと。これがダイハツの考え方だ。さらに「しっかりと利益を出す」ことが、企業として当然の姿勢である。

■高コストのN-BOXの行方

一方、N-BOXについて、ダイハツの見立ては「クルマとしての存在感が強い」。この言葉を筆者なりに換言すると「走りの追求度合いが強い」となる。

さらに、筆者からダイハツ社員らにN-BOXについて補足したのは、ホンダの原価の高コストという点だ。ホンダは他社に比べて利益率が低く、とくに軽についてはN-BOXが爆発的に売れているのに超薄利という経営実態であることをホンダ自身が公表している。

そのうえで、2019年4月1日に本田技術研究所の大幅な組織改編を行うなどして、研究開発費の見直しを進めている。筆者は、7月3日に埼玉県和光市で開催された一部メディア向けの新技術説明会「ホンダミーティング」に参加し、同社の八郷社長や役員らと意見交換したが、高コスト体制について真剣にメスを入れると明言した。そうなると、はたして次期N-BOXはどうなるのか。 

そうしたホンダのお家事情がどうであれ、タントはタントとしての道を進む。スーパーハイト系軽の購入を考える消費者としては、新型タントとN-BOXを比較するのは当然だろう。だが、それらを世に送り出すメーカー側としては「タントとN-BOXは別物」という意識を持っていることを、消費者は理解しておくべきだと思う。

桃田 健史:ジャーナリスト

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング