ポスト安倍最有力「菅首相」に問われる資質 「影の総理」菅義偉とは何者なのか(下)

東洋経済オンライン / 2019年8月18日 7時50分

7月の参院選で有権者と話を交わす菅義偉官房長官(写真:時事通信)

今回の参院選で菅義偉は、麻生太郎や岸田文雄の力を削ぐための工作に全力を挙げた。とりわけ目を引いたのが、岸田の地元、広島選挙区での自民党候補擁立による岸田の後見人の追い落としだ。

だが、それだけではない。水面下では自党の候補者をそっちのけで他党の候補者を支援し、自らの影響力の拡大を図った。

■地元・広島県で露骨な「岸田潰し」

新聞や週刊誌でも一部報じられたが、広島選挙区では自らの人脈を使って露骨な岸田潰しに出た。岸田の地元である広島県の自民党現職は宏池会(岸田派)の最高顧問である溝手顕正。菅は「広島では自民党が2議席とれる可能性が高い」として、自らの側近である衆院議員・河井克行の妻・河井案里(県議)を2人目の候補として擁立した。これには地元の広島県連が猛烈に反発し、自民党の地方議員の大半が溝手についた。

だが、菅はこの6年余で極めて密接な関係を築き上げた創価学会副会長(広宣局長)の佐藤浩に河井への支援を要請。今の創価学会で選挙対策を担う佐藤の指示を受けた広島県の創価学会は、学会票を河井に集中させ、マスコミ各社の期日前の出口調査では公明党支持者の70%以上が河井に投票していた。この学会票が河井当選の決定打となった。

結果的に溝手は落選。岸田派の牙城である広島県連内では、選挙期間中に岸田が河井の応援にも立ったことに一部幹部が猛反発するなど大混乱に陥った。

通常であれば、創価学会=公明党は、選挙区で自民党候補を支援する際、見返りに比例の公明票を上積みしてくれる候補を優先する。今回の広島選挙区では、自民党支持の各種団体の大半が溝手支援に回ったため、本来であれば公明党は比例で公明票を出せる力を持つ溝手を優先する。

ところが今回は、浮動票頼みで比例票の見返りがあまり見込めない河井を全力で支援した。異例の対応だが、その背景には、今度の参院選で最も苦戦が予想された兵庫選挙区の公明候補に菅の支援を得る必要があるとの事情もあった。

実際、菅は学会の要請を受けて公示前後に3回も神戸市に入ったほか、地元兵庫県連の猛反発を無視し、本来は自民党支持の運輸や住宅関連の業界団体票を公明党に回すなど公明党支援に全力を挙げた。そのおかげで公明党は維新に次ぐ2位当選を果たしたが、その余波で最下位の3位当選と肝を冷やした自民党の地元関係者からは、厳しい菅批判の声が上がった。

菅の工作は、自民党内にとどまらない。定数2の静岡選挙区では、国民民主党の現職・榛葉賀津也と立憲民主党の新人が2位争いを繰り広げたが、最後は榛葉が滑り込んだ。

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