イタリア連立政権崩壊でまたも欧州の火種に 右派政権成立なら、EUとの対立激化は不可避

東洋経済オンライン / 2019年8月21日 14時0分

そのため、議会任期が満了する2023年まで続くことを前提とした本格的な連立政権の発足を模索する動きもある。

この場合、各政策分野で詳細な連立綱領を合意する必要がある。左派寄りの有権者を主な支持基盤とする両党は、最低賃金の引き上げ、労働市場改革、環境対策の強化などで合意できる可能性がある。一方、議員定数削減、汚職対策、移民政策などでは意見に隔たりがある。特に議員定数削減は政治刷新を求める五つ星運動の主要公約の1つで、すでに関連法案の審議が最終投票段階にあるが、民主党内には抵抗が多い。

秋の総選挙実施と同盟の政権奪取を阻止できるか、まずは五つ星運動と民主党による連立組み換えに向けた協議の行方が注目される。

■解散総選挙なら「同盟」による右派政権成立

両党間の協議に加えて、シルビオ・ベルルスコーニ元首相が率いる中道右派政党フォルツァ・イタリアの動きも鍵を握りそうだ。支持率のうえでは1桁台で低迷するかつての政権与党は、解散・総選挙で同盟が右派政権を発足する際に連立に加わり、キング・メーカーとして、影響力を奪還する機会をうかがっている。

同盟はフォルツァ・イタリア抜きの右派政権誕生を目指しており、両党間の協議が決裂した場合、フォルツァ・イタリアは五つ星運動と民主党による暫定政権発足に協力し(例えば投票を棄権して政権発足を可能にする)、政治復権の足掛かりにする可能性がある。

連立組み換え協議に時間を要した挙句、協議が決裂し、解散・総選挙となるのが最悪のシナリオと考えられよう。その場合、総選挙は11月以降にずれ込み、政権発足はさらに後ずれする。世論調査での同盟の圧倒的なリードを考えれば、同党を中心とする右派政権が誕生することはほぼ間違いない。

EUとの財政協議は難航が避けられず、財政規律違反を問われる恐れが高まる。EUの財政規律見直しを求める同盟は、必要な財政措置が採られなかった場合のVAT増税の約束を反故にすることも考えられ、EUとの関係は一段と悪化しそうだ。金融市場では世界的な金利低下が進み、財政不安を抱えるイタリアの国債利回りも歴史的な低水準にある。

欧州中央銀行(ECB)による金融緩和観測も支えとなり、過去に比べて金利は上昇しにくくなっている。だが、イタリアをめぐる緊張が金融市場を揺さぶる日が再来するのもそう遠くはなさそうだ。

田中 理:第一生命経済研究所 主席エコノミスト

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