英ジョンソン首相の暴走を議会は止められるか EUからの「合意なき離脱」阻止へ最後の攻防

東洋経済オンライン / 2019年9月3日 8時10分

合意なき離脱で構わないと考える政府を法的に拘束するためには、離脱期限の再延長を義務付ける法律を制定するしかない。議会でどのような法案を審議するかの決定権は原則として政府が持ち、ジョンソン首相が野党や非閣僚議員に法案提出の機会を提供する可能性は低い。

■緊急討議で「離脱延期」を狙う議会

そこで非閣僚議員は緊急討議を可能にする議事規則(スタンディング・オーダー24)を使って、離脱期限の延長を要請する法案審議の時間を確保しようとしている。

緊急討議は通常、修正動議と同様に政府を拘束するものではないが、議事運営の決定権を持つジョン・バーコウ下院議長は、4月に緊急討議を使って野党勢が離脱期限の延長を政府に求める法案審議を認めた(提出者の名前からクーバー・レトヴィン法案と呼ばれる)。親EU派のバーコウ下院議長はこれまでもたびたび、残留派や穏健離脱派に有利な決定を下し、今回のジョンソン首相による議会閉会に対しても、議会の審議機会を奪う憲法侵害行為である、として批判している。

通常、英議会の法案審議は、第一読会(法案の提出)、第二読会(法案の基本的な内容についての審議)、公法委員会による逐条審議、本会議報告、第三読会(最終審議)という手順で進み、下院で成立した法案が上院に送られ、同様の審議が行われる。

上院で修正された法案は下院に送り返され、両院間で法案を修正しあい(この往復をピンポンと呼ぶ)、最終的な法律が成立する。法案提出から成立までには数カ月を要するのが一般的だが、離脱期限の延長を求める4月の緊急討議は5日足らずで成立した。

3日の議会再会直後の緊急討議で法案を提出した場合、10日頃の議会閉会までの法案成立はかなりタイトだ。英議会は通常、金曜日から日曜日まで審議が行われないため、10日までの審議日程は5日間しかない。上下両院での法案内容の一本化に時間が掛かったり、法案成立を阻止しようとする強硬離脱派議員による議事妨害があるかもしれない。

与党・保守党内の残留派・穏健離脱派議員の約20名が、離脱期限の延長を求める法案に賛成票を投じる可能性がある。首相はこうした党内の造反の動きを牽制し、政府方針に反して法案に賛成票を投じた場合、次の総選挙で党候補から除外する可能性を示唆している。

造反議員が離党した場合、閣外協力する北アイルランドの地域政党の議席を合わせても、与党は議会の過半数を失う。離脱の延期を求める野党提出法案が可決した段階で、ジョンソン首相はおそらく議会の解散を呼びかけ、総選挙の実施に動くだろう。議会の任期前解散には下院の3分の2以上の賛成が必要だが、これまで早期の解散・総選挙を求めてきた最大野党・労働党はこれに応じる可能性が高い。

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