英ジョンソン首相の暴走を議会は止められるか EUからの「合意なき離脱」阻止へ最後の攻防

東洋経済オンライン / 2019年9月3日 8時10分

離脱延期を求める法案が否決された場合や、会期中の法案成立が難しいと判断した場合、野党は内閣不信任案を提出し、ジョンソン政権打倒を通じて合意なき離脱の阻止に動く展開が予想される。与党と野党の投票数の差はわずか1票で、与党議員の一部が造反に回る可能性がある。内閣不信任案が提出されれば、可決される可能性が高い。

内閣不信任案が可決された場合も、ジョンソン氏が即座に首相を辞任するわけではない。議会任期固定法は、14日以内に同じ内閣か別の内閣が議会で信任されない場合、議会を解散し、総選挙を行うことを定めている。14日以内に議会の過半数を確保可能な別の内閣を組織できることが証明されない限り、ジョンソン氏がそのまま総選挙まで首相の座にとどまることになりそうだ。

■解散・総選挙は離脱後か、その前か

総選挙の時期を決定するのは首相で、首相周辺は10月末の離脱確定後の総選挙実施を目指しているとも噂される。野党内にも労働党のジェレミー・コービン党首の首相就任に反対する議員も少なくなく、短期間で別の内閣を組織できるかは微妙なところだ。14日の期限を待たずに議会が閉会した場合の扱いは不透明だが、そのまま総選挙となる可能性が高い。

このように、議会が緊急討議で政府に離脱期限の延長を要請する法案を成立させた場合も、それができなかった場合も、近く議会の解散・総選挙が行われる可能性が高まっている。首相があくまで離脱確定後の総選挙実施を断行するか、ひとまず離脱期限を延長したうえで総選挙実施に臨むかは、総選挙での勝算をどう読むかに掛かっている。

最近の世論調査によれば、ブレグジット党に奪われた離脱支持者の票の一部は、ジョンソン氏の首相就任後に保守党に戻ってきている。とは言え、前言を撤回して離脱期限を再延期した場合、保守党とブレグジット党の間で離脱支持者の票が割れ、政権交代を許す可能性もある。

合意なき離脱を排除しないことがEU側の譲歩を引き出す唯一の手段であると考えるジョンソン首相と、合意なき離脱を阻止しようとする議会との最後の戦いがいよいよ始まる。

田中 理:第一生命経済研究所 主席エコノミスト

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