映画「ひとよ」は家族の再生を描く人間ドラマだ 俳優たちが出演熱望する白石和彌監督の新作

東洋経済オンライン / 2019年9月10日 10時0分

雄二は家族と距離を置き、東京でしがないフリーライターとして働いていた。吃音のため人とのコミュニケーションが苦手な大樹は、妻から離婚を迫られていた。そして園子は、事件によって夢を諦め、スナックで働きながら生計を立てていた。抗うことのできなかった別れ道から、時間が止まってしまったように生きてきた3兄妹。そんな彼らのもとに母・こはるが15年ぶりに帰ってくる。

■15年ぶりに帰ってきた母とどう向き合えばよいか

しかし彼らは、突然の母の帰還に複雑な思いを隠せない。次男の雄二は母に向かって「子どもたちの人生がめちゃくちゃになってるとき、何しに帰ってきたんですか?」と辛らつな言葉を投げかける。一方の園子は「お母さんはあの人から、私たちを助けてくれた!」と母の行動を理解し、家族をつなぎ止めようとする。

そして長男の大樹は、母にどう接すればいいのかわからず戸惑うばかり。何かを置き忘れてしまった彼らは、過去を受け入れ、そしてもう一度人生をやり直すことができるのだろうか――。

今回、佐藤健が演じる雄二という役は、15年ぶりに戻ってきた母を受け入れることができない闇を抱えた男。過去の事件にとらわれ、やさぐれた日々を送る、というキャラクターで、彼がこれまで演じてきた等身大の青年像や、ヒーロー的な主人公とはひと味違う役となる。

そんな雄二の役作りとして、佐藤はまず無精ひげを生やすところからはじめたという。また、撮影現場でも極力ほかのキャスト・スタッフらと距離をとるようにして、ピリッとした空気をまとい、やさぐれたキャラクターを作りあげた。

それだけにクランクアップ時には「白石監督とはぜひ、いつかご一緒できたらと思っていました。こんなにもすてきな話で、こんなにもすてきな役者・スタッフの皆さまとぜいたくな時間を過ごさせていただき、振り返るとあっという間でした」とコメントを残し、充実した撮影だったと振り返る。

そして本作で圧倒的な母性を体現し、鮮烈な印象を残すのが、母・こはるを演じた田中裕子だ。長谷川プロデューサーは、田中裕子主演の2005年の映画『いつか読書をする日』の制作進行として現場についていたが、その撮影中に、崖から落ちそうになり、そこに田中が手を差しのべて助けてくれた、というエピソードを思い出すという。

「いつかプロデューサーになることがあったら、田中裕子さんに出てもらえる作品を作りたい」。あれから10数年。ある意味、本作は、長谷川プロデューサーにとって「女優・田中裕子へのラブレター」とも言うべき作品だった。

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