最低賃金引き上げ「よくある誤解」をぶった斬る アトキンソン氏「徹底的にエビデンスを見よ」

東洋経済オンライン / 2019年10月9日 7時10分

最低賃金を段階的に引き上げていくと、もちろん中小企業は大変です。しかし、生産性が上がらないと、社会保障負担に国が耐えられないという現実の危機を乗り越えるための代案を示していただかないといけません。

■2年間で30%も引き上げた韓国と同一視はできない

疑問10:韓国は最低賃金を上げて経済が崩壊しています。日本も、韓国のようになってしまうのではないですか?

韓国は、最低賃金を2年間で30%も引き上げてきました。アメリカのある分析によると、最低賃金を1年間で12%以上引き上げると、短期的に失業率が上がるおそれがあるとしています。日本ではもっと緩やかな引き上げが議論されていますので、比較すること自体に意味がないと感じます。

最低賃金の引き上げの効果を測るには、収入増加と失業率のバランスを天秤にかけるべきです。残業の調整なども含めて、最低賃金が上がることによるネットの所得増加によるプラスと、失業率が高まることによるマイナスを両方見るべきです。失業率だけに注目する議論は視野が狭いと言わざるをえません。

韓国の失業率は、過去20年間の平均で3.7%でした。確かに2019年の1月には4.4%まで大きく上がりましたが、そのあとは落ち着き、直近の8月は2002年に更新された最低記録の3%に近い3.1%まで下がっています。倒産件数も落ち着いています。

若い人の失業率が高く、長期的な影響はまだ見えず、失業率が低下しているデータポイントが少ないため、韓国の最低賃金の直近の引き上げがどのくらいの失業につながったかは、専門家として判断するには時期尚早です。トレンドを冷静に見守る必要があります。

韓国は2年間で最低賃金を30%も引き上げているにもかかわらず、まだ言われるほどの崩壊は現実になっていません。一方、日本では5%引き上げたら大変なことになるとあおられている。韓国に比べて、日本経済が極めて貧弱であるという指摘には、とうてい賛同できません。

デービッド・アトキンソン:小西美術工藝社社長

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