十勝の食材で作る「美しすぎるクッキー」の凄み 趣味ではなくビジネスとして成功した秘訣

東洋経済オンライン / 2019年10月15日 7時25分

十勝地方の雪景色(写真:空/PIXTA)

絵画のようなクッキー、マッシュポテトで作られたバラの花々。美しいビジュアルが目を引くこれらの焼き菓子やジャガイモ料理は、北海道産の食材から生み出す「アートフード」として、帯広市の「十勝菓子工房 菓音(かのん)」代表の甲賀静香さんが手がけたものだ。

東京から移住した甲賀さんは、外からの視点と独自のセンスで北海道の食材に付加価値を付け、国内外へ発信を続けている。お菓子作りや料理を趣味ではなく、ビジネスとして成立させた、その秘訣に迫る。

■正社員を辞めて転々とした仕事

甲賀さんは大学を卒業後、大手通信販売会社のフェリシモ(本社・兵庫県神戸市)に就職。商品開発兼バイヤーとして食品全般の通販業務を担当し、ファッションや雑貨、子ども服などの企画開発にも携わった。

やりがいはあった一方、バイヤーとして生産者の人たちが自然相手にすばらしい食材を作り出している様子を目の当たりにするたび、会社員として働く自分は、同じように感動を伝えられる仕事ができているのか、考えるようになっていった。会社の中で自分らしく働いていくには能力的にも限界を感じていたこともあり、悩んだ末に退社。新しいことへ挑戦する道を選んだ。

しかし、一筋縄ではいかなかった。

まずは在職中から演奏家になることを夢見るほど熱中していたアルパ(ラテンハープ)の講師を神戸で始めたが「音楽一本でやっていくのは厳しい」と現実に直面。その後は北海道へ移り、農村部で休眠していたホテルを復活させる仕事にスタッフとして従事した。

しかし昼夜を問わず心身がすり切れるほど働き、お客さんから心配されてしまうほど。体力的にも精神的にも限界を感じ、今度は札幌で情報誌の制作に関わるようになる。自分らしい仕事は何か、必死に探し続けていた。

転機が訪れたのは2007年。帯広市の食品製造会社に勤務し、商品開発から営業、衛生管理や商品仕様書の管理など、一連の作業を経験したことだった。実は通販会社のバイヤー時代にもたびたび北海道を訪れ、道内の農作物や乳製品に大きな価値を感じていた甲賀さん。

改めて十勝地方の農家や酪農家を訪ねて回ると、高い品質で安定して食材を供給する技術や責任感、ものづくりに取り組む真摯な姿勢に心が動かされた。「すばらしい食材を受け継いで、加工者として何か付加価値を付けた商品を開発し、十勝産の農作物や乳製品のよさを伝えられないだろうか」――。

そう考えて、ターゲットを定めたのがお菓子作りだった。十勝地方にはお菓子の原材料に最適な、てんさい糖、小麦粉、乳製品があり、新しい商品を開発できる予感があった。2009年に食品会社を退社し、開業の準備を開始。菓子製造業の許可を取り、2010年2月、帯広市内に「十勝菓子工房 菓音」として独立起業した。

■店舗は「持たず・作らず」

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