世界の建築業界の巨人、日本の鉄道を変えるか サラグラダファミリアなど実績は多数

東洋経済オンライン / 2019年10月21日 7時10分

アラップがホーム増設や補強の構造設計などを手がけ、生まれ変わったロンドンのセントパンクラス駅(記者撮影)

アラップ(Arup)という会社をご存知だろうか。1946年にロンドンで創業し、世界40カ国に1万3000人のスタッフを擁する国際的なエンジニアリング会社だ。

建築物の構造設計ではパイオニア的な存在として知られている。たとえば、シドニーのオペラハウスでは、手描きのスケッチにすぎなかったデンマーク人建築家のデザインを複雑な構造解析を行うことで建築物として実現した。スペイン・バルセロナで建設中の巨大教会「サグラダファミリア」、3つの高層ビルの上に船が乗っているシンガポールのランドマーク「マリーナベイサンズ」もアラップが解析技術やデジタルシミュレーションを活用した構造設計業務を行っている。世界の建築業界にとってなくてはならない存在なのだ。

日本での実績も多く、新宿のモード学園コクーンタワー、関西国際空港旅客ターミナルビルなど数多くの案件に参画。一時期話題になった新国立競技場の旧案でも故ザハ・ハディド氏をサポートしていた。

■英国の高速新線に参画

そのアラップが日本で鉄道分野に取り組むという。同社の鉄道ビジネスとはどのようなものなのか。アラップ東京事務所の代表を務める小栗新氏は、例としてイギリスのハイスピード1(HS1)プロジェクトを挙げる。

HS1とは、ロンドンと英仏海峡トンネルを結ぶ高速新線。ロンドン―パリ間を走る国際高速列車「ユーロスター」や日立製作所製の「クラス395」が走っており、日本人にもなじみ深い路線だ。

英仏海峡トンネルとロンドンをどのようなルートで結ぶか。1980年代の終わりから1990年代の初めにかけて白熱した議論が続けられてきた。当初優勢だったのは、イギリス国鉄が提案したロンドンのテムズ川の南側にあるウォータールー駅に直線で結ぶというルート。そこへ新たなルートを提唱したのがアラップだった。

小栗代表によれば、「われわれの先輩方が、頼まれてもいないのにロンドンの北東側を通って現在のセントパンクラス駅に乗り入れる現在の案を提案した」。当時のロンドンの北東エリアは廃れており、鉄道を通すことで都市再生の起爆剤にする考えだったという。

国鉄案とアラップ案が国会で議論され、結果としてアラップ案が採択された。それを契機にHS1のインフラデザインやプランニングなどの総合的な技術設計もアラップに任されることになったのだ。

ユーロスターの発着駅であり、ロンドンの陸の玄関口となったセントパンクラス駅を訪れたことがある人なら、古城のような赤レンガ造りの駅外観と内部の未来的なプラットホームが織り成す調和に誰もが息を呑むに違いない。

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