「県別の最低賃金」はどう見ても矛盾だらけだ 「全国一律の最低賃金」は十分検討に値する

東洋経済オンライン / 2019年11月6日 7時10分

現在の「最低賃金」の決め方には、大いなる疑問があるといいます(撮影:梅谷秀司)

オックスフォード大学で日本学を専攻、ゴールドマン・サックスで日本経済の「伝説のアナリスト」として名をはせたデービッド・アトキンソン氏。

退職後も日本経済の研究を続け、日本を救う数々の提言を行ってきた彼は、日本に必要なのは「生産性の向上」だとしたうえで、『日本人の勝算』で、いまの「最低賃金の決め方」に疑問を投げかけている。

どこがおかしいのか、そして県別の最低賃金を詳しく分析すると見えてくる「見逃せない矛盾」について解説してもらう。

■16年ぶりに縮小した最低賃金の格差

今年、2019年には参議院議員選挙が戦われました。その際には、与党・自民党だけではなく、野党もこぞって「最低賃金の引き上げ」を公約に掲げていました。その効果もあり、最低賃金に多くの人が関心を寄せるようになったと感じます。

先ごろ、来年の都道府県別の最低賃金の数字が固まりました。ご存じのない方がいるといけないので、一応お知らせしておきますと、日本では最低賃金は都道府県ごと別々に設定されます。全国一律でないのは、世界の中では珍しい部類です。

来年の最低賃金の全国平均(加重平均)は901円になりました。一方、最低賃金が最も高い東京都と最も低い鹿児島県の差は、前年に比べ、16年ぶりに1円縮まり、223円になりました。

しかし、本来、東京都と鹿児島県の最低賃金の差は226円まで拡大するはずだったのです。そうはならずに差が縮まったのは、鹿児島県が中央最低賃金審議会の示した引き上げ目安である26円より、3円多く引き上げ、最低賃金を790円としたからです。

最低賃金は厚生労働省の中央最低賃金審議会が、引き上げ額の目安を答申し、それを受けた各地方の最低賃金審議会が地域ごとの事情を勘案したうえで改めて答申を行い、各都道府県の労働局長が地域別の最低賃金額を決定するという流れで決まります。

今回、鹿児島県と同様に、目安より高い引き上げを決めた県が19県ありました。内訳は目安+1円が7県、+2円が11県、+3円が1県でしたが、面白いのは、これらの県の最低賃金がすべて790円と足並みのそろった金額に落ち着いたことです。

偶然にしてはできすぎのように思えますが、これまでになく最低賃金に注目が集まってもいたので、どの県もビリになりたくなかったのかもしれません。もしかしたら、政治的な働きかけがあったのかもしれません。

■地方の最低賃金が低いと「一極集中」が止まらない

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