75歳の落語家・古今亭寿輔が紡ぐ「寄席」の躍動 一期一会のライブ感を展開する野心満々の男

東洋経済オンライン / 2019年11月19日 17時0分

奇抜な高座着で意表を突く古今亭寿輔(編集部撮影)

落語家というのは「職業」であるとともに「生き方」でもあるとしみじみ思う。

刻苦勉励を旨とし、日々精進に励んでいる落語家もいれば、肩の力を抜いて飄々と生きている落語家もいる。それもまた見事な芸人のありようと言えよう。

■坊っちゃんのためだけに落語をやりますからね!

今回紹介する古今亭寿輔との出会いは、強烈なものだった。

池袋演芸場の平日の夜席、六分ほどの入りで、まったりした空気の客席。

「シャボン玉飛んだ」の出囃子に乗って、ちょび髭を生やし、レモンイエローの布地に銀箔を散りばめたド派手な着物で高座に上がった寿輔は、少し客席をいじったあとで「今日のお客様は反応があまりよろしくないなあ、あ、そこの坊っちゃん、笑ってくれた! じゃ、おじさん今日は、坊っちゃんのためだけに落語をやりますからね」と上手の客席の2列目あたりにいた小学生のほうを向いて、落語を始めたのだ。

客席は一瞬戸惑ったのちに、爆笑である。

演目は「猫と金魚」。「のらくろ」で知られる漫画家、田河水泡の作。「舌で描く漫画」とも言うべき笑いの多い噺だ。

軽やかな口調の寿輔は、この噺にぴったりだが、演じながらも「坊っちゃん、聞いてますか?」と時折くすぐりを入れる。小学生は困ったような表情になるが、客席は沸く。

寿輔はそのまま演じきって、大喝采の中降りていった。

紋付羽織で高座に鎮座ましまして、古典落語を滔滔と口演するのも見事な落語家の姿だが、ここまですかして一座のお客を喜ばせるのもまた「芸」の姿だと言えよう。

古今亭寿輔は1944年5月5日、山梨県甲府市に生まれる。

「小学校4年生の頃、ラジオで落語を聞いて、“こんなに面白いものがあるのかな”と思って、小学校で林間教室があって、そこで落語をやったんですね。そしたら先生が“お前、そんな話どこで覚えたんだ?” “NHKのラジオを聞いて1回で覚えましたよ”って」

高校を出たらすぐにでも落語家にと思ったが、家族の反対で4年間、一般の会社で働いた後に、23歳で三代目三遊亭圓右に入門した。

「僕は新作が好きで、あちこち聞いていて、(五代目古今亭)今輔師匠がいいなって思ったんですが、おっかなそうだったんで、(実際はそうじゃなかったんですが)お弟子さんの(三代目三遊亭)圓右師匠に入門したんです」

このあたり、少し説明が必要だろう。

五代目古今亭今輔は、名人と言われた初代三遊亭圓右の弟子であり、古典落語も手がけたが、戦後、「お婆さんシリーズ」の新作落語で人気になった。

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