ピジョンも関わる「母乳バンク」の知られざる姿 ニーズ高く国際的に進んでいるが日本は牛歩

東洋経済オンライン / 2019年11月19日 14時40分

「ドナーミルクがあるおかげで、自分の母乳が出るのをゆったり待てる」と話してくれたお母さん(写真:昭和大学旗の台病院NICUで筆者撮影)

神奈川県在住のOさんは、3カ月前に早産をして赤ちゃんがNICU(新生児集中治療室)に入院した。わが子が飲みきれないほど母乳がよく出たので、それを冷凍母乳にして「母乳バンク」へ寄付することにした。

■どこかのNICUで奮闘中の誰かにそっと寄り添いたい

NICUに赤ちゃんが入院していた間、母乳がなかなか出ないという悩みを抱えている母親を何人も見てきたOさん。「NICUに通う親は、頭も心も言葉にならない不安でいっぱい。そのうえに母乳不足で悩む方たちのことを思うと、母乳を捨てる気にはなれない」。今、どこかのNICUで奮闘中の誰かにそっと寄り添いたいという思いでこのボランティア活動を続けている。

「母乳バンク」は、母乳がよく出ている人の母乳を「ドナーミルク」として送ってもらい、殺菌のほか病原菌、有害物質の厳正なチェックを行ったうえで母乳が出ない人へ送る枠組み。「もらい乳」の現代版で、海外では50カ国以上にあり国営のものも多いが、日本は大きく立ち遅れ、現時点では一般社団法人日本母乳バンク協会が営む1カ所のみだ。

対象は、早産児や病気の新生児のユニット「NICU」にいる出生体重1500g未満の「極低出生体重児」たちだ。年間7000人、とても未熟な消化管を持って生まれてくるこの子たちは、ヒトの母乳を飲むメリットがとくに大きく、時には命を左右することが知られている。

2019年7月、日本小児科学会は「早産・極低出生体重児の経腸栄養に関する提言」を出し、日本も、今後は、全国の需要に見合うだけの母乳バンクが整備されるべきだと訴えた。これはWHO(世界保健機関)や海外の国々では以前から言われてきたこと。例えばアメリカは6割、スウェーデンではすべてのNICUがドナーミルクを使えているが、日本では母乳バンクは1つしかなく、使用しているNICUの比率はわずか5%程度にすぎない。

国内でも、新生児科医たちの間でドナーミルクを望む声は高い。2015年に全国のNICU168施設が回答した調査では、全体の75%が「母乳バンクが必要」と回答し、ドナーミルクへの強い期待が示された。

こうした状況の中、11月19日、総合育児用品メーカーの老舗であるピジョンは、日本母乳バンク協会を経済的に支援していくことを発表した。

また本社1階の一部スペースを同会に提供し、2020年春より国内2つ目の母乳バンク「東日本橋 母乳バンク」として使用してもらう。現在のバンクが年間80人の赤ちゃんにしか対応できていないのに対し、新バンクは年間200人に応えていく予定だ。

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