日本の「ロケット産業」が国だけに頼れない実情 キヤノンも強力に推す民間ロケットが描く夢

東洋経済オンライン / 2019年11月28日 7時0分

和歌山県串本町に建設される民間ロケット発射場「スペースポート紀伊」の模型。山を切り開き建設される(記者撮影)

「宇宙利用はこれから、産業の時代になる」――。

11月16日、本州最南端の和歌山県串本町で国内初の民間ロケット発射場となる「スペースポート紀伊」の起工式が開かれた。同町のホテルで開かれた祝賀会で、旗振り役の一人、キヤノンの御手洗冨士夫会長はそう宣言した。

発射場を建設するのは、2017年に設立された宇宙ベンチャー「スペースワン」。スペースワンにはキヤノン子会社のキヤノン電子が50%出資。ほかにIHIエアロスペース、清水建設、日本政策投資銀行(DBJ)が出資している。社長を務める太田信一郎氏は経産官僚出身で、特許庁長官や電源開発副社長を経て設立時からスペースワンを率いる。

起工式には太田社長と御手洗氏のほか、IHIの斎藤保会長、清水建設の井上和幸社長、DBJの木下康司会長と、各社のトップが勢ぞろい。さらには地元選出の二階俊博・自民党幹事長や山川宏・JAXA理事長も参加し、そうそうたる面々が集まり熱気の高さを感じさせた。「来賓をどう串本まで移動させようか悩んだ」(関係者)ほどだ。

■低緯度の地、地元も協力的

発射場の完成予定は2021年夏。すでに4月から土地の造成工事は始まっているが、順次総合司令塔、ロケット組み立て棟の建設にも着手する。打ち上げに使う小型ロケットは今年中に基本設計を終えて、発射場の完成を待たずにロケットも開発し終える算段だ。さらに、2020年代半ばには年間20機ほど打ち上げる計画。太田社長は発射場の名前(スペースポート紀伊)に込めた意味について「この発射場を宇宙へのゲートウェイのキーにしたい」と話す。

紀伊半島の最南端が発射場に選ばれたのは、できるだけ緯度の低い場所のほうが打ち上げ時に地球の自転の力を利用しやすいということが大きな理由だ。ロケットのエンジンを作るIHIエアロスペースの工場は群馬県富岡市にあり、陸路で輸送することが可能だったことも決定を後押ししたという。

地元の和歌山県は経済効果を10年間で670億円とはじく。ロケット打ち上げで観光客が増えれば、同県南部にとって悲願である紀伊半島一周の高速道路建設にも弾みがつくため、地元の協力を得るのも容易だった。

近年、宇宙の民間活用は日に日に熱を帯びている。スマートフォンのGPS情報や天気予報に使う気象観測衛星だけではない。例えば農業では作物の生育状況や害虫の発生状況を監視したり、漁業では海水温の変化を観察することによって最適な漁場を探ったりすることができるようになっている。

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