大川小津波訴訟、遺族側の勝訴が変える学校安全 子どもの命を守る学校の責任は重い

東洋経済オンライン / 2019年12月13日 7時25分

大川小に在学していた児童の保護者は学校教育法17条1項に基づき児童を小学校に就学させる義務を負っており、また、教育委員会によって、児童を就学させるべき小学校を大川小に指定されていた。大川小に在学していた児童の在学関係がこうした特殊な在学関係であったことは学校保健安全法29条1項の定める「危険等発生時対処要領の作成義務」および同条2項の定める「校長の危険等発生時において職員が適切に対処するために必要な措置を講ずべき義務」の法的性質にいかなる影響を及ぼすか。各当事者としての意見を取りまとめ、準備書面として提出されたい。

吉岡和弘弁護士が、この控訴審での裁判長の発言の意義について強調した。この求釈明は、組織的過失を控訴審で争点とすることを踏まえ、その判断枠組みの前提となる公立小学校の児童・保護者と学校との法的関係、学校保健安全法に基づく学校が児童や保護者に負っている組織的な義務について、当事者の主張を明らかにさせるものだったと評価した。

控訴審判決が最高裁でも維持されたのは、子どもたちの安全を学校が一手に担っていることを重視したためと受け止められている。幼い子どもは教員の指示に従うしかほかはなく、災害時の指示に誤りがあれば、命を失う結果になりうる。

この判決は今後、全国の学校現場にも影響を与えるだろう。学校保健安全法はすべての学校に「危機管理マニュアル」の作成をすでに義務づけていたが、今後は学校で現場を十分に確認して不備がないかを点検し、実効性を伴った対策がとれるよう定期的に見直すことや、自治体との十分な連携や、保護者・地域への周知、マニュアルに基づいた訓練など、さらなる取り組みが、いっそう必要になってくる。

■裁判終結で終わりではない

シンポジウムで齋藤弁護士は、訴訟を進める中で、遺族がいわれのない苦難や苦しみを味わう結果にもなったことは残念と述べた。本件のような自然災害において、訴訟を通じて法的な責任を追及したことについての世間の受け取り方は、温かいものではなかった。インターネット上での暴言や、自宅への押しかけ、路上での罵倒等々、原告ら遺族に対し、極めて心ない誹謗中傷が繰り返されたという。

その意味で「遺族は3度被害に遭った」(齋藤弁護士)。最愛のわが子を失い、その後の石巻市や市教委の事後的な対応で心に大きな傷を負い、そして、他人から理由もなく、心ない誹謗中傷に苦しめられた。

このような状況にありながら、遺族は、本件訴訟が最高裁で確定し、控訴審判決の示した学校安全のあり方についての判断が、学校防災の「礎」となるよう日々活動と努力を続けていくという。

シンポジウムで筆者が最も印象的だったのは、原告遺族である只野英昭さんが述べた訴訟をしようと思った理由だ。

只野さんは事故後の市や学校側の対応はウソから始まったと言う。只野さんは大川小に小5の長男と小3の長女を通わせていた(当時)が、長女は亡くなり、長男はかろうじて生き延びた。わずかに助かった4名の児童の1人だ。現場に居合わせた重要な生き証人だが、ウソつき呼ばわりされたという。大人の社会はウソがまかり通る社会、長男にそう思わせたくないという気持ちが、訴訟をする決心につながった。

「過ちては改むるに憚ること勿れ」(『論語』)。このことを実践できていない大人たちがいかに多いかを最近の政治を取り巻く問題をみていても強く感じる。事件や事故のない社会づくりが重要だが、仮に問題が起こったとき、過ちを真摯に反省する姿勢が重要になる。

細川 幸一:日本女子大学教授

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