コロナ不況でも「最低賃金引き上げ」は必要だ ドイツとイギリスから得られる教訓とは何か

東洋経済オンライン / 2020年3月20日 8時0分

緊急経済対策は必要ですが、それが「中長期戦略」と矛盾してはならないといいます(撮影:尾形文繁)

オックスフォード大学で日本学を専攻、ゴールドマン・サックスで日本経済の「伝説のアナリスト」として名をはせたデービッド・アトキンソン氏。

退職後も日本経済の研究を続け、日本を救う数々の提言を行ってきた彼は、3月27日刊行の新刊『日本企業の勝算』で、日本企業が抱える「問題の本質」を徹底的に分析している。

「日本企業を根本から強くするためには最低賃金引き上げが不可欠」とするアトキンソン氏に、来週から始まる連載に先駆け、改めてこれからの経済政策のあり方を解説してもらった。

■「緊急経済対策」も中長期を見据える必要がある

新型コロナウイルスの影響で日本経済は大きな打撃を受けており、経済対策を打つことはすでに決まっています。

今回の議論を見ても、日本企業の脆弱性が目立ちます。中国人観光客の激減により、倒産の危機に瀕している企業もあります。倒産には至らなくともぎりぎりで、余裕のない企業が、観光業以外でも多い印象です。状況が状況なので無理のない面もありますが、日本がもっと強い産業構造を有していればと思わずにはいられません。

このような状況下なので、緊急の経済対策は重要ですが、あくまでも経済政策の中長期的な戦略を踏まえたうえで「賢く」打つべきであることを強調する必要があります。

日本は、人口減少と高齢化に対応するべく、産業構造を強化する必要があります。産業構造の強化とは、簡単に言えば大企業と中堅企業を中心とした経済に誘導することを意味します。今回の緊急経済対策は、小規模事業者を中心とした企業の統廃合を進めて、企業の規模拡大を追求し、生産性を向上させる機会になりえます。この機会を逃してはなりません。

例えば、これまでの「最低賃金引き上げ」の流れを止めるようなことがあってはなりません。全国一律最低賃金に向けて、引き続き東京と地方の最低賃金の格差を縮小させることも必要です。イギリスはリーマンショックの後、「100年ぶりの大不況」と言われていたにもかかわらず、継続的に最低賃金を引き上げてきたのです。

■日本企業は「規模」が小さすぎる

日本国内で行われている最低賃金に関する議論を聞いていると、まだまだ十分な理解がされていないことを痛感します。私の説明が足りていなかったのが一因かもしれませんが、海外において数多く発表されている論文の内容が、まったく伝わっていないように感じます。

これまでの読者の反応を振り返って考えてみたところ、まだまだ理解されていない点が明確になってきました。説明のための資料も見つかりましたので、今回の記事ではまだご理解いただけていないポイントに焦点を絞って、説明をしていきたいと思います。

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