2010年代に起きた事は1930年代の再来だったか 大国間の戦争は当面考えにくく問題は気候変動

東洋経済オンライン / 2020年3月21日 9時50分

新しい潮流も出てきている(写真:princessdlaf/iStock)

金融制裁、資源、AI、5G、仮想通貨、サイバーテロ―。世界では経済を武器にした戦争が始まっている。

「地政学」は地理的条件、歴史、民族、宗教、資源、人口などが駆動する国際政治の動態だが、「もはや地政学だけでは間に合わない。地政学的課題を解決するために、経済を武器として使う地経学の分析が必要」と主張するのは『地経学とは何か』の著者、船橋洋一氏。「2050年、世界の覇権はどの国家が握っているか」(2020年3月7日配信)、「2030年以降、どの国も『負け組』になりえる理由」(2020年3月14日配信)に続いて、本書の一部を抜粋してお届けしよう。

■2010年代は際立った年代だった

2019年12月で2010年代が幕を閉じた。どの時代も、同時代人にとってはかけがえのない記憶の束だが、とくに10年刻みの「年代(decade)」は切実な時間の帯である。

その中でも、2010年代は際立った年代だった。長い戦後(postwar)の国際秩序や国内政治体制、そして産業やメディアの構造が音を立てて崩れ始めた(末尾に私が選んだ2010年代の10大地政学・地経学事件を記した)。

この咆哮する怒涛の10年の生みの親は、2008年のリーマン・ショックだった。それは、世界経済危機を引き起こし、貿易を縮小させ、自由貿易を後退させ、ユーロ危機を併発し、中ロの国際秩序に対する挑戦とルール軽視を促し、先進工業国全域に、反グローバル化と反自由主義、そしてポピュリズムとナショナリズムの逆流をもたらした。欧州委員会の報告書(2018年)は、EU加盟国ではそれまでの10年で欧州統合に反対する政党の得票が倍増したと記している。(Lewis Dijkstra et al.)

その逆流は、世界の自由主義を牽引してきた英米両国において最も劇的に現れた。2016年の英国の国民投票によるBREXIT決定と米国のトランプ当選である。

国際秩序は中東から崩壊し始めた。「アラブの春」と呼ばれる民主化は挫折し、リビアとシリアでは国家破綻とアナーキー状態に陥った。米国の「世界からの撤退」が始まった。

次に、2010年代は、台頭する中国が異質の体制のまま超大国になること、そして日米欧諸国は新たな対中戦略を必要としていることへの覚悟を私たちに強いることになった。日米欧では、中国は既存の国際秩序にとって脅威になりうる「修正主義勢力」であり、「戦略的ライバル」であると見なす中国観が党派を超えて優勢になりつつある。

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