低所得者を食いものにする「極限の資本主義」 「VIP待遇」にハマる人が知らない企業の手法

東洋経済オンライン / 2020年6月2日 9時50分

私たちの願望や不安につけ入ろうとする“極限の資本主義”から逸脱するには?(写真:DisobeyArt/iStock)

所得格差が大きな社会では、人々はより強くストレスを感じ、不平等は人々の心に悪影響を及ぼす。いち早くそのことを指摘し、全英ベストセラーとなった『平等社会』。

同じ著者たちの待望の続編『格差は心を壊す 比較という呪縛』がこのほど翻訳出版された。この新刊では、不平等が私たちの心をどうむしばんでいくのかを解き明かしている。500超の文献と国際比較データを駆使して書かれた本書の一部を、全4回に分けて抜粋・編集して紹介しよう。最終回のテーマは、快楽主義をあおる極限の資本主義、である。

社会的な評価を高めるためにお金で購入できるものは、物質的な品物だけではない。

イースト・ロンドン大学のダニエル・ブリッグス教授は、休暇でイビサ島(地中海西部のバレアレス諸島の島、スペインの自治州)を訪れた英国の労働者階級の旅行者を調査したことがある。

ブリッグスが注目したのは、彼らの行動の特徴だ。過剰で向こう見ずな飲酒、薬物使用、セックス、暴力と、それによる彼ら自身やリゾート地への影響だった。

さらに重要なのは、イビサ島に到着しても、彼らの行動が母国での文化や社会的な不安から脱し切れていないことだった。

■リゾート地でも結局いつもどおりの行動

彼らが休暇をとるのは、夢の実現や理想的な人物になった気分を味わうためだが、実際の彼らの行動は、母国での週末の生活を延長したものにすぎなかった。

ブリッグスによれば、「彼らの行動は、心理的な意識付けがなされ、社会的に組み立てられ、度重なるパッケージ化を経て、押しつけられてきたものだ。一時的にリゾート地に出かけたとしても、そうした商業主義の強力な圧力から簡単に逃れることはできない」という。

彼らにとって休暇とは日常を脱した空間や時間であり、太陽、海、砂、それに母国での毎日の仕事や人間関係からの解放を満喫することだ。

短い期間かもしれないが、母国での低い身分から逃れることもできる。それはあたかも領主の悪政が続いた中世で、ほんの短い間だが社会階層の苛烈な支配が中断されるようなものだ。

ブリッグスが調査した若者にとって、快楽主義的、消費主義的なライススタイルは社会的な評価の目印だった。それらは彼らにとって少なからぬ値打ちがあり、同僚からは社会的なステータスとして認められることを意味している。

イビサ島で休暇を過ごせることは、生活にゆとりがあり、人生を大いにエンジョイできることを示している。

しかし残念なことに、旅行シーズンが到来するたびにイビサ島で数多く発生しているのは、傷害、嫌がらせ、レイプ、殺人事件である。彼らの選択、行動、お金の使い方は、商業主義的な打算や押し付けによって支配されている。

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